23 / 36
疑えど真実
しおりを挟む
爆睡をしていたツイはムニャムニャと重い瞼を少しだけ開いた。
「……ふわぁ。シオ、さん、おはようございます~」
緊張感のキの字もなく、序に普遍的な挨拶を繰り返す。もう真昼間だというのに。
……。
薄く開いた視界でツイは周囲を見渡し俺を探す。
「あれ?どこです……」
「いつまで寝てんだよ」
「…………え?」
そして、目の前の光景を把握した途端、ツイの目は一瞬にして大きく開いた。
何度も何度も深呼吸をして心を落ち着かせる彼女は随分と動揺しているようで、目をこすり何度も光景を疑った。
「?夢ですか……」
「現実見ろよ」
「え?いや。これは……、シオさんが?」
「うん」
「……マジ?」
「マジだ」
「爆弾でも使ったんですか?」
「馬鹿言え、俺の実力だ」
「……」
「顔で喋るな」
ツイの顔面は疑ってますけど何か?と腹立つ程あほ面でそう言ってくる。
可愛い顔じゃなかったら池に沈めていたところだ。
「おっと」
ただ頭と体を同時に使うと随分疲労が溜まる。今も小さな小石に躓きそうになった。
「シオ……!!」
そんな俺のダサい姿に心配して駆け寄る灰色の髪をした物静かで健気な少女、メアト。ツイとは大違いだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「ちょっと疲れただけだよ」
「ちょ、私置いてけぼりなんですけど!?」
会話にも俺達の間にも無理矢理入る騒音器具は置いておいて。
「木陰で休もう。メアトは大丈夫か?」
「え?」
「この暑さとかさ」
「あ。あー。だ、大丈夫です。慣れてますから」
そう言って苦笑するメアトの心の裏側にはどんな辛い昔の話があるんだろうと、勝手にそう受け捉えてしまった。
「ふう、ちゃんと戦えたよ。これもメアトのおかげだな」
「い、いえ……、シオの実力ですよ……。格好良かったです」
「はは。ありがとう」
そんな格好良い訳ないのに、と俺はお世辞に感謝する。
「い、いや、本当に、何をしたんですか」
ツイはもう一度その光景を目に焼いて冷静な声でそう聞いた。
「いや?俺は俺の出来る事を精一杯やっただけだよ」
「だからと言ってこれだけを……。何時間……」
「五時間くらいぶっ通しだったかな」
俺もその光景――ライビットたちが百以上倒れ込んでいる姿をもう一度見返した。
「……ふわぁ。シオ、さん、おはようございます~」
緊張感のキの字もなく、序に普遍的な挨拶を繰り返す。もう真昼間だというのに。
……。
薄く開いた視界でツイは周囲を見渡し俺を探す。
「あれ?どこです……」
「いつまで寝てんだよ」
「…………え?」
そして、目の前の光景を把握した途端、ツイの目は一瞬にして大きく開いた。
何度も何度も深呼吸をして心を落ち着かせる彼女は随分と動揺しているようで、目をこすり何度も光景を疑った。
「?夢ですか……」
「現実見ろよ」
「え?いや。これは……、シオさんが?」
「うん」
「……マジ?」
「マジだ」
「爆弾でも使ったんですか?」
「馬鹿言え、俺の実力だ」
「……」
「顔で喋るな」
ツイの顔面は疑ってますけど何か?と腹立つ程あほ面でそう言ってくる。
可愛い顔じゃなかったら池に沈めていたところだ。
「おっと」
ただ頭と体を同時に使うと随分疲労が溜まる。今も小さな小石に躓きそうになった。
「シオ……!!」
そんな俺のダサい姿に心配して駆け寄る灰色の髪をした物静かで健気な少女、メアト。ツイとは大違いだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「ちょっと疲れただけだよ」
「ちょ、私置いてけぼりなんですけど!?」
会話にも俺達の間にも無理矢理入る騒音器具は置いておいて。
「木陰で休もう。メアトは大丈夫か?」
「え?」
「この暑さとかさ」
「あ。あー。だ、大丈夫です。慣れてますから」
そう言って苦笑するメアトの心の裏側にはどんな辛い昔の話があるんだろうと、勝手にそう受け捉えてしまった。
「ふう、ちゃんと戦えたよ。これもメアトのおかげだな」
「い、いえ……、シオの実力ですよ……。格好良かったです」
「はは。ありがとう」
そんな格好良い訳ないのに、と俺はお世辞に感謝する。
「い、いや、本当に、何をしたんですか」
ツイはもう一度その光景を目に焼いて冷静な声でそう聞いた。
「いや?俺は俺の出来る事を精一杯やっただけだよ」
「だからと言ってこれだけを……。何時間……」
「五時間くらいぶっ通しだったかな」
俺もその光景――ライビットたちが百以上倒れ込んでいる姿をもう一度見返した。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

ゲームの中に転生したのに、森に捨てられてしまいました
竹桜
ファンタジー
いつもと変わらない日常を過ごしていたが、通り魔に刺され、異世界に転生したのだ。
だが、転生したのはゲームの主人公ではなく、ゲームの舞台となる隣国の伯爵家の長男だった。
そのことを前向きに考えていたが、森に捨てられてしまったのだ。
これは異世界に転生した主人公が生きるために成長する物語だ。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる