19 / 22
4
前日
しおりを挟む
倉沢と約束した日の前日、僕は本屋に行った。
僕の好きな漫画の新刊が出たらしい。
ついでに最近買ってもらったゲームの攻略雑誌も見てみようと思って、僕はワクワクしながら自動ドアをくぐった。
新刊はすぐに見つかって雑誌のコーナーへ行こう、と足を向けた。
そこでふと、僕は気が付いた。
「倉沢?!」
「ん?おう」
明日会うはずの倉沢がここにいて、僕は驚いた。
「あれ?部活は?」
「なんか文化祭の準備でしばらく休み」
「あ、そうなんだ」
僕の所属している新聞部は今、絶賛活動中だ。なんかずるい。
そもそも僕が本屋に来よう、と思ったのも、大新聞にする記事に行き詰まったからだった。
「カナタ、何探してるんだ?」
倉沢は持っていた雑誌を元に戻して尋ねてくる。
何を読んでいたのか気になって、僕はそっとその雑誌を見た。
「週間将棋」と書いてある。
渋すぎるそのチョイスに僕が絶句しているのに、倉沢は気付かない。
首を傾げて僕の返事を待っている。
「えーと、倉沢?
僕、ゲーム雑誌探してて?」
「週間将棋」についてもっと深く聞いたほうがいいのか迷いながら僕は言った。
「あぁ、あれな。
この前買ったやつだろ?」
「うん」
倉沢はいつもと変わらなくて、なんだかホッとした。
本当にリベンジなんてされるのかと疑問すら出てくる。
倉沢は明日どうするつもりなんだろう。
「カナタ、こっち」
倉沢に腕を引っぱられる。
どうやら僕の目的のコーナーに辿り着いたようだ。
「これとか、それもそうだよな」
「ホントだ」
僕が今プレイしているゲームはかなり売れているらしい。
いろいろな雑誌で特集が組まれているようだ。
僕は一番馴染みの深い雑誌を買うことにした。
この雑誌の攻略はわかりやすい。
「倉沢、ありがとう。買ってくるね」
「おう」
会計を済ませて戻ると、倉沢が待っていてくれた。このあと倉沢と遊ぶのも悪くないなと僕は思っていた。
「ね、倉沢。このあと暇?」
「わりぃ、これから留守番しなきゃなんだよ、明日遊ぼうぜ」
そう言って倉沢は僕の頭を撫でる。
明日、と言われてなんだかドキドキしてしまうのはなんなんだろう?
やっぱり僕は倉沢のことが好きなんだな。
この気持ちは期待も含まれている。
「ん、わかった」
僕が頷くと倉沢は笑った。
「じゃあな」
倉沢に軽く抱き締められる。
とっさのことに僕は動けなかった。
気が付いたら、倉沢は自転車で行ってしまったあとだった。
(なに、今の)
僕の心臓がバクバク鳴っている。
あんなにナチュラルに抱き締めてくるとかずるいじゃん!!
体が火照ってしょうがない。
倉沢は本当にカッコいい。
僕はフラフラしながら家に帰った。
玄関のドアを開けると、母さんが掃除をしていた。
「カナタ、おかえり」
「うん、ただいま」
「どうしたの?」
僕は答えられなかった。
まさか倉沢に抱き締められたなんて言えるわけがない。
「うん、倉沢に会ってさ」
嘘は付きたくなくて、そこは正直に言う。
「あらー、千尋くん、元気なのー?
