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3.支配者

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鏡天竜 スペクエルの姿に私は見とれた。
「……綺麗……。この世の生き物とは思えないわ。」私は、そう呟いた。
「普通の奴なら、怖くて泣き叫ぶ奴が多いんだがなぁ。」灰島さんは苦笑しながら言う。
私の発言のせいかスペクエルはじっと私を見ている。
ーーークルルルルルルル
スペクエルはそう美しく鳴いた。

「………私に、なにかついてるの?」私はそうスペクエルに聞くと、
ーーークァァァァァァウ
と、スペクエルは鳴いて、どこかへ飛んで行った。

「不思議だな、侵入者を生かしておくとは……。」灰島さんは心底、不思議そうに言った。
「灰島さんも生かされてると思うけど。」私はそう灰島さんに言う。
「攻撃されたことあるがなぁ。」灰島さんはそう言って、笑った。
「スペクエルを恐れている人を殺してると思うのは私だけかしら。」私は、ポツリと呟いた。
「……それもそうだな。その考えは、思い至ってはいたんだ。だが、確信がなかった。」そう灰島さんは言い切った。
ーーークゥゥゥゥゥアァァァァァ
スペクエルが戻ってきて、そう鳴いた。
私は、スペクエルへと向き直る。
スペクエルは、口にキラリと光るものを咥えていた。
スペクエルが咥えているものが私の目の前に置かれた。
それは、青い色の美しい宝石と黒曜石が竜の形に彫刻されたものだった。
その彫刻はとても緻密で、美しい。
これを売れば高い値段で取引されるであろうことは、素人目にも明らかだった。                               
「すごく綺麗ね。私にくれるの?」私は、微笑んでスペクエルに聞く。
ーーーククッ、コレハコノ世界ニハイル為ノ転移石トイウモノダ。コレハオマエニシカ使エヌヨウニナッテイル。マタ、ココヘキテクレルカ?
そう頭の中にスペクエルの声と思われる言葉が響いた。
灰島さんをチラリと見ると驚いたように固まっている。                                       
「灰島さん?どうしたの?」私は驚いている理由がわかっていながら、灰島さんに聞いた。 
「………しゃべった......?」そう灰島さんは呟く。
ーーーシャベッテイルワケデハナイ。コレハテレパシートイウ魔法ノ一種ダ。
そうスペクエルは言った。
「これで、私は帰っていいの?」私は聞くと、スペクエルは頷いた。
その瞳は、少し寂しそうに見えたのは気のせいだろうか?
ーーーマタ来テクレルカ?俺ハスペクエル。地上ニ住ンデイタ古ノ竜ノ生キ残リダ。
「私は、アゲハ。龍宮 彩葉よ。また、逢いに行くわ、絶対に。」
私はそうスペクエルに叫んで言った。
ーーー待ッテイル。何年デモ。
そうスペクエルは優しく言ってくれた。



そうして、私はこの世界の裏側を知ることになったのだった。

                                    
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