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7.実習訓練
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数日がたった。
「伝承のドラゴーネがクラスDなんて。」そんな声がどこからか聞こえた。
あれから、スクール中で噂になった。
伝承に伝わる伝説の白竜の主がアセナで、ドラグーンになる可能性があると。
表では。
羨ましい、と。
ドラグーンになれるよ、と。
お似合いだ、と。
口々にアセナを称えた。
だが。
裏では。
もっと優秀な人がいる、と。
なぜ自分ではないのか、と。
竜が可哀そう、と。
様々にアセナを貶した。
普通は止める立場である教師でさえ、そうだった。
一人を除いて。
その教師とは。
リリア・ストレイゼ。
ドラゴーネスクールでも三本指に入る高等ドラゴーネだった。
リリアは微笑む。
伝説の白竜と契約した少女が、リリアには輝いて見えた。
「ふふん。」アセナは鼻歌を奏でながら、ご機嫌に廊下を歩む。
隣には、リラとロイの姿がある。
「アセナ、ご機嫌ね。」リラは微笑ましい、というように言った。
「どうしたんだ?」ロイは聞く。
「実はねぇ、次の授業が実習訓練なの。」アセナは笑った。
「へぇ。」と、ロイ。
「頑張ってね。」と、リラは微笑む。
「ありがと、リラ!」そうアセナは、リラに礼を言うとそのまま見送られて、その場を後にした。
実習訓練は、教師一人に二、三人の生徒が付いて行うものだ。
訓練場と呼ばれる屋外で、魔法を使う訓練だった。
今回は、騎竜と共に初めて実習を行うらしい。
外に向かう途中。
ちら、と赤銅色の髪が見えた気がした。
アセナは自分の勘に従って、突撃した。
「セルスーー!!」
「アセナ?」
その人物はやはりセルスであった。
「やっぱり、セルスだった。」にこやかにアセナは告げる。
「おれじゃなかったらどうしたんだよ。」呆れたように、はあ、とため息を一つついて言った。
「セルスだったから大丈夫。」アセナは輝かしい笑顔で告げた。
「なあ、アセナ___」セルスは、アセナに声をかける。
が。
アセナは外を見ると、ハッとしたようにセルスに背を向けた。
「次、実習訓練だった!!じゃあね、セルス!!」アセナは忙しなく言うと、タタタッと駆けていきすぐ姿を消した。
セルスは、アセナの消えた方をずっと眺めていた。
アセナは、外の魔法樹の木の下に教師を見つけた。
トトト、と近づく。
居たのは、リリア。
ただ、1人だった。
「ほかの生徒は、居ないんですか?」アセナはコテン、と首を傾げる。
「いないわ。貴女だけよ。クラスDで気になったのは貴女だけだったもの。」リリアは微笑んで、言った。
(ああ。私が、キルアを相棒にしたから凄いって思ってるんだ。)
アセナは、そう納得した。
「じゃあ、コールからやりましょうか?」リリアは言った。
コールとは、ドラグーンやドラゴーネが相棒の竜を呼ぶための基本的な魔法である。
手を挙げ、竜の名前を呼びながら、手を振り下ろす。
そうすると、竜がドラゴーネのいるところへ、舞い降りてくるのだ。
アセナは来い、と竜に命令するために魔力を流す。
心の中で呼ぶように。
直ぐ側にいる竜に呼びかけるように。
かつてアセナにある教師が言った言葉だ。
それを思い出して、アセナは流していた魔力を止めた。
魔力を出す瞬間になって、魔力を急に止めたアセナに、リリアは驚いた。
アセナはジッとリリアを見つめる。
「それって出来なきゃ駄目ですか?」アセナはリリアに言い放った。
「そうね。出来ないと、ドラゴーネとは認められないわ。」リリアは苦笑して言った。
「アセナちゃんがキルアに命令するのが嫌だということは、私にだって分かるのよ。」リリアは優しく笑った。
今では考えられない感情。
それでも、リリアには分かった。
ただ、その感情をリリアが分かっていたことに、アセナは驚く。
「私には、ドラゴーネが竜に命令する理由が分からないです。」アセナはリリアをまっすぐに見つめ、言う。
「そう。でも、コールを命令にするのは、アセナちゃん次第だわ。」
「私次第……?」アセナは、ぽつり、と言った。
「そうよ。いい?コールには種類が2つあるの。”来い”と”来て欲しい”は全く違う。でも、二つともコールなのよ。」リリアはアセナへ言った。
アセナは、にこり、と笑った。
さらり、とアセナの銀糸の髪が風に揺れ、いつも元気な雰囲気のアセナが一瞬だけ、儚く見えた。
そのとき。
遠くから、風の翔ける音が、微かに聞こえてくる。
「まさか……」
ヒュウ。
『そんなこと願わなくても、来て、と呼べばいいのに。』キルアは言った。
その声色は、独白に近い。
声わ上げずに。
手を振らずに。
心でキルアを呼んだ。
ありがとう。
アセナは、そうキルアに言った。
『はっきり聞こえるまでに少し時間がかかるみたいですね。』キルアは考察する。
時間がかかるのは、まだ安定していないからだろう。
安定したら。
アセナは恐ろしく凄いドラゴーネになるだろう。
「素敵。」
リリアはそう静かに零す。
