俺のステータス『軟弱 虚弱 脆弱 惰弱 貧弱 ※時折頑強』

ぐりーなー

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尊重できない人達

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「あんなガラクタ……、俺ぁ、母さんの体が心配なんだよ!!!!」
「私の自由にさせてくれ!!アタシの心配なぞ、勝手にすんな!!」
「あんなクソの呪いで母さんがやられることはないんだってば!!」
「うっさいわ!!何も分からんで店に入ってくんな!!」
「分からずやは母さんの方じゃないか!!もういい!俺は解呪師を呼ぶ!そして母さんの重荷を全部外す」
息子か?
「馬鹿が!!!何をしでかすつもりだ!」
どんどん声が近づき、既に目の前だった。
「こ、このクソガキもまだ!!くそがっ!!」
一人の声の主は少女を見るなりいきなり殴りかかろうとする。
「なっ!!」
「やめろーっー!!」
「ぐっ」
いてえ……。
「な、なんだよ!あんた!!」
俺は少女を庇い、背中にダメージを負った。
「いや、急に攻撃を浴びせられたから」
「アンタは関係ねえ!!そいつが!!何も出来ない出来損ないのくせにここに居座って、母さんの体を悪くしてんだよ!!!痛い思いぐらいしてくれよおぉぉ……」
怒号の主は赤子の様に急に泣きじゃくる。
「アタシはどこも悪くないよ!!このガキは関係ない!!」
「い、いいんですよ……。わた、私が、いても。し、しょうがないんです……」
「ほら!!こいつもそう言ってるじゃねえか!!さっさとくたばれ!ゴミがっ!!!」
な、なんだよ、この状況どうすりゃいいんだ?いや、落ち着け、どうなってるんだ?
店主がこの子たちをそこまで庇うのはなんだ?
この男の人は店主の体を心配してる。呪いの装備が近くにあるだけで呪いの効果を身に受けるってことか?

ぱぁんッ!!

そんな小さな破裂音が俺を現実へと引き戻す。
「出てけ……。もうアンタを息子だとは思わないよ。顔も見たくない」
「なんでわかってくれないんだッ!!」
赤く腫れた頬を抑えながら男は泣きじゃくる。
「勝手にアタシを分かった気にならない事さ。さあ、出てけ。もういいだろう。アタシの事は」
「良くねえ。良くねえよ!!また明日、解呪師を連れてここに来るからな!」
「追い払ってやるわ!!」
えーん、と泣きながら男は嵐の様に去っていった。

「悪かったね……」
店主は落ち着いて謝罪を俺に向けた。
「い、いえ……、何が何だか……」
「アタシはもうじき死ぬ」
「え!?……呪いのせいですか?」
「何を言ってるんだい。寿命だよ」
「し、失礼ですがお年は」
「四十二だよ」
四十代!?申し訳ないが見えない。
垂れた肌に皺皺の皮膚はもう八十後半のものだ……。
それは多分、呪いのせいか……。そりゃ息子さんも心配するんだろうな。
「何故呪いの装備を?」
俺がそう聞くと店主はゆっくりと口を動かし始めた。


旦那さんは呪いの装備をした戦士だったという。
私の心配などつゆ知らず、勝手に戦って勝手に呪いに殺されたという。
旦那さんは呪いの装備にも心があると、意思もあると、呪い装備を愛していた。
最後まで呪われてまで幸せそうだった。好きなものとずっと一緒で、誰かの命を救えて本望だと。
そこで私は知ったんだ。
良かれ悪かれ、何者にも命があって、何物にも誰かの役に立っていると。
呪いの装備はいつも悪いものとされているが、悪いのは欲深い人間だ。
私はそんな旦那が好きだったものを、心があって悲しい思いをしているこの子らを見捨てたくないのさ。
ふと私は気づいたんだ。好きな人の好きな物を許して、駄目なところを許して支えることこそ愛し合うという事ではないかと。
それを許さないのは自分のエゴで価値観だ。全部自分が許せないだけだ。

そう言うと店主さんは暖かく微笑んだ。

「息子さんはそんなあなたの意見を知ってるんですか?」
「何度も話したさ、でもうちの息子は頑固でねぇ」
この人が四十二ならまだまだあの子は子供だろう。そりゃ怖いし嫌だろうな。
でも。店主さんの意見も分かる。

「や、やっぱり、私がいなくなれば……」
「何言ってんだい!」
「だ、だって!私の影響力がい、一番大きいんですよね……。だったら……、誰にも役立てない、私は……」
「そんなこというもんじゃないよ、クソガキ!」
少女は何かを覚悟したように話を進める。
な、何が正解だ?俺に何が出来る。
息子さんの心も、店主さんの心も、この子の心も全ての意思を尊重できるそんなやり方は……。
……俺か。
俺は唾を一つ飲み込んで、店長さんに提案をしてみた。

「僕にその子をくれないですか?」
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