俺のステータス『軟弱 虚弱 脆弱 惰弱 貧弱 ※時折頑強』

ぐりーなー

文字の大きさ
上 下
14 / 36

下衆と変態と凡人

しおりを挟む
変態兎に追われ脱兎の如く走っている俺であったが流石に野生には適わない。先回りをされ、チクチクと攻撃を与えてくる。
俺は必死に走り木の棒をブンブンと振り回す事に専念する。
「あそこは兎さん、ライビットの縄張りですからね。普通にはめられましたね」
「何でそんな笑顔?」
ツイは満面に笑み、余裕綽々で俺についてくる。
「いえ……本能的に?」
それを歓喜し傍観するムジュライム、パァンパァンと鞭を地面に叩きつけ興奮を見せつける兎ども、それを笑顔で見つめるツイ。
変態と下衆しかいない……!!
二つの意味でハメられそうだ。
流石にどうにかしなくては……。正直こんなことしている場合じゃないからな。
早く敵を倒して強くならないといけないんだよな。
一度自分の心を落ち着かせ冷静に頭を働かせてみる。
兎はレザージャケットが邪魔でうまく走れていない。俺より少し足が速いくらいだ。鞭が邪魔で攻撃もほぼ当てられてない。馬鹿なのかな?
心を落ち着かせると視野が広がるな……。
??
あいつらまた……!!
そして気づいた。ムジュライムは背後から弓を引っ張って好機を窺っていた。
くそ!あれどうやって弓構えてんだよ!!!
しかも狙ってるのって。
弓を振り絞って狙う目標地点はライビット。なんで俺じゃない?
まさか食料に!?
ここまでの行動を予測してやったというのだろうか。IQが人を越している様な気がするんだが。腹黒スライムめ……。
そして躊躇いなく射った。
「くっ!」
「シオさんなにやってんですか!!」
俺は何をしてんだ。ライビットに放たれた矢を右腕で庇った。
ライビットはその姿にぽろっとサングラスを落とし走りを止めた。
そして俺の手を見て、顔を見て、まん丸い瞳で腕を凝視し尖った口でペロッと腕を舐めた。
いや、傷口が痛い。
腕から矢を勢いよく引っこ抜くと尋常ではない程の血があふれ出す。血の気が引いていく。
ライビット達はレザーを脱ぎ、鞭を捨て下に落ちていた草をかき集め始めた。
あ、鞭とレザーにこだわりはないのね。
草を歯で削り、液体を作り出す。そしてそれを右手で取り俺の腕に塗りたくる。
「ッ!!」
痛みに堪え、周囲を見渡すとライビット達は俺に背中を見せてムジュライムから攻撃を防いでいた。
レザーを勢いよく千切り俺の腕に巻いて治療は終わったようだ。最後にペコっと頭を下げてムジュライムに敵意を向けた。
レザージャケットに恨みでもあった?
「シオさん無事ですか!?」
「無事ではねえよ」
「なんであんなことを……」
「分からない」
「え?」
「いや、勝手に縄張り、家に入られたら誰だって怒るだろうよ。怖いだろうよ。俺のせいでこの子たちを傷つけるのはなんか、違うなってさ」
「……カッコいいな、おい。でもモンスターを傷つけないとなると経験値とか稼げませんよね」
「確かに……。考えてなかった。どうしよ」
「……」
「……」
幾匹のムジュライムは弓矢を振り絞り矢の雨を降らせる。
それに対しライビット群は鞭を振り回し矢を全て叩き落とす。
何かのパフォーマンスでも見せられてんの?
そして先程とは比べ物にならない速度でムジュライム全匹を囲い、威圧する。
凄い貫禄だ。
それに怯え諦めたか、やっと退いていく。かと思った。ムジュライムはライビットが背を向けた途端、もう一度矢を引く。
「分かってた」
俺はそれを予測し、ムジュライムを後ろから木の棒で弓を地面に叩き落とした。
流石に打つ手なし。木彫り野郎たちはいそいそと自分の縄張りへと帰っていった。
「うおっ!」
そして俺がこれからどうしようか考えに耽っている時だった。

「いい目……、いや、良い体つきだ……」

なんだ!?変態の進化系が現れた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

ゲームの中に転生したのに、森に捨てられてしまいました

竹桜
ファンタジー
 いつもと変わらない日常を過ごしていたが、通り魔に刺され、異世界に転生したのだ。  だが、転生したのはゲームの主人公ではなく、ゲームの舞台となる隣国の伯爵家の長男だった。  そのことを前向きに考えていたが、森に捨てられてしまったのだ。  これは異世界に転生した主人公が生きるために成長する物語だ。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...