アセナはきっと、高く美しく舞い上がっていくだろう。
あの空に____
「伝承のドラゴーネがクラスDなんて。」そんな声がどこからか聞こえた。
あれから、スクール中で噂になった。
伝承に伝わる伝説の白竜の主がアセナで、ドラグーンになる可能性があると。
表では。
羨ましい、と。
ドラグーンになれるよ、と。
お似合いだ、と。
口々にアセナを称えた。
だが。
裏では。
もっと優秀な人がいる、と。
なぜ自分ではないのか、と。
竜が可哀そう、と。
様々にアセナを貶した。
普通は止める立場である教師でさえ、そうだった。
一人を除いて。
その教師とは。
リリア・ストレイゼ。
ドラゴーネスクールでも三本指に入る高等ドラゴーネだった。
リリアは微笑む。
伝説の白竜と契約した少女が、リリアには輝いて見えた。
「ふふん。」アセナは鼻歌を奏でながら、ご機嫌に廊下を歩む。
隣には、リラとロイの姿がある。
「アセナ、ご機嫌ね。」リラは微笑ましい、というように言った。
「どうしたんだ?」ロイは聞く。
「実はねぇ、次の授業が実習訓練なの。」アセナは笑った。
「へぇ。」と、ロイ。
「頑張ってね。」と、リラは微笑む。
「ありがと、リラ!」そうアセナは、リラに礼を言うとそのまま見送られて、その場を後にした。
実習訓練は、教師一人に二、三人の生徒が付いて行うものだ。
訓練場と呼ばれる屋外で、魔法を使う訓練だった。
今回は、騎竜と共に初めて実習を行うらしい。
外に向かう途中。
ちら、と赤銅色の髪が見えた気がした。
アセナは自分の勘に従って、突撃した。
「セルスーー!!」
「アセナ?」
その人物はやはりセルスであった。
「やっぱり、セルスだった。」にこやかにアセナは告げる。
「おれじゃなかったらどうしたんだよ。」呆れたように、はあ、とため息を一つついて言った。
「セルスだったから大丈夫。」アセナは輝かしい笑顔で告げた。
「なあ、アセナ___」セルスは、アセナに声をかける。
が。
アセナは外を見ると、ハッとしたようにセルスに背を向けた。
「次、実習訓練だった!!じゃあね、セルス!!」アセナは忙しなく言うと、タタタッと駆けていきすぐ姿を消した。
セルスは、アセナの消えた方をずっと眺めていた。
アセナは、外の魔法樹の木の下に教師を見つけた。
トトト、と近づく。
居たのは、リリア。
ただ、1人だった。
「ほかの生徒は、居ないんですか?」アセナはコテン、と首を傾げる。
「いないわ。貴女だけよ。クラスDで気になったのは貴女だけだったもの。」リリアは微笑んで、言った。
(ああ。私が、キルアを相棒にしたから凄いって思ってるんだ。)
アセナは、そう納得した。
「じゃあ、コールからやりましょうか?」リリアは言った。
コールとは、ドラグーンやドラゴーネが相棒の竜を呼ぶための基本的な魔法である。
手を挙げ、竜の名前を呼びながら、手を振り下ろす。
そうすると、竜がドラゴーネのいるところへ、舞い降りてくるのだ。
アセナは来い、と竜に命令するために魔力を流す。
心の中で呼ぶように。
直ぐ側にいる竜に呼びかけるように。
かつてアセナにある教師が言った言葉だ。
それを思い出して、アセナは流していた魔力を止めた。
魔力を出す瞬間になって、魔力を急に止めたアセナに、リリアは驚いた。
アセナはジッとリリアを見つめる。
「それって出来なきゃ駄目ですか?」アセナはリリアに言い放った。
「そうね。出来ないと、ドラゴーネとは認められないわ。」リリアは苦笑して言った。
「アセナちゃんがキルアに命令するのが嫌だということは、私にだって分かるのよ。」リリアは優しく笑った。
今では考えられない感情。
それでも、リリアには分かった。
ただ、その感情をリリアが分かっていたことに、アセナは驚く。
「私には、ドラゴーネが竜に命令する理由が分からないです。」アセナはリリアをまっすぐに見つめ、言う。
「そう。でも、コールを命令にするのは、アセナちゃん次第だわ。」
「私次第……?」アセナは、ぽつり、と言った。
「そうよ。いい?コールには種類が2つあるの。”来い”と”来て欲しい”は全く違う。でも、二つともコールなのよ。」リリアはアセナへ言った。
アセナは、にこり、と笑った。
さらり、とアセナの銀糸の髪が風に揺れ、いつも元気な雰囲気のアセナが一瞬だけ、儚く見えた。
そのとき。
遠くから、風の翔ける音が、微かに聞こえてくる。
「まさか……」
ヒュウ。
『そんなこと願わなくても、来て、と呼べばいいのに。』キルアは言った。
その声色は、独白に近い。
声わ上げずに。
手を振らずに。
心でキルアを呼んだ。
ありがとう。
アセナは、そうキルアに言った。
『はっきり聞こえるまでに少し時間がかかるみたいですね。』キルアは考察する。
時間がかかるのは、まだ安定していないからだろう。
安定したら。
アセナは恐ろしく凄いドラゴーネになるだろう。
「素敵。」
リリアはそう静かに零す。
アセナはきっと、高く美しく舞い上がっていくだろう。
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