兄が届けてくれたのは

くすのき伶

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もっとタカさんを知りたい

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2人は駅に到着した。

「駅着きましたね。話してるとあっという間だ」

「はい」

「ハルさん今日、誘ってくれてありがとうございます。飲み会楽しかったです」

「あ、いやいや。こちらこそ。本当はもっとベロベロに酔ったタカさんを見てみたかったですけど」

「あはは。外でそこまで飲むことはないからなぁ」

「家で飲むことはあるんですか?」

「はい。仕事の関係でお酒はいくつか家にあるんで」

「へえ、おしゃれなお酒作ってそうです」

「いやいや、ロックか水割りとかですよ」

「へ、へえ。やっぱり強いお酒って感じしますね」

タカが軽く首を横に振って微笑む。

「あ、電車ちょうどいい時間あります?」

「え!?あ、はい。えーと……あと少しで……あ、あと1分だ」

ハルは駅の電光掲示板の時刻をチラッと見て言った。

「すごいタイミング。ちょうどいいですね、行ってください。じゃあここで」

改札の前で、タカがハルを急かした。

「え、あ、はい!ありがとうございました、ほんと、じゃあまた」

「はい、また」

ハルは、急かすタカに言葉に乗ってしまい、振り返ることなく駅のホームへと急いでしまった。

ホームに到着したと同時に電車が来た。

次の電車に乗ってもよかったが、なぜだか次の電車でいいです、と言えなかった。

電車に乗り、名残惜しさを感じた。

もっとタカさんを知りたい、タカさんの家はどんなだろう、家に行ってみたい、とタカのことで頭がいっぱいになっていた。




その頃タカは、ハルが乗った電車とは別のホームに向かっていた。

そして20分ほど経って、タカが乗る電車が到着した。

電車に乗り、ハルの耳について思い出す。

たまたま自分がよく聞いていたから、それをハルが感じ取ったのか、あるいはハルの兄と関係することだから感じ取ったのか、ハルは耳で感じるタイプなのか、答えのでない疑問がタカの頭の中を駆け巡っていた。




ハルが自宅マンションに戻ってきた。

その1時間後、タカからメールが届く。

「家つきましたか?今日はありがとうございました。実家に戻ったら、また何か教えてくださいね」

「はい。こちらこそ、ありがとうございます。今週末あたり、行ってきます!」

そう返事をした。

タカへ連絡する口実がまた増えた、そう思うとハルは嬉しい気分になった。

自分の体のことなのに、まるでタカへのためにしているようだった。



そしてハルは、

兄ちゃん、またタカさんと会ってきたよ。

そう心の中で呟いた。
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