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第1章 復活の帝王

4.クライスの手記

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ロウは、そのあと城の一室で休息を取っていた。
城内を歩き回らないで欲しい、と懇願されたロウには、することがなかった。
その代わり、といっていいかどうか分からないが、ロウの事が書かれていると言う、クライスの手記を貸して貰ったのだった。
それは、ラディウスの頼みでレイチェルを連れて、国から出る時に一緒に持って行って欲しい、というものだった。
相手の国にとられてはいけないものらしい。
パラリ、とクライスの手記をめくってみる。
懐かしいクライスの角ばった、しかし、綺麗な文字が並んでいた。
ロウの目に涙が浮かび、涙の雫が一筋流れた。
ロウは、懐かしかった。
クライスと過ごした、戻らないあの日々が様々と思い出せる。
(どうして、俺とアイツは敵対してしまったのだろう。)
どこで、道を間違えてしまったのか、ロウには分からない。
バレないように、そっと涙を拭って、クライスの手記に目を向けた。
手記は、クライスとロウの出会いから、始まっていた。
ロウは、当時の様子を瞼に浮かべる。

世界有数の魔法大学に進学したロウとクライスは、そこで運命の出会いをした。
はじめに、話しかけたのはクライスだった。
当時のロウは、辛辣で傍若無人だったが、クライスはそんなロウに、“仲良くなれる”と確信して近づいていったらしい。
クライスの思い通りに、はじめはクライスのことなど歯牙にかけなかったロウだったが、どんどん仲良くなり、親友と呼べる仲までに発展した。
それは、2人とも圧倒的な強者であったためだ。
ロウとクライスは強かった。
だから。
ロウとクライスはライバルになった。
時には、笑いあい、時には、刃を向けて切磋琢磨する。
2人には、そんな絆があった。
だが。
魔法大学を卒業して、道が分かたれたロウとクライスは、しばらくして再び出会った。
敵として。
ロウは、国に害を成す者になっていた。
国1つを1人で殲滅する災害。
一方、クライスは国を救う救世主になっていた。
国を襲う災害から守る者。
その時は、まだ2人の心は繋がっていた。
刃を交え、クライスは、“こちらへ戻れ、まだ間に合う”と、必死にロウに呼びかけた。
ロウは、クライスと敵対しないように、必死になって、理由を説明した。
だが。
2人の意見は交わることがなかった。
また一回また一回と、戦いを重ねていくうちに、ロウとクライスは親友を敵としてしか、見ることができなくなった。
しかし、かつての絆は、まだそこにあった。
2人は、互いに殺すことが出来ない。
実力はもちろんあったが何より。
情が2人を殺すことが出来ないでいたのだ。
それに。
互いに贈り合った武器を、まだ2人とも愛用していた。
でも。
ロウの悪行は、ますます酷くなるばかりだった。
もう、2人にはかつての面影は残っていなかった。
憎むべき敵であると、互いに牙を向け、傷つけ合う。
かつての彼らの友は、2人のその姿に嘆き悲しんだ。
そして。
クライスはロウを封印した。
憎むべき敵であるはずなのに、クライスはロウを殺せなかった。
ロウもまた、敵であるはずの、クライスの封印に抵抗することはなかった。
失われた、と思われていた絆は、確かに存在した。
だが。
その絆に、共に過ごした日々に、2人は気づけなかった。
気づいたのは。
ロウを封印した後だった。
クライスは、ロウが封印された後の平和な時に。
ロウは、封印の深い微睡の中で。
絆に気づいた。
しかし、時すでに遅く。
もう、2人は出会えない。

ロウは、拭ったはずの涙が再び流れ出てくるのを感じた。
人としての心を失ったと思っていたロウは、自分の涙に驚き、そして、戸惑った。
もう、止めることが出来ないその涙を。
ベッドに顔を埋め、隠した。
もう、戻らないクライスとの日々に。
出会えないクライスを想って。
ロウは涙を流す。
そして。
ロウは、泣き疲れて眠ったのだった。


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