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下衆と変態と凡人
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変態兎に追われ脱兎の如く走っている俺であったが流石に野生には適わない。先回りをされ、チクチクと攻撃を与えてくる。
俺は必死に走り木の棒をブンブンと振り回す事に専念する。
「あそこは兎さん、ライビットの縄張りですからね。普通にはめられましたね」
「何でそんな笑顔?」
ツイは満面に笑み、余裕綽々で俺についてくる。
「いえ……本能的に?」
それを歓喜し傍観するムジュライム、パァンパァンと鞭を地面に叩きつけ興奮を見せつける兎ども、それを笑顔で見つめるツイ。
変態と下衆しかいない……!!
二つの意味でハメられそうだ。
流石にどうにかしなくては……。正直こんなことしている場合じゃないからな。
早く敵を倒して強くならないといけないんだよな。
一度自分の心を落ち着かせ冷静に頭を働かせてみる。
兎はレザージャケットが邪魔でうまく走れていない。俺より少し足が速いくらいだ。鞭が邪魔で攻撃もほぼ当てられてない。馬鹿なのかな?
心を落ち着かせると視野が広がるな……。
??
あいつらまた……!!
そして気づいた。ムジュライムは背後から弓を引っ張って好機を窺っていた。
くそ!あれどうやって弓構えてんだよ!!!
しかも狙ってるのって。
弓を振り絞って狙う目標地点はライビット。なんで俺じゃない?
まさか食料に!?
ここまでの行動を予測してやったというのだろうか。IQが人を越している様な気がするんだが。腹黒スライムめ……。
そして躊躇いなく射った。
「くっ!」
「シオさんなにやってんですか!!」
俺は何をしてんだ。ライビットに放たれた矢を右腕で庇った。
ライビットはその姿にぽろっとサングラスを落とし走りを止めた。
そして俺の手を見て、顔を見て、まん丸い瞳で腕を凝視し尖った口でペロッと腕を舐めた。
いや、傷口が痛い。
腕から矢を勢いよく引っこ抜くと尋常ではない程の血があふれ出す。血の気が引いていく。
ライビット達はレザーを脱ぎ、鞭を捨て下に落ちていた草をかき集め始めた。
あ、鞭とレザーにこだわりはないのね。
草を歯で削り、液体を作り出す。そしてそれを右手で取り俺の腕に塗りたくる。
「ッ!!」
痛みに堪え、周囲を見渡すとライビット達は俺に背中を見せてムジュライムから攻撃を防いでいた。
レザーを勢いよく千切り俺の腕に巻いて治療は終わったようだ。最後にペコっと頭を下げてムジュライムに敵意を向けた。
レザージャケットに恨みでもあった?
「シオさん無事ですか!?」
「無事ではねえよ」
「なんであんなことを……」
「分からない」
「え?」
「いや、勝手に縄張り、家に入られたら誰だって怒るだろうよ。怖いだろうよ。俺のせいでこの子たちを傷つけるのはなんか、違うなってさ」
「……カッコいいな、おい。でもモンスターを傷つけないとなると経験値とか稼げませんよね」
「確かに……。考えてなかった。どうしよ」
「……」
「……」
幾匹のムジュライムは弓矢を振り絞り矢の雨を降らせる。
それに対しライビット群は鞭を振り回し矢を全て叩き落とす。
何かのパフォーマンスでも見せられてんの?
