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価値と理由
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「使いようが、ないって……、誰かのために役立つものなんですよね?」
「そうとも言い切れないのさ。一括りに呪いの装備と言っても、当たりはずれはあるんだ」
「?どういうことです?」
「呪いだけを所持した装備の事だよ」
「呪いだけ、所持。つまりフィードバックの力がない、呪いを受け取るだけの装備ってことですか?」
「そう言う事だ。そしてこのガキはその中でも最弱で最強の呪いと言われている」
おばあさんが少女に目をやると、少女はしょぼんと顔を俯ける。
「呪いだけがどこまでも強力に」
「物分かりが良いね。……もう分かったろ?ここに足を運ぶ意味はないんだ。呪いの装備にも興味が泣ければもう帰んな」
カランコロン
建付けの悪いドアが誰かを迎え入れた。
「客かね。私は上へ戻るからね」
「……」
店主はドアを閉めて上へと戻っ入った。
俺と少女の間に沈黙が長く続く。
灰色をしたセミロングの髪に、前髪で隠れた右目、虚ろになっている茶色い左目。汚れた白いシャツに紺色のスカート。
随分と酷い仕打ちをされているんだろうか。
「あ、あの……」
そんな沈黙の中、少女はしゃがれた怯えた声を小さく発する。
「ん?」
「あ、あの、あの人を、悪く思わないで、ください……」
「あの人って言うのは、さっきの人、だよね?」
「は、はい……。あの人は……、私達を、守ってくれてる、のです……」
「……守ってる?お金でって言ったけど……。それは嘘って事?」
「い……いえ、それも、あるかと思います、けど、私達を、ここに匿ってくれてるのも、事実、なのです……」
匿う?何から匿ってるんだ?それに……。
「そんなひどい恰好迄して……」
「い、いえ、私は、これで、満足ですよ。……お金もないのに、お部屋なんて、十分すぎるんですよ、ほんと……」
お金も儲かってる訳じゃないのか?
「だから、あの人を……」
「別に悪く言うつもりはないよ」
「よ、良かったです」
少女がホッと胸をなでおろす姿に少し和んだ。
「わ、私はもう良いんです」
「もういいって?」
「わ、私が生きているだけで、あの人を殺してしまいます。め、迷惑をかけているだけ、な、何も、出来ませんし……」
そんな苦しそうな顔でそんなこと言うなよ。こっちも悲しくなるわ。
「わ、私は消えたほうが、良いんですよ……。だから、ここから出して、欲しいんです……」
「……」
「ぶ、不躾な、お願いだって、百も承知です。でも、わ、私はこれ以上あ、あの人に、迷惑を掛けられない。わ、私が外に出たら、す、すぐ去りますから……」
「それは……違うんじゃないかな」
「え……?」
「おばあさんが匿ってるのには何か理由があるんだよね?リスクを負ってまで大切じゃないモノを守る理由はないよ」
「で、でも……私がいるせいで、お、おばあさん、には、迷惑を……」
「恩を貰って死で償うってのはどうなんだろうな。君が死んだらおばあさんの今まで苦労をどうする?それとも君は死にたいのか?」
「し、死ぬのは、怖いです」
「だよな。そうだよな。だったら、そんなことは言っちゃ、駄目なんじゃないかな。俺が説教できる立場じゃないし、正しいのかなんて、わからないけど、俺は、そう思うよ」
「……」
「自分の正解が相手の正解と違うなんて、面倒くさいよね。でも、そう言う世界なんだよ」
「そ、そうかも、しれない、ですね……。わ、私が、正しい、なんて、烏滸がましいです、よね」
そこまでは言ってないんだけどな。
会話がこじれそうになる、ここ等辺で言葉を瞑んだ。
「え、えっと……、お客さん、は、なんでここに来たん、ですか?」
「俺は何かに呼ばれて……」
「?」
「助けてって声が聞こえたんだよ。この部屋からさ」
「……」
「信じられない?」
「ちょ、ちょっと……。じゃ、じゃあ、呪いの装備を買いに来た、ってわけでは、ないんですね」
「まあね、凄く強くなりたいけど」
「つ、強くなれないんですか?」
「俺も何も出来ないから。一緒だね」
「……そ、そうなんですね。でもど、努力とかは、してるんですよね、だ、だったら私とは、違いますよ」
「君も努力すれば一緒だよ」
「わ、私なんかには」
「俺も最初はそう思ってたんだけど、そう思っても仕方ないんだよな。何か出来ることをしないと、少しでも努力しないと、俺はこの世に必要ないんだ、でも逆に、その少しの一歩を踏み出せれば、何か誰かのために、自分が生きる理由になるかもしれない。ちょっとでも自分が満足できるかもしれないんだよ」
「す、凄いです」
「大したもんじゃないよ。俺なんて。だから、君も、まだ出来ることがあるよ」
「あると、う、嬉しいです」
少女は顔を俯けながら少し声色を弾ませてそう言った。
「お、お客さん!ここに、いちゃ、駄目です……!」
ふいに少女はハッとしてそう言葉を発する。
「え?」
「は、早く出ないと……」
なんだ?何かが起きる?
「……いない!!」
先程の店主の声と、あと、誰だ?誰かの声が入り混じっている。
「もうやめろと言っただろう!!!」
怒号が俺の耳に震動する。
「私はやめないと、いってるだろう!!」
店主もそれに対抗している?