最近お母さん会ってないわね」
「うん、元気だよ」
「また遊びに来てって伝えてね」
「わかった」
倉沢の名前が千尋というのを僕はそこで思い出していた。
自分の部屋に入ってドアを閉める。
(昔は名前で呼んでたよな)
なんで僕は倉沢って呼ぶようになったんだっけ?僕は考えた。
明日倉沢と話したら思い出せるかな。
(記事の続き、やるか)
僕は本の入った紙袋をベッドに置いて勉強机に向かった。
僕の好きな漫画の新刊が出たらしい。
ついでに最近買ってもらったゲームの攻略雑誌も見てみようと思って、僕はワクワクしながら自動ドアをくぐった。
新刊はすぐに見つかって雑誌のコーナーへ行こう、と足を向けた。
そこでふと、僕は気が付いた。
「倉沢?!」
「ん?おう」
明日会うはずの倉沢がここにいて、僕は驚いた。
「あれ?部活は?」
「なんか文化祭の準備でしばらく休み」
「あ、そうなんだ」
僕の所属している新聞部は今、絶賛活動中だ。なんかずるい。
そもそも僕が本屋に来よう、と思ったのも、大新聞にする記事に行き詰まったからだった。
「カナタ、何探してるんだ?」
倉沢は持っていた雑誌を元に戻して尋ねてくる。
何を読んでいたのか気になって、僕はそっとその雑誌を見た。
「週間将棋」と書いてある。
渋すぎるそのチョイスに僕が絶句しているのに、倉沢は気付かない。
首を傾げて僕の返事を待っている。
「えーと、倉沢?
僕、ゲーム雑誌探してて?」
「週間将棋」についてもっと深く聞いたほうがいいのか迷いながら僕は言った。
「あぁ、あれな。
この前買ったやつだろ?」
「うん」
倉沢はいつもと変わらなくて、なんだかホッとした。
本当にリベンジなんてされるのかと疑問すら出てくる。
倉沢は明日どうするつもりなんだろう。
「カナタ、こっち」
倉沢に腕を引っぱられる。
どうやら僕の目的のコーナーに辿り着いたようだ。
「これとか、それもそうだよな」
「ホントだ」
僕が今プレイしているゲームはかなり売れているらしい。
いろいろな雑誌で特集が組まれているようだ。
僕は一番馴染みの深い雑誌を買うことにした。
この雑誌の攻略はわかりやすい。
「倉沢、ありがとう。買ってくるね」
「おう」
会計を済ませて戻ると、倉沢が待っていてくれた。このあと倉沢と遊ぶのも悪くないなと僕は思っていた。
「ね、倉沢。このあと暇?」
「わりぃ、これから留守番しなきゃなんだよ、明日遊ぼうぜ」
そう言って倉沢は僕の頭を撫でる。
明日、と言われてなんだかドキドキしてしまうのはなんなんだろう?
やっぱり僕は倉沢のことが好きなんだな。
この気持ちは期待も含まれている。
「ん、わかった」
僕が頷くと倉沢は笑った。
「じゃあな」
倉沢に軽く抱き締められる。
とっさのことに僕は動けなかった。
気が付いたら、倉沢は自転車で行ってしまったあとだった。
(なに、今の)
僕の心臓がバクバク鳴っている。
あんなにナチュラルに抱き締めてくるとかずるいじゃん!!
体が火照ってしょうがない。
倉沢は本当にカッコいい。
僕はフラフラしながら家に帰った。
玄関のドアを開けると、母さんが掃除をしていた。
「カナタ、おかえり」
「うん、ただいま」
「どうしたの?」
僕は答えられなかった。
まさか倉沢に抱き締められたなんて言えるわけがない。
「うん、倉沢に会ってさ」
嘘は付きたくなくて、そこは正直に言う。
「あらー、千尋くん、元気なのー?
最近お母さん会ってないわね」
「うん、元気だよ」
「また遊びに来てって伝えてね」
「わかった」
倉沢の名前が千尋というのを僕はそこで思い出していた。
自分の部屋に入ってドアを閉める。
(昔は名前で呼んでたよな)
なんで僕は倉沢って呼ぶようになったんだっけ?僕は考えた。
明日倉沢と話したら思い出せるかな。
(記事の続き、やるか)
僕は本の入った紙袋をベッドに置いて勉強机に向かった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
聖也と千尋の深い事情
フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。
取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる