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45.深紅のマント
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恵まれた人が見てきたもの全てが、その場所1つで覆された。
生きてきた時間がどれだけ幸せで、暖かいものなのかを思い知らされた。
「ここが、東の村パセル?」
「まさか、こんなだとはね………」
「………」
その村の入り口に立つアセナ達4人の眼に映ったのは、焼き払われた家や、ボロボロになって歩く人々。
焼かれた家屋の断片に背中を預けて眠っているのか、死んでしまったのか分からない人々。
ルアがぼーっとその村を眺めていると、隣に立っていたアセナが急に走り出した。
「お、おい!アセナ!?」
ルアが呼び止めても、この声がアセナを止める事はなく、アセナは走って1人の少女に近づいた。
「お嬢ちゃんっ!!」
アセナが呼び止めると、その小さくボロボロになった足を止めて、アセナの方を向く少女の顔はまだ幼く、8歳になるかならないかくらいの子で、細い腕をアセナに向けて、警戒の眼を見せた。
「……誰?何しに来たの?………敵?」
たった8歳くらいの子が、アセナを敵だと警戒している。
その背に背負うまだ息をし始めて間もない赤子を守るように、アセナを睨みつけて。
「…………なんて、酷い場所。安心して暮らせる場所じゃないなんて。」
アスカが呟く。
その少女の背にあわせてアセナは暑い地に膝を折ると、アセナは自分の靴を脱ぎ始めた。
「これ、履いて?」
暑い熱い風が顔に吹きつけてきた。
アセナはその地面に裸足を与え、アセナの目の前の少女に靴を手渡している。
アセナは少女に靴を無理矢理持たせると、今度は羽織っていた真っ白で美しいマントを脱ぎ始めた。
「え………いいの?お姉ちゃんは?」
少女はその細い腕をゆっくりと下ろして、驚いた顔をアセナに見せて聞いた。
マントを脱いだアセナの半袖から覗く腕は、あまりに細くて白くて、直接日光を浴びるとヒリヒリと痛みそうだった。
「私は平気。ほら、早く靴を履いて?これも、羽織って。じゃないと赤ちゃんが日焼けしちゃう、ね?」
アセナはそういうと、まだ悲しげで涙を浮かべて立っている少女と背中の赤子にその白いマントを羽織らせて言った。
少女は靴を履くために、腰を下ろした。その瞬間、乾いた土に涙を落として小さく呟いた。
「あ……り……がとぉ………。」
小さくて、ルアや黒の男、アスカには聞えるか聞えないかくらいの震えた声。
その声にアセナはその小さな手を優しく、少女の頭に乗せた。
それから何を思ったか、アセナは身に着けていた全てを脱ぎ捨てワンピース一枚とペンダント1つだけになると
その少女にその服やカバンや、持ち物全てを渡して言った。
「これを他の子供達にも配って欲しいの。」
真っ白のワンピースが夏の暑い風と光に揺れている。
「それから、あそこの広場に呼び集めて?お昼の時間だもんね。お昼にしよう?」
何もないその場所で、たった一人ワンピースの少女が何かを作り始める音がした。
少女はアセナの言葉にその場から走っていく。
するとそれまで背を向けていたアセナが、こっちを振り返って笑った。
「お前!馬鹿じゃねーのか!?そんな格好になって!!日焼けして、肌が赤くはれ上がるぞ!?」
アセナの真っ白な細い腕は、まさに女である事を告げていた。
まだ幼いアセナの日焼けを知らない腕は、夏の風にさらされている。
アセナはルア達に近寄りながら、笑って言った。
「日焼けくらい、平気だよ!!」
「お前、あのマントは必要なものだろ!?あんな高価なもん…………」
ルアは言う。
全てを捨てて、自分はたった一つのペンダントとワンピースだけで。
誰よりもずっと幼いはずの少女の行動に、ルアも黒の男もアスカも驚いていた。
そんなルア等に、アセナは明るい声で言った。
「私はあの真っ白のローブが欲しくて、テストを頑張ったわけじゃない。あんなのあってもなくても、私はドラゴーネだからね。私が羽織るよりも、本当に必要とする人が羽織るためにあるほうがいい、でしょ?」
にっこりと笑ってアセナは言った。
「眩しすぎるわ。私は、そんな事は思えない。………どれだけ穢れればすむのかしらね。」
乾いた土の上に裸足で立ち、アセナはこれからこの世界を変えていくために。
全てを捨てて、純白のドレスをまとい、その細い首から美しい金のペンダントを吊り下げて。
「さぁ、手伝って?子供達のためにお昼を集めなくちゃ!!」
もうすぐ昼を過ぎようとしていた。
アセナはそういうと、晴れ渡る青い空を静かに見上げた。
風向きが変わり、涼しい風が頬をかすめて、村を吹きぬけていく。
「キルア」
真っ白な竜に、真っ白な裸足の天使が駆け寄った。
『どうしたんですか!?その姿……』
「重たいから、いらないもの全部あげたの。このほうが、キルアも軽くていいでしょう?」
『貴女は……………自分の体を大事にしてください。』
「ありがとう、キルア。」
そういうとアセナはこっちに目を向けて、行こう!と声を上げた。
唯その様子を呆然と眺めていたルアの隣で、アスカが深紅のマントを脱いで、アセナに近づいた。
キルアの背に乗ろうとしていたアセナの背に、その深紅のマントをそっとかぶせた。
「アスカさん、貸してくれるの!?」
「ええ。ずっと被っていて。」
「でも、アスカさんが焼けちゃう!」
「大丈夫よ。私は、強いもの。」
「ありがと!」
純白のワンピースと、深紅の長いマントを羽織って少女は竜にまたがると空へと近づいた。
空はその少女と竜を喜んで迎えて、風を躍らせていた。
「おい。」
「ん?」
ルアがそんな空を見上げていると黒の男が声をかけてくる。
彼女が変えていくのは、この国だけじゃなく、ルアやこの男。
そしてアスカ。
彼女と出会う全ての人に、その幸せを分け与えて彼女は全てを変えていく。
「行くぞ。」
「あ、あぁ!!」
アスカはすでにアセナを追って、空を舞っている。
ルアが箒にまたがると、少しだけ、世界が広がったようなそんな気がした。
生きてきた時間がどれだけ幸せで、暖かいものなのかを思い知らされた。
「ここが、東の村パセル?」
「まさか、こんなだとはね………」
「………」
その村の入り口に立つアセナ達4人の眼に映ったのは、焼き払われた家や、ボロボロになって歩く人々。
焼かれた家屋の断片に背中を預けて眠っているのか、死んでしまったのか分からない人々。
ルアがぼーっとその村を眺めていると、隣に立っていたアセナが急に走り出した。
「お、おい!アセナ!?」
ルアが呼び止めても、この声がアセナを止める事はなく、アセナは走って1人の少女に近づいた。
「お嬢ちゃんっ!!」
アセナが呼び止めると、その小さくボロボロになった足を止めて、アセナの方を向く少女の顔はまだ幼く、8歳になるかならないかくらいの子で、細い腕をアセナに向けて、警戒の眼を見せた。
「……誰?何しに来たの?………敵?」
たった8歳くらいの子が、アセナを敵だと警戒している。
その背に背負うまだ息をし始めて間もない赤子を守るように、アセナを睨みつけて。
「…………なんて、酷い場所。安心して暮らせる場所じゃないなんて。」
アスカが呟く。
その少女の背にあわせてアセナは暑い地に膝を折ると、アセナは自分の靴を脱ぎ始めた。
「これ、履いて?」
暑い熱い風が顔に吹きつけてきた。
アセナはその地面に裸足を与え、アセナの目の前の少女に靴を手渡している。
アセナは少女に靴を無理矢理持たせると、今度は羽織っていた真っ白で美しいマントを脱ぎ始めた。
「え………いいの?お姉ちゃんは?」
少女はその細い腕をゆっくりと下ろして、驚いた顔をアセナに見せて聞いた。
マントを脱いだアセナの半袖から覗く腕は、あまりに細くて白くて、直接日光を浴びるとヒリヒリと痛みそうだった。
「私は平気。ほら、早く靴を履いて?これも、羽織って。じゃないと赤ちゃんが日焼けしちゃう、ね?」