「そうとも言い切れないのさ。一括りに呪いの装備と言っても、当たりはずれはあるんだ」
「?どういうことです?」
「呪いだけを所持した装備の事だよ」
「呪いだけ、所持。つまりフィードバックの力がない、呪いを受け取るだけの装備ってことですか?」
「そう言う事だ。そしてこのガキはその中でも最弱で最強の呪いと言われている」
おばあさんが少女に目をやると、少女はしょぼんと顔を俯ける。
「呪いだけがどこまでも強力に」
「物分かりが良いね。……もう分かったろ?ここに足を運ぶ意味はないんだ。呪いの装備にも興味が泣ければもう帰んな」
カランコロン
建付けの悪いドアが誰かを迎え入れた。
「客かね。私は上へ戻るからね」
「……」
店主はドアを閉めて上へと戻っ入った。
俺と少女の間に沈黙が長く続く。
灰色をしたセミロングの髪に、前髪で隠れた右目、虚ろになっている茶色い左目。汚れた白いシャツに紺色のスカート。
随分と酷い仕打ちをされているんだろうか。
「あ、あの……」
そんな沈黙の中、少女はしゃがれた怯えた声を小さく発する。
「ん?」
「あ、あの、あの人を、悪く思わないで、ください……」
「あの人って言うのは、さっきの人、だよね?」
「は、はい……。あの人は……、私達を、守ってくれてる、のです……」
「……守ってる?お金でって言ったけど……。それは嘘って事?」
「い……いえ、それも、あるかと思います、けど、私達を、ここに匿ってくれてるのも、事実、なのです……」
匿う?何から匿ってるんだ?それに……。
「そんなひどい恰好迄して……」
「い、いえ、私は、これで、満足ですよ。……お金もないのに、お部屋なんて、十分すぎるんですよ、ほんと……」
お金も儲かってる訳じゃないのか?
「だから、あの人を……」
「別に悪く言うつもりはないよ」
「よ、良かったです」
少女がホッと胸をなでおろす姿に少し和んだ。
「わ、私はもう良いんです」
「もういいって?」
「わ、私が生きているだけで、あの人を殺してしまいます。め、迷惑をかけているだけ、な、何も、出来ませんし……」
そんな苦しそうな顔でそんなこと言うなよ。こっちも悲しくなるわ。
「わ、私は消えたほうが、良いんですよ……。だから、ここから出して、欲しいんです……」
「……」
「ぶ、不躾な、お願いだって、百も承知です。でも、わ、私はこれ以上あ、あの人に、迷惑を掛けられない。わ、私が外に出たら、す、すぐ去りますから……」
「それは……違うんじゃないかな」
「え……?」
「おばあさんが匿ってるのには何か理由があるんだよね?リスクを負ってまで大切じゃないモノを守る理由はないよ」
「で、でも……私がいるせいで、お、おばあさん、には、迷惑を……」
「恩を貰って死で償うってのはどうなんだろうな。君が死んだらおばあさんの今まで苦労をどうする?それとも君は死にたいのか?」
「し、死ぬのは、怖いです」
「だよな。そうだよな。だったら、そんなことは言っちゃ、駄目なんじゃないかな。俺が説教できる立場じゃないし、正しいのかなんて、わからないけど、俺は、そう思うよ」
「……」
「自分の正解が相手の正解と違うなんて、面倒くさいよね。でも、そう言う世界なんだよ」
「そ、そうかも、しれない、ですね……。わ、私が、正しい、なんて、烏滸がましいです、よね」
そこまでは言ってないんだけどな。
会話がこじれそうになる、ここ等辺で言葉を瞑んだ。
「え、えっと……、お客さん、は、なんでここに来たん、ですか?」
「俺は何かに呼ばれて……」
「?」
「助けてって声が聞こえたんだよ。この部屋からさ」
「……」
「信じられない?」
「ちょ、ちょっと……。じゃ、じゃあ、呪いの装備を買いに来た、ってわけでは、ないんですね」
「まあね、凄く強くなりたいけど」
「つ、強くなれないんですか?」
「俺も何も出来ないから。一緒だね」
「……そ、そうなんですね。でもど、努力とかは、してるんですよね、だ、だったら私とは、違いますよ」
「君も努力すれば一緒だよ」
「わ、私なんかには」
「俺も最初はそう思ってたんだけど、そう思っても仕方ないんだよな。何か出来ることをしないと、少しでも努力しないと、俺はこの世に必要ないんだ、でも逆に、その少しの一歩を踏み出せれば、何か誰かのために、自分が生きる理由になるかもしれない。ちょっとでも自分が満足できるかもしれないんだよ」
「す、凄いです」
「大したもんじゃないよ。俺なんて。だから、君も、まだ出来ることがあるよ」
「あると、う、嬉しいです」
少女は顔を俯けながら少し声色を弾ませてそう言った。
「お、お客さん!ここに、いちゃ、駄目です……!」
ふいに少女はハッとしてそう言葉を発する。
「え?」
「は、早く出ないと……」
なんだ?何かが起きる?
「……いない!!」
先程の店主の声と、あと、誰だ?誰かの声が入り混じっている。
「もうやめろと言っただろう!!!」
怒号が俺の耳に震動する。
「私はやめないと、いってるだろう!!」
店主もそれに対抗している?
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