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気になるあいつ
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「わー、宿題わかんないー!!」
「それ教科書に例題載ってたやつじゃん」
「あれ、ホントだ」
俺は呆れてため息をついた。
4月になって、俺は無事高校生になった。
隣りに座っている本田カナタと同じ学校だ。
俺はずっとこいつが好きだ。
でも、ずっとそのことは黙っている。
だってカナタは男だ。
絶対受け入れてもらえない。
だからせめて友達というポジションを死守しようと思っている。
「倉沢、飽きた、お腹すいた」
「お前なぁ!」
今、カナタの家に遊びに来ている。
高校に入ってすぐに力試しのテストがあると聞いて慌てて勉強しに来たんだ。
勉強するのは主にカナタだけど。
こいつは本当ゆるいというか、ほわんとしているのでなんだか放っておけない。
よく高校生になれたと思う。
まぁ俺がヤマを張ってやって、それが的中しただけだ。
ラッキーだった。
「カナタ、あと五問解け。
そしたら休憩していい、でも五分な」
「え、倉沢、鬼?」
カナタを睨むと慌てて問題を解き始めた。
こいつ、やればできるのにやらないんだよな。
もったいないな、って毎回思う。
でも俺が言っても本気には受け取らない。
倉沢は僕を買い被ってる、なんて怒り始めるのが関の山だ。
俺は知らず知らずため息をついていた。
「倉沢、なんかあった?」
「お前に呆れてんの!
早く解けよ!」
「はーい」
カナタはまたノートに向き直る。
俺も復習くらいはしとこうと教科書を開いた。
「ふー!おわったー!」
「終わってねえから、夜は一人でやれよ」
「わかったよー!」
帰り際、こんなことを言い合う。
こいつは本当にわかってんのか?
カナタをじ、と見ると、カナタも俺を見上げてくる。このアングルは悪くないかもしれない。
「倉沢ー!ほらほら笑ってー」
カナタは俺の両頬をつまんで持ち上げた。
どこまでもこいつは。
カナタの好きなようにさせておいた。
カナタは俺の反応が意外だったのか首を傾げて
にや、と笑った。
「倉沢、怒らないんだねー」
「俺が怒ったらどうするつもりなんだ?」
カナタは途端に真面目な顔をする。
「倉沢が嫌がることはしないよー」
そんなことを言う。
お前、わかって言ってんのかよ。
そうゆうところに毎回やられてるってのに。
俺は悔し紛れに舌打ちした。
カナタは分かっているのかニヤニヤしている。
全く、こいつには振り回されてばっかりだ。
カナタに見送られて、俺は帰った。
俺の家はカナタの家から20分くらいかかる。
今となっては自転車で通学ができるけれど、小学生の頃は苦痛でしょうがなかった。
でもカナタがいたから毎日通えた。
カナタの母さんも俺にとてもよくしてくれて、おやつや夕飯を当たり前のように振る舞ってもらった。
ピコン、とスマホが鳴る。
何事かと思えばカナタからのメッセージだった。
(倉沢、忘れ物!)
そう書いてある。
今から引き返すのは少し面倒くさい。
明日取りにいく、と俺は返信した。
でもまたメッセージが届く。
なんだろう?
(そこにいて!)
俺はカナタの言うとおりにした。
しばらく待っていると、小さな光が近付いてくる。自転車のライトだろう。
カナタだ。
「倉沢!おまたせ!」
カナタはやってきて自転車を停めると俺に駆け寄ってきた。
「倉沢、教科書忘れてる!