アセナはそういうと、まだ悲しげで涙を浮かべて立っている少女と背中の赤子にその白いマントを羽織らせて言った。
少女は靴を履くために、腰を下ろした。その瞬間、乾いた土に涙を落として小さく呟いた。
「あ……り……がとぉ………。」
小さくて、ルアや黒の男、アスカには聞えるか聞えないかくらいの震えた声。
その声にアセナはその小さな手を優しく、少女の頭に乗せた。
それから何を思ったか、アセナは身に着けていた全てを脱ぎ捨てワンピース一枚とペンダント1つだけになると
その少女にその服やカバンや、持ち物全てを渡して言った。
「これを他の子供達にも配って欲しいの。」
真っ白のワンピースが夏の暑い風と光に揺れている。
「それから、あそこの広場に呼び集めて?お昼の時間だもんね。お昼にしよう?」
何もないその場所で、たった一人ワンピースの少女が何かを作り始める音がした。
少女はアセナの言葉にその場から走っていく。
するとそれまで背を向けていたアセナが、こっちを振り返って笑った。
「お前!馬鹿じゃねーのか!?そんな格好になって!!日焼けして、肌が赤くはれ上がるぞ!?」
アセナの真っ白な細い腕は、まさに女である事を告げていた。
まだ幼いアセナの日焼けを知らない腕は、夏の風にさらされている。
アセナはルア達に近寄りながら、笑って言った。
「日焼けくらい、平気だよ!!」
「お前、あのマントは必要なものだろ!?あんな高価なもん…………」
ルアは言う。
全てを捨てて、自分はたった一つのペンダントとワンピースだけで。
誰よりもずっと幼いはずの少女の行動に、ルアも黒の男もアスカも驚いていた。
そんなルア等に、アセナは明るい声で言った。
「私はあの真っ白のローブが欲しくて、テストを頑張ったわけじゃない。あんなのあってもなくても、私はドラゴーネだからね。私が羽織るよりも、本当に必要とする人が羽織るためにあるほうがいい、でしょ?」
にっこりと笑ってアセナは言った。
「眩しすぎるわ。私は、そんな事は思えない。………どれだけ穢れればすむのかしらね。」
乾いた土の上に裸足で立ち、アセナはこれからこの世界を変えていくために。
全てを捨てて、純白のドレスをまとい、その細い首から美しい金のペンダントを吊り下げて。
「さぁ、手伝って?子供達のためにお昼を集めなくちゃ!!」
もうすぐ昼を過ぎようとしていた。
アセナはそういうと、晴れ渡る青い空を静かに見上げた。
風向きが変わり、涼しい風が頬をかすめて、村を吹きぬけていく。
「キルア」
真っ白な竜に、真っ白な裸足の天使が駆け寄った。
『どうしたんですか!?その姿……』
「重たいから、いらないもの全部あげたの。このほうが、キルアも軽くていいでしょう?」
『貴女は……………自分の体を大事にしてください。』
「ありがとう、キルア。」
そういうとアセナはこっちに目を向けて、行こう!と声を上げた。
唯その様子を呆然と眺めていたルアの隣で、アスカが深紅のマントを脱いで、アセナに近づいた。
キルアの背に乗ろうとしていたアセナの背に、その深紅のマントをそっとかぶせた。
「アスカさん、貸してくれるの!?」
「ええ。ずっと被っていて。」
「でも、アスカさんが焼けちゃう!」
「大丈夫よ。私は、強いもの。」
「ありがと!」
純白のワンピースと、深紅の長いマントを羽織って少女は竜にまたがると空へと近づいた。
空はその少女と竜を喜んで迎えて、風を躍らせていた。
「おい。」
「ん?」
ルアがそんな空を見上げていると黒の男が声をかけてくる。
彼女が変えていくのは、この国だけじゃなく、ルアやこの男。
そしてアスカ。
彼女と出会う全ての人に、その幸せを分け与えて彼女は全てを変えていく。
「行くぞ。」
「あ、あぁ!!」
アスカはすでにアセナを追って、空を舞っている。
ルアが箒にまたがると、少しだけ、世界が広がったようなそんな気がした。
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