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第1章 復活の帝王

14.渇望(sideロウ)

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俺は、見た。
まだ、世間を知らず、絶望をも知らなかったあの頃を。

「ロウ、愛してるわ。」
笑顔で惜しげもなく、告げられる言葉。
そんなレイラに俺も、と俺は素っ気なく返したことを覚えている。
もう、言って貰えることのない言葉。
もう、見ることの出来ない笑顔。
もう、逢えることのない最愛の人。
あの時、ちゃんと伝えていれば良かった。
愛している、と。
後悔して、後悔して。
そして、全てを憎んだ。
それは、俺自身も含まれている。
「私は、あなたに生かされたまま生きるのは嫌よ。………私が生かされて、あなたが死ぬというのならば、私は誰かの為に命を投げ出し、救いながらも、死を目指すわ。だから、私の覚悟を踏みにじらないで、ロウ。」
あの時、俺はレイラにあんな言葉を言わせてしまった。
チカラがなかったから。
俺が弱かったから。
俺が強ければ、レイラは死ななかった。
だから。
俺は復讐を誓うと共に、何もかもを捨て去り強さを求めた。
ラースとの、絆さえ捨て去って。
俺はまだまだ、若かった。
ラースとの絆が、何よりもかけがえのないものだと、気づくことが出来なかった。
そういえば………
レイラと俺の縁を繋いだのも、お前だったな。
ラース。


レイラが竜の血を引く俺に怯えないことで、レイラも竜の血を引いていることが分かったのは、ラースと出会った魔法大学でのことだった。
気に留めてもいなかったクラスの人達の中で魔力が高く、異色な気配を放つレイラに気付いたのは、俺の気配でクラスの人達を怯えさせたとき。
僅かに古代エンシェントの属性を感じたことがキッカケだった。
それだけならば、俺は気にも留めなかっただろう。
そんな人間もいるだろう、と。
そう思うだけだったはずだ。
だが、ラースは聞いた。
レイラに、理由を。
その答えが、先祖に竜がいるということ。
僅かな、竜の血が体内に流れているということだった。
そのことを聞いてから、俺はレイラを本当の意味で“視た”のだ。
その身に流れる竜の血を。
レイラの魂を。
レイラのチカラを。
レイラの心を。
視たのだ。
その時、俺の胸はトクン、と高鳴った。
本能が疼いた。
火照る頬。
熱くなる身体。
浅く速くなる息。
それら全てを押さえて、レイラと話した。
多分、あの時、恋に落ちたのだろう。
焼き焦げる炎のような恋に。
運命と呼ばれる、竜の恋に。

竜は番いを持つ。
本能で感じる決められた番いを。
番いは出会うと惹かれあい、恋に落ちる。
まるで運命のような恋をする。
それは普通、竜同士で一生で一頭。
たが、稀に異種族であったり、番いが共有されていることがある。
その場合、竜が番いを看取るか、番いを後で見つけた方が番いを持てないことが多い。
俺の母は、番いを共有されている竜の一頭でしかも番いが異種族だった。
二つの稀な場合が重なった、前例のない番いだった。
母は恋を成就させた。
相手の竜も、恋を成就させた。
つまり、俺の父は母と相手の竜の両方を娶ったのだ。
竜は、唯一の番いを大事にする。
他の女に手を出すことはしない。
だから、俺の、母方の祖父は激怒した。
相手の竜の父も、だ。
どちらかにしろ、と父に怒った。
だが、父は反対する竜達をぶちのめした。
そう、徹底的に。
父は、地上最強種と呼ばれる竜達を相手にしても、勝利する実力を持っていた。
俺は、母の血を確実に継いでいるらしい。
何故なら、レイラは竜の血が流れているとはいえ、人間なのだから。

俺はレイラに恋をした。
燃えるような、焦げるような、花のような、月光のような、夜空のような。
誰にも得ることのない、美しい恋に。
だが、その恋は終わりを告げて、復讐の炎に焼かれ、俺は駆けた。
渇望した。
レイラを求めた。
だが、もうレイラはおらず、番いもいない。
俺はラースに封印されて、数百年。
俺はもう一度、恋をした。
レイラの生き写しの少女に。
ラースの妹に。
新たな番いに恋をした。
その少女の名は。
レイチェル。
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