あと、これ」
カナタが渡してきたもの。
それはピンクの封筒だった。
倉沢くんへ、と書いてある。
「ごめん、教科書に挟まっててさ、見つけちゃった」
「なんでお前が謝るんだよ?」
カナタは困ったように笑ってこう言う。
「多分本当に倉沢が好きで、倉沢に最初に見つけてもらいたかっただろうからさ」
お前は本当に優しいよな。
俺はカナタの頭を撫でた。
カナタは笑う。
「ありがとうな」
お前のこと、本当に大好きだよ。
「それ教科書に例題載ってたやつじゃん」
「あれ、ホントだ」
俺は呆れてため息をついた。
4月になって、俺は無事高校生になった。
隣りに座っている本田カナタと同じ学校だ。
俺はずっとこいつが好きだ。
でも、ずっとそのことは黙っている。
だってカナタは男だ。
絶対受け入れてもらえない。
だからせめて友達というポジションを死守しようと思っている。
「倉沢、飽きた、お腹すいた」
「お前なぁ!」
今、カナタの家に遊びに来ている。
高校に入ってすぐに力試しのテストがあると聞いて慌てて勉強しに来たんだ。
勉強するのは主にカナタだけど。
こいつは本当ゆるいというか、ほわんとしているのでなんだか放っておけない。
よく高校生になれたと思う。
まぁ俺がヤマを張ってやって、それが的中しただけだ。
ラッキーだった。
「カナタ、あと五問解け。
そしたら休憩していい、でも五分な」
「え、倉沢、鬼?」
カナタを睨むと慌てて問題を解き始めた。
こいつ、やればできるのにやらないんだよな。
もったいないな、って毎回思う。
でも俺が言っても本気には受け取らない。
倉沢は僕を買い被ってる、なんて怒り始めるのが関の山だ。
俺は知らず知らずため息をついていた。
「倉沢、なんかあった?」
「お前に呆れてんの!
早く解けよ!」
「はーい」
カナタはまたノートに向き直る。
俺も復習くらいはしとこうと教科書を開いた。
「ふー!おわったー!」
「終わってねえから、夜は一人でやれよ」
「わかったよー!」
帰り際、こんなことを言い合う。
こいつは本当にわかってんのか?
カナタをじ、と見ると、カナタも俺を見上げてくる。このアングルは悪くないかもしれない。
「倉沢ー!ほらほら笑ってー」
カナタは俺の両頬をつまんで持ち上げた。
どこまでもこいつは。
カナタの好きなようにさせておいた。
カナタは俺の反応が意外だったのか首を傾げて
にや、と笑った。
「倉沢、怒らないんだねー」
「俺が怒ったらどうするつもりなんだ?」
カナタは途端に真面目な顔をする。
「倉沢が嫌がることはしないよー」
そんなことを言う。
お前、わかって言ってんのかよ。
そうゆうところに毎回やられてるってのに。
俺は悔し紛れに舌打ちした。
カナタは分かっているのかニヤニヤしている。
全く、こいつには振り回されてばっかりだ。
カナタに見送られて、俺は帰った。
俺の家はカナタの家から20分くらいかかる。
今となっては自転車で通学ができるけれど、小学生の頃は苦痛でしょうがなかった。
でもカナタがいたから毎日通えた。
カナタの母さんも俺にとてもよくしてくれて、おやつや夕飯を当たり前のように振る舞ってもらった。
ピコン、とスマホが鳴る。
何事かと思えばカナタからのメッセージだった。
(倉沢、忘れ物!)
そう書いてある。
今から引き返すのは少し面倒くさい。
明日取りにいく、と俺は返信した。
でもまたメッセージが届く。
なんだろう?
(そこにいて!)
俺はカナタの言うとおりにした。
しばらく待っていると、小さな光が近付いてくる。自転車のライトだろう。
カナタだ。
「倉沢!おまたせ!」
カナタはやってきて自転車を停めると俺に駆け寄ってきた。
「倉沢、教科書忘れてる!
あと、これ」
カナタが渡してきたもの。
それはピンクの封筒だった。
倉沢くんへ、と書いてある。
「ごめん、教科書に挟まっててさ、見つけちゃった」
「なんでお前が謝るんだよ?」
カナタは困ったように笑ってこう言う。
「多分本当に倉沢が好きで、倉沢に最初に見つけてもらいたかっただろうからさ」
お前は本当に優しいよな。
俺はカナタの頭を撫でた。
カナタは笑う。
「ありがとうな」
お前のこと、本当に大好きだよ。
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