兄が届けてくれたのは

くすのき伶

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頑張ったね会

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それから2時間ほど話し、3人はカフェを出た。

ハルにとって、あっというまの時間だった。

適度に相槌をうち優しい眼差しでサエを見つめるタカ。タカを信頼してそうに微笑むサエの表情。

ハルはそんな2人の姿がとても印象的に思えた。

タカは兄に対しても、こんな目で見つめていたのだろうか、そう思った。


「タカさんサエさん、今日はありがとうございました」

「こちらこそ会ってくれてありがとうね。ハル君」

「僕も楽しかったです、ハルさん。僕サエちゃん送ってくから、ここで」

「はい。じゃあまた」

ハルが軽く会釈をして駅に向かって歩き出した。




ハルの後ろ姿が小さくなったところで、サエがタカを見て言う。

「き……緊張したああああーー……」

八の字に眉毛が下がるサエの顔を見て、タカが吹き出して笑う。

「あはは!え、そんな感じしなかったけど」

「最後の方は大丈夫だったけど、最初は心臓バクバクだったよ。ひゃー、って感じ」

「そうだったんだ。ほんと急にごめんね」

「いやいや、謝らないで。緊張したけど楽しかった」

「話盛り上がってよかったよ」

「タカ君もハル君に会ったときびっくりしたんだろうけど、本当そっくりだね」

「でしょ?笑った顔とかね」

「そう!あのね、辛いとかじゃなくて、ハル君が笑う度にヒロの笑顔が脳内で駆け巡ってきてて……なんていうんだろう、私の頭の中忙しくて、走馬灯ってあんな感じなのかな」

「え、大丈夫?」

「いやいや、ここ笑うとこだよ!大丈夫だよ。前にも話したけど今日もすごく実感した。実は辛くて席外すことになったらどうしようとも思ったんだけど、辛くなかった。びっくりはしたよ?でも、場もしんみりしてなかったし、やっぱり私の中で節目に来てるんだなって」

「そうだね。サエちゃんの新たな人生のスタートがいまなのかもね」

「なんかそれって、大ごとのように聞こえる。あはは」

「そうだね」

タカもクスクスと笑った。

「ハル君と会って、もしかしてタカ君も何か変化……あったんじゃない?」

「変化?うーん。まあビッグイベントには変わらないけど、どうかな」

「そっか。あ!ねえ、タカ君今日このあと予定ある?」

「いや、ないよ」

「じゃ飲まない?」

「お、いいねえ。行くか」

2人は飲みに行くことになった。



駅前で適当に見つけた居酒屋入る。

「何飲む?タカ君いつも生だっけ?」

「もちろん」

「じゃあ先に注文しちゃお、すいませーん」

ハキハキと注文するサエを見て、タカが言う。

「サエちゃん、また元気になってる気がする」

「ええ?前回から?最近は友達とも飲みに行ってるよ」

「そっか、よかった」

「タカ君は誰かと飲んでる?」

「ああー……っと、飲んだといえば、ハルさんと飲んだかな」

「へー、もうすごく仲良いじゃん」

サエの驚いた表情に、タカが嬉しくなる。

「サエちゃん。なんか俺、嬉しいよ」

「え?何が?」

「うん、サエちゃんの表情が豊かになっていくの見るとさ」

「ちょっと!笑 それって何目線なの。表情くらい変わるよ」

サエが吹き出して笑った。

「あ、ビールきた」

「はい、では、お疲れ~」

「なんだかこれ、"ハル君に会うの頑張ったね会" みたいだね、あはは」

「まあでも頑張ったよ。サエちゃん初対面だったし」

「そうだね。そういえばこうやってタカ君と飲むの久しぶりだね」


「だね。あ、サエちゃん今度ケーキ作ってあげれば?」

「え?ハル君に?」

「うん」

「ハル君って甘いものいけるのかな?また会う機会があったら食べてもらいたいけど」

「あー……そうだね。聞いとこか?」

「あ、いいよいいよ。直接聞くし。って作る気満々笑」

「え?ハルさんと連絡先交換したの?」

「うん。ちょうどタカ君がトイレ行ってるときに話の流れで」

「あ……そうなんだ」

「私から連絡することはあまりないかもしれないけど、ハル君はヒロの知りたいことあるかもしれないしね」

「そう……だね」

「ヒロが好きだったケーキを作ったら、ハル君嬉しい気持ちになるのかな」

「うん、嬉しいと思うんじゃないかな。ハルさんはヒロの好きなものとか、嫌いなものとか、全然知らないと思うからさ」

「子供の頃に離れ離れになっちゃったもんね」

「うん。大人になったヒロのこと、何も知らないんだよ」

「……」

「食べ物、注文しよかっか」

「そうだね」

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