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ゆづる

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放課後、僕はなんとなく部室に行く気がしなくて、自分の教室にいた。
他の生徒は部活に行ったり、帰ったようで、教室には数人しか残っていない。

「あれ、お前部活は?」

そこにジャージ姿の倉沢がやってきた。
彼はサッカー部に入っている。
もちろん倉沢はレギュラーだ。
なんでもできるって羨ましい。
手にはいちごみるくの紙パック。
休憩かな?

「ん、ちょっと行きにくくてさ