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3話 死帝王オルフェウス(sideギルファ)
しおりを挟む死帝王。
それが、オルフェウスの異名である。
オルフェウスは、数千年前に破壊を繰り返した悪鬼で、古の時代にいたと言われていた竜種の一体だと伝えられている。
ただ、本当に古の時代に生きていた竜種だったのかは、未だに謎の中である。
……それが、俺の伝承だ。
俺は、ギルファ・オルザード。
前世の名は、オルフェウス。オルフェウス・ファルラ・サーラス。
サーラス帝国の皇太子だった。
伝承では、俺は竜種だと伝わっているが、それは半分正解であり、半分不正解だと言うことを、この世界の誰一人として知らない。
俺は、サーラス帝国の皇帝と竜の母から生まれた半竜だった。
ただ、半竜は生き残る確率が低く、成体になるまでに生き残ることができる個体がいないと言っていい。
そんな俺も、成体になる前に命の終わりを感じた一体だった。
俺は、種族的寿命前に死を迎えた珍しい例だったが。
前世の記憶を持ち、竜の力を持つ俺には、夕焼けを思わせる暁の髪を、どこの空よりも澄んでいる青色の瞳を持っている美しい幼馴染がいる。
ルナリア・アムネリアという名の少女だ。
俺は、ルナと呼んでいる。
ルナは、俺のことを“オルフェウスの鱗”を継承したちょっと強い人間としか思っていない。
俺的には、前世の俺の鱗が継承されるほと重要視されていることに驚いた。
俺の鱗は、俺が封印した前世の俺の力を秘めた鱗だった。
それは、俺の生まれ祖国であるサーラス帝国の皇帝が持っているはずだった。
だが。
サーラス帝国の皇帝は、俺の鱗を持っていなかった。
多分だが、俺の父が面白半分で鱗を売ったのだ。
あの人は、そんなことをする人間であるので、諦めている。
おかげで、少しは苦労したが、あまり労せずして鱗を手に入れることが出来た。
これから、俺の力をすべて集めるには途方も無い時がかかるだろう。
ルナは、オルフェウスの謎をすべて解き明かすと、息巻いている。
そんなことしなくても、俺が教えてやれるのに、とも思わなくも無いが、前世のことを教えていないので無理だと納得させる。
ルナ。
早く気付け。
俺が、お前の知りたくてやまない研究対象だということを。
俺がお前を愛しているということを。
お前に俺を愛して欲しいと思っていることを。
オルフェウスはこの俺だ。
孤独と争いの世界に耐えられなかった、憐あわれでとても弱くて、寂しがり屋な俺は。
愛して、愛されて、幸せを噛み締めたくて。
自らを殺した。
そして、願った。
次の生で、孤独になりたくないと。
その願いは叶った。
それだけで、よかったのに。
俺は、また願ってしまった。
ルナの心が欲しい、と。
俺の心は、ルナに囚われた。
俺は、俺の心が囚われたのならば、ルナが俺に囚われて欲しい、と。
俺は、夢見る。
かつて、平穏な日々を夢見たように。
俺は、首からさげられた、俺の鱗を撫でた。
これを、ルナは羨ましがっていた。
きっと、オルフェウスの謎に近づける鍵だから。
ルナが、オルフェウスの謎を追うのならば、俺はオルフェウスとしてでは無く、ルナの幼馴染として、ギルファ・オルザードとして、オルフェウスの謎を解き明かすのを見ていよう。
そして俺は、いつか告げるのだ。
俺が、ルナの知りたがったオルフェウスだということを。
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