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電車に乗って
電車に乗って② 落とし物いろいろ
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この地球上には、引力がある。引力に逆らうことの出来ないもの――この世に存在する殆どのものが当てはまる――は、それに引かれ、地上に落ちる。よって、電車通勤をしていると、先を急ぐあまり拾われることのなかった様々な落とし物を、目の当たりにすることになる。
瑠紅が気づいた範囲ではあるが、落とし物が目に付く代表的な場所は、①線路脇、②駅構内、③駅ビル内である。
まず、線路脇であるが、瑠紅が出勤時、乗り込む電車が止まるホームの向かい、反対方向に行く電車のホーム下、つまり線路脇に、いつもこちゃこちゃ、ものが落ちている箇所がある。
透明傘、タオル、マスコット、ステンレス製の水筒……。瑠紅は、鉄道会社というものは、深夜に線路上に落ちているものを拾い、走行テストをして翌朝に備えるのだと勝手に思っていた。なので、初めて線路脇の落とし物に、気づいたときも、翌日には、なくなっているだろうと考えた。ところが、翌日も、その翌日も、それらの落とし物は、なくならないばかりか、仲間が増えていく。
駅員さんに言うべきか迷ったが、ホーム上にいるハンドマイクを持った人は、忙しそうで、声をかけづらい。改札口まで行くのも面倒だし、走行に支障がないなら、落とし主からの申し出がない限り拾わない方針なのかな、と思い、うるさく言わないことにする。
それでも、二週間経ち、三週間経ち、一向に拾われない現状を見る内に……、こちらも関心がなくなった。そして、いつの間にか落とし物は消えてしまった。が、また、別の物が落ちている。これを、イタチごっこというのだな、世の人は。
次に、駅構内の落とし物。線路脇と違ってすぐに拾える場所であるためか、落ちているのは拾う気にならない物、もしくは、気づかずに落とした物である。その代表的なものは、靴のかかと関係。紳士靴の底裏に貼ってあるシートや、崩壊したかかと部分。折れたピンヒールも見たことがある。いや……突然、靴が壊れて、ガクッとなったら、慌てるよな。危ないわ……。ま、ドラッグストアに駆け込んだら、何とかなるよね。
最後に、駅ビル内の落とし物であるが、キャリーケースのコロについていたであろう丸いゴムで出来たものをよく見かける。それと―――あ、ここから汚話に入るから。想像力豊かな人には絶望を与えるだけだと思うので、心して読んで欲しい。ぞっとする汚話です。やめとくなら、今ですよ。いいですか?行きますよ、3、2、1、9!!
ある日、瑠紅が、乗り換えのため駅ビル内のお土産物屋がずらりとならぶ連絡通路に降り立ったとき、目にしたものは、どこまでも続く無数のタイヤの跡、跡、跡。恐らく、キャリーケースのタイヤに次々と轢かれ、原形をとどめることなく床にこすりつけられていったであろうものは、――推測ではあるが――汚大物様。色から察するに、水様ではなく、柔らかめの固形に近いものが地上に投下された後、後続の人々のキャリーケースが次々と轢いていき、床に無数の走行跡を付けたのだと考えられる。
投下者は、紙おむつをした幼児もしくは、処理のため紙おむつごと持ち運んでいたその保護者であろうか。はかせるタイプの紙おむつは、交換頻度が少ないと、中に投下された物の重みでずりさがってくることがあり、歩いている内に脱げたのかも知れないが……気付けよ、保護者。放置すな!それらを踏まないように歩くの、大変だったんだからね!
翌日、出勤時には、きれいになっていたが……あの日以来、床の汚れには気をつけて歩くようになった。目の前に広がる凄惨な光景に気づかずに歩いていた人もいるかと思うと、思い出す度に、ぞっとする。駅ビルのお掃除の人、本当にありがとうございました。
瑠紅が気づいた範囲ではあるが、落とし物が目に付く代表的な場所は、①線路脇、②駅構内、③駅ビル内である。
まず、線路脇であるが、瑠紅が出勤時、乗り込む電車が止まるホームの向かい、反対方向に行く電車のホーム下、つまり線路脇に、いつもこちゃこちゃ、ものが落ちている箇所がある。
透明傘、タオル、マスコット、ステンレス製の水筒……。瑠紅は、鉄道会社というものは、深夜に線路上に落ちているものを拾い、走行テストをして翌朝に備えるのだと勝手に思っていた。なので、初めて線路脇の落とし物に、気づいたときも、翌日には、なくなっているだろうと考えた。ところが、翌日も、その翌日も、それらの落とし物は、なくならないばかりか、仲間が増えていく。
駅員さんに言うべきか迷ったが、ホーム上にいるハンドマイクを持った人は、忙しそうで、声をかけづらい。改札口まで行くのも面倒だし、走行に支障がないなら、落とし主からの申し出がない限り拾わない方針なのかな、と思い、うるさく言わないことにする。
それでも、二週間経ち、三週間経ち、一向に拾われない現状を見る内に……、こちらも関心がなくなった。そして、いつの間にか落とし物は消えてしまった。が、また、別の物が落ちている。これを、イタチごっこというのだな、世の人は。
次に、駅構内の落とし物。線路脇と違ってすぐに拾える場所であるためか、落ちているのは拾う気にならない物、もしくは、気づかずに落とした物である。その代表的なものは、靴のかかと関係。紳士靴の底裏に貼ってあるシートや、崩壊したかかと部分。折れたピンヒールも見たことがある。いや……突然、靴が壊れて、ガクッとなったら、慌てるよな。危ないわ……。ま、ドラッグストアに駆け込んだら、何とかなるよね。
最後に、駅ビル内の落とし物であるが、キャリーケースのコロについていたであろう丸いゴムで出来たものをよく見かける。それと―――あ、ここから汚話に入るから。想像力豊かな人には絶望を与えるだけだと思うので、心して読んで欲しい。ぞっとする汚話です。やめとくなら、今ですよ。いいですか?行きますよ、3、2、1、9!!
ある日、瑠紅が、乗り換えのため駅ビル内のお土産物屋がずらりとならぶ連絡通路に降り立ったとき、目にしたものは、どこまでも続く無数のタイヤの跡、跡、跡。恐らく、キャリーケースのタイヤに次々と轢かれ、原形をとどめることなく床にこすりつけられていったであろうものは、――推測ではあるが――汚大物様。色から察するに、水様ではなく、柔らかめの固形に近いものが地上に投下された後、後続の人々のキャリーケースが次々と轢いていき、床に無数の走行跡を付けたのだと考えられる。
投下者は、紙おむつをした幼児もしくは、処理のため紙おむつごと持ち運んでいたその保護者であろうか。はかせるタイプの紙おむつは、交換頻度が少ないと、中に投下された物の重みでずりさがってくることがあり、歩いている内に脱げたのかも知れないが……気付けよ、保護者。放置すな!それらを踏まないように歩くの、大変だったんだからね!
翌日、出勤時には、きれいになっていたが……あの日以来、床の汚れには気をつけて歩くようになった。目の前に広がる凄惨な光景に気づかずに歩いていた人もいるかと思うと、思い出す度に、ぞっとする。駅ビルのお掃除の人、本当にありがとうございました。
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