そして先程とは比べ物にならない速度でムジュライム全匹を囲い、威圧する。
凄い貫禄だ。
それに怯え諦めたか、やっと退いていく。かと思った。ムジュライムはライビットが背を向けた途端、もう一度矢を引く。
「分かってた」
俺はそれを予測し、ムジュライムを後ろから木の棒で弓を地面に叩き落とした。
流石に打つ手なし。木彫り野郎たちはいそいそと自分の縄張りへと帰っていった。
「うおっ!」
そして俺がこれからどうしようか考えに耽っている時だった。
「いい目……、いや、良い体つきだ……」
なんだ!?変態の進化系が現れた。
俺は必死に走り木の棒をブンブンと振り回す事に専念する。
「あそこは兎さん、ライビットの縄張りですからね。普通にはめられましたね」
「何でそんな笑顔?」
ツイは満面に笑み、余裕綽々で俺についてくる。
「いえ……本能的に?」
それを歓喜し傍観するムジュライム、パァンパァンと鞭を地面に叩きつけ興奮を見せつける兎ども、それを笑顔で見つめるツイ。
変態と下衆しかいない……!!
二つの意味でハメられそうだ。
流石にどうにかしなくては……。正直こんなことしている場合じゃないからな。
早く敵を倒して強くならないといけないんだよな。
一度自分の心を落ち着かせ冷静に頭を働かせてみる。
兎はレザージャケットが邪魔でうまく走れていない。俺より少し足が速いくらいだ。鞭が邪魔で攻撃もほぼ当てられてない。馬鹿なのかな?
心を落ち着かせると視野が広がるな……。
??
あいつらまた……!!
そして気づいた。ムジュライムは背後から弓を引っ張って好機を窺っていた。
くそ!あれどうやって弓構えてんだよ!!!
しかも狙ってるのって。
弓を振り絞って狙う目標地点はライビット。なんで俺じゃない?
まさか食料に!?
ここまでの行動を予測してやったというのだろうか。IQが人を越している様な気がするんだが。腹黒スライムめ……。
そして躊躇いなく射った。
「くっ!」
「シオさんなにやってんですか!!」
俺は何をしてんだ。ライビットに放たれた矢を右腕で庇った。
ライビットはその姿にぽろっとサングラスを落とし走りを止めた。
そして俺の手を見て、顔を見て、まん丸い瞳で腕を凝視し尖った口でペロッと腕を舐めた。
いや、傷口が痛い。
腕から矢を勢いよく引っこ抜くと尋常ではない程の血があふれ出す。血の気が引いていく。
ライビット達はレザーを脱ぎ、鞭を捨て下に落ちていた草をかき集め始めた。
あ、鞭とレザーにこだわりはないのね。
草を歯で削り、液体を作り出す。そしてそれを右手で取り俺の腕に塗りたくる。
「ッ!!」
痛みに堪え、周囲を見渡すとライビット達は俺に背中を見せてムジュライムから攻撃を防いでいた。
レザーを勢いよく千切り俺の腕に巻いて治療は終わったようだ。最後にペコっと頭を下げてムジュライムに敵意を向けた。
レザージャケットに恨みでもあった?
「シオさん無事ですか!?」
「無事ではねえよ」
「なんであんなことを……」
「分からない」
「え?」
「いや、勝手に縄張り、家に入られたら誰だって怒るだろうよ。怖いだろうよ。俺のせいでこの子たちを傷つけるのはなんか、違うなってさ」
「……カッコいいな、おい。でもモンスターを傷つけないとなると経験値とか稼げませんよね」
「確かに……。考えてなかった。どうしよ」
「……」
「……」
幾匹のムジュライムは弓矢を振り絞り矢の雨を降らせる。
それに対しライビット群は鞭を振り回し矢を全て叩き落とす。
何かのパフォーマンスでも見せられてんの?
そして先程とは比べ物にならない速度でムジュライム全匹を囲い、威圧する。
凄い貫禄だ。
それに怯え諦めたか、やっと退いていく。かと思った。ムジュライムはライビットが背を向けた途端、もう一度矢を引く。
「分かってた」
俺はそれを予測し、ムジュライムを後ろから木の棒で弓を地面に叩き落とした。
流石に打つ手なし。木彫り野郎たちはいそいそと自分の縄張りへと帰っていった。
「うおっ!」
そして俺がこれからどうしようか考えに耽っている時だった。
「いい目……、いや、良い体つきだ……」
なんだ!?変態の進化系が現れた。
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