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2話 ギルファ・オルザード
しおりを挟む今にも泣き出しそうに顔を歪めているギルファを見て私は、ギルファの顔を覗き込んだ。
「どうしたの、ギルファ。」私は、ギルファに声をかける。
「……驚いただけだ。ルナがお、オルフェウスをあんな風に思ってたから。」ギルファはニヤリと、口角を上げて言った。
ギルファが気丈に振る舞っているのは、見え見えであったが、私は、そう、と言ってギルファに飛び切りの笑顔を見せた。
ギルファは、そんな私をジッと見つめ、瞳を覗き込んだ。
心臓の音が聞こえるんじゃないかと思うほど、大きく音を立てている。
……やっぱり私は、ギルファが好きなのね…。
「ど、どうしたのよ?」私は、頰を朱に染めて、聞いた。
「……その顔……誰にもみせるなよ?」ギルファは、私に念を押したように言った。
……それって……。
「見せないわよ。……ねぇ、ギルファ。あなたは、私が居なくなったら、どうする?」私はポツリと、聞いた。
「……お前が、どこに、なんと言って、居なくなろうとも、必ずお前を見つけだす。……それが、世界の果てであっても、地獄に囚われていたとしても。」ギルファは、窓の外を見て言った。
心なしか、耳が赤い。
卒業した後に旅に出ることを言ったら、私のあとを追って来そうで、小さく苦笑した。
「じゃ、今言っとくわ。私、学園を卒業したら、オルフェウスの遺跡を回ろうと思ってるの。オルフェウスの謎を私が、すべて解き明かしてみせるわ。」私は、ジッとギルファを見つめながら、言った。
「………俺も、付いて行く。遺跡を回るなら、護衛もいた方がいいだろ?」ギルファは、私に言った。
ギルファは、まるでその遺跡に何かあるというように言い放った。
「あら、オルフェウスの遺跡には、何か危ない何かがいるの?」私がそうギルファに聞く。
私の声には、誰にでも分かる好奇心を含んだ声色だった。
「……あぁ。俺が聞いた話では、悪用されそうな情報がある遺跡では、守護者が守ってるらしい。」ギルファは、しまった、というような顔を一瞬して、聞いた風のように言った。
私の一族は、オルフェウスの伝承を仕事として生きているが、そのような話は聞いたことがなかった。
「聞いたことないわ。本当なの?」私は、ギルファに聞く。
「……本当だ。だから、付いて行っていいだろ?」ギルファは泣きそうになりながら、言った。
私は、ギルファの泣きそうな顔を見て空色の瞳をパチクリさせた。
「……いいわよ。そんな顔……反則よ……。」私は、やはり頰を赤らめながら言う。
でも、ギルファは、どうしてそんな顔で、そんなこと言うの?
「………幸せだな。あの頃にはない、争いのない平穏。こんな日々が続けばいいのに。」ギルファの呟きに私は、驚いてギルファを見た。
だって、ギルファは、争いなんて経験してない世代だから。
今の時代に生きる人たちは、老爺や老婆から幼子、赤子まで争いなんて経験したことないけれど。
彼は、何を争いと呼んでいるのだろう。
「……ギルファ……?」私は、困惑した声で彼の名前を呼んだ。
ギルファは、優しげな深紅の瞳で私を見る。
争いを経験した人が、ここまで優しげな瞳で見つめることができるだろうか?
私には、できない。
「何の……話をしているの?」私は、勇気を出して、ギルファに聞いた。
「…………今はまだ……聞かないでくれるか?……必ず……いつか話すから……。」ギルファは、いつになく悲しげな瞳で言った。
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