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一縷、前へ
しおりを挟む『緊急クエスト継続中。残り時間「167時間」』
焼け野原の上でポツンと立ち竦む俺の前へそろりそろりと空気になりつつあったツイが現れた。
「……どうした?」
「いえ……、これからどうするのかと思いまして……」
「何怯えてるの?」
声色は震え、相変わらずの様子を窺う姿。
「……ゲーム、辞めちゃうんですか?」
「……え?何で?」
「なんでって、今怖い思いをして……、こんなゲーム放棄したくなると……」
「確かに凄いクソゲーだと思う」
「……」
しょぼんとツイが肩を落とす姿を横目に見つつ話を続ける。
「初っ端緊急とか、ステータスオール1?無理無理。しかも助けられるのは俺だけとか、凄い重いよ。……でも。でもさ」
「……?」
「これが現実だって感じがする。急に人が倒れて助けを乞うように、いっつも急に物事が起きる。そしてそれを見て見ぬふりをするのはいっつも俺だ。そこで助けに入れば助けられた命はたくさんあったかもしれない。後悔なんてしなかったかもしれない」
うーん、感情が入り乱れ言葉でうまく説明できないな。
「えっと、つまり俺は見て見ぬふりをしたくないんだよ。この世界で助けて欲しい人がいて、俺にしか救えないのなら俺はその人達を救いたい。偽善と言われたってしょうがない。自分の自己満足だから」
「でも……、今回はそれで失敗して」
「まだ終わってないさ。時間はある。強くなる可能性だってあるはずだ。自分一人が努力を怠って誰かを殺すならそれが一番の後悔だ」
「つまりこれからレベルアップをしてもう一度助けると?」
「うん。それにさ」
「?」
「ツイもこの世界に居るだろ?」
「私はこの世界の住人ですからね」
「だったらそれも理由になる」
「え?」
「言ったろ?……言ったっけ?……まあいいや。俺がこの世界にいるだけでツイの辛さが少しは紛れるなら、俺は一生このゲームにログインするよ。俺が辞めてもツイが心残り、になるってのもあるし……結局自分がそうしたいだけだから」
やばい俺の顔から火出てないか?こんな言葉恥ずかしすぎるだろ。ってかこの子望んでるのか?まず。
「ってツイ!?」
ツイは真顔の中、泣いた。
「あれ?何で涙が!?嬉しい筈なのに……。これ以上にない程の幸せな言葉なのに……」
何度も裾で涙を拭ってもポロポロと地面に流れ落ちる。
「……本当にいいんですか?」
涙ぐんだ顔でツイは上目遣いをする。
「俺はそうしたい。後はお前がどうしたいかだよ」
「私はシオさんとお話出来てとても幸せで……、貴方が貴方で本当に良かったです。嬉しいです……。一緒にいてください……いさせてください!」
「大袈裟だな……」
「いえ!私にとって人生はシオさんのナビですから!」
「それなら、良かったよ……」
「はい!!」
急に声でか。ボリューム調整ミスったんか。
「ではこうしちゃいられませんね!さっさと強くなるためのナビゲートと準備を!」
「え?」
「ささ!!車に乗って!」
切り替え凄くない?バグってんの?
「ちょ……」
俺はツイに押され車に戻る。
「シオさん!一階層に向いレベ上げ、強さに磨きを掛けましょう!!サブクエストなども経験値集めに効果的ですよ!!」
「う、うん」
ちょ、なんでこいつこんな力強いの?
屈服してるんだけど。
強すぎて本当に操り人形なんだけど。
「さあ!発進!」
ぐいぐい来るな……。ああああ!
もどかし。
「……俺お前と仲良くなる自信ちょっとなくなりそう」
「早っ!さっきの会話は!?」
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