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大学生の頃の兄
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19時ちょっと前に、"いつもの場所" に来たハル。するとそこには既にタカが座っていた。
月とても明るいので、タカの姿はすぐにわかった。
ハルの足音に気づいたタカがハルに向かって軽く会釈をする。
「ハルさん」
「あっこんばんは。タカさん体調大丈夫ですか」
「大丈夫です。バッチリ。さっきは本当にすみません。こんな夜に。でもまた来てくれてありがとうございます」
タカがニコッ笑って答える。
「あ、いえ。呼吸……よく乱れるんですか」
「ああ、僕の目も万能じゃなくて……ここを使うと、自分が思っている以上に体力消費するみたいで。内容にもよるんでしょうけど。はは」
タカが自分の頭をまた指差し、困ったような表情でまた笑う。
ハルは、タカが "頭を使うと疲れちゃって"、と発言してたことを思い出した。
「やっぱり、そうだったんですね」
「でも少し休めば回復するので。ハルさんはそういうことないですか?」
「あ、僕は疲れるほど使わないっていうか、使えないというか。正直僕も自分のそういう機能、よく分かっていないんです。意図的には使えない……というか。急にいろんなことが気づくだけで。なんか分かりにくいこと言ってすみません」
「……もしかしたら、使えないようになってしまったきっかけが、過去にあるのかもしれませんね」
タカが少しの沈黙のあとに答えた。
「え……」
「あ、見てください海。月で照らされた海も綺麗ですよね」
ニコっと笑い、タカが海の方を指差す。
「あ、ほんとですね。すごく綺麗です」
そんなハルを見てタカが言う。
「ここの海、本当に綺麗ですよね。海と言えば、僕は夕方の海がとくに好きなんですけど」
「僕も海、好きです。どんな海も好きです」
しばらく2人はだまったまま海を眺めた。
「じゃあ、さっきの話の続きをしますね。高校の話をしたところでしたよね」
「はい。聞かせてください。あの、無理はしないでくださいね」
ハルは、タカの意味深な発言が気にはなったが、まずはタカのペースに合わせて話を聞くことにした。
ハルの気遣いに、タカがニコッと笑いながら小さく頷く。
「僕とお兄さんは、高校を卒業後は別々の大学に進みました。お兄さんは大学で、サエちゃんと出会います。さっき話したお兄さんの彼女です」
タカは、ハルの兄がサエを見つめる眼差しを思い出していた。
「サエちゃん、すごく良い子なんですよ。人の心の痛みが分かるし、よく笑うし、お兄さんと同じように優しい。それから甘いものが大好きで、見てて心配になるくらい食べるんです。お兄さんはよくケーキの食べ放題に付き合わされてました」
タカはクスクスと笑いながら話す。
「ケーキの種類覚えたって言うお兄さんの困った顔が、本当におかしくて」
「へえ。そうなんですね」
「サエちゃんを見るお兄さんの顔ってすごく穏やかで、ああ本当に幸せなんだなって。そう思ったら僕も嬉しくなりましたね。サエちゃんもすごく幸せそうでした」
「兄の恋愛の話を聞くのは、なんだか新鮮です」
「そうですよね。これは僕が視えたものではなく、僕からの当時の印象ですけどね」
ハルは、兄が何をタカに伝えているのか少し気になった。言葉ではなく、なぜ事柄を伝えるのか、わからなかったからだ。
「お兄さん、大学生活かなり楽しんでいるようでした。バイトもやってて、バイト仲間たちからも愛されていたようで。スノボ行ったり、旅行行ったり、いろんな話を聞きましたから。それとサエちゃんとのことも」
ハルは黙ったまま聞いていた。
「ハルさんも大学……でしたよね。大学って、高校とは違って自由に講義選べるし、決まった場所にずっといなくちゃいけないこともないし、友達と一緒に行動する機会も減るじゃないですか。だから、僕は高校生の頃のような孤立とは無縁で、お兄さんいなくてもそこそこ大学生活は楽しめてました」
「大学って、そうですよね。僕もわりとのびのびと過ごしてたと思います」
「ハルさんはどんな大学生だったんですか?」
月とても明るいので、タカの姿はすぐにわかった。
ハルの足音に気づいたタカがハルに向かって軽く会釈をする。
「ハルさん」
「あっこんばんは。タカさん体調大丈夫ですか」
「大丈夫です。バッチリ。さっきは本当にすみません。こんな夜に。でもまた来てくれてありがとうございます」
タカがニコッ笑って答える。
「あ、いえ。呼吸……よく乱れるんですか」
「ああ、僕の目も万能じゃなくて……ここを使うと、自分が思っている以上に体力消費するみたいで。内容にもよるんでしょうけど。はは」
タカが自分の頭をまた指差し、困ったような表情でまた笑う。
ハルは、タカが "頭を使うと疲れちゃって"、と発言してたことを思い出した。
「やっぱり、そうだったんですね」
「でも少し休めば回復するので。ハルさんはそういうことないですか?」
「あ、僕は疲れるほど使わないっていうか、使えないというか。正直僕も自分のそういう機能、よく分かっていないんです。意図的には使えない……というか。急にいろんなことが気づくだけで。なんか分かりにくいこと言ってすみません」
「……もしかしたら、使えないようになってしまったきっかけが、過去にあるのかもしれませんね」
タカが少しの沈黙のあとに答えた。
「え……」
「あ、見てください海。月で照らされた海も綺麗ですよね」
ニコっと笑い、タカが海の方を指差す。
「あ、ほんとですね。すごく綺麗です」
そんなハルを見てタカが言う。
「ここの海、本当に綺麗ですよね。海と言えば、僕は夕方の海がとくに好きなんですけど」
「僕も海、好きです。どんな海も好きです」
しばらく2人はだまったまま海を眺めた。
「じゃあ、さっきの話の続きをしますね。高校の話をしたところでしたよね」
「はい。聞かせてください。あの、無理はしないでくださいね」
ハルは、タカの意味深な発言が気にはなったが、まずはタカのペースに合わせて話を聞くことにした。
ハルの気遣いに、タカがニコッと笑いながら小さく頷く。
「僕とお兄さんは、高校を卒業後は別々の大学に進みました。お兄さんは大学で、サエちゃんと出会います。さっき話したお兄さんの彼女です」
タカは、ハルの兄がサエを見つめる眼差しを思い出していた。
「サエちゃん、すごく良い子なんですよ。人の心の痛みが分かるし、よく笑うし、お兄さんと同じように優しい。それから甘いものが大好きで、見てて心配になるくらい食べるんです。お兄さんはよくケーキの食べ放題に付き合わされてました」
タカはクスクスと笑いながら話す。
「ケーキの種類覚えたって言うお兄さんの困った顔が、本当におかしくて」
「へえ。そうなんですね」
「サエちゃんを見るお兄さんの顔ってすごく穏やかで、ああ本当に幸せなんだなって。そう思ったら僕も嬉しくなりましたね。サエちゃんもすごく幸せそうでした」
「兄の恋愛の話を聞くのは、なんだか新鮮です」
「そうですよね。これは僕が視えたものではなく、僕からの当時の印象ですけどね」
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「お兄さん、大学生活かなり楽しんでいるようでした。バイトもやってて、バイト仲間たちからも愛されていたようで。スノボ行ったり、旅行行ったり、いろんな話を聞きましたから。それとサエちゃんとのことも」
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「ハルさんも大学……でしたよね。大学って、高校とは違って自由に講義選べるし、決まった場所にずっといなくちゃいけないこともないし、友達と一緒に行動する機会も減るじゃないですか。だから、僕は高校生の頃のような孤立とは無縁で、お兄さんいなくてもそこそこ大学生活は楽しめてました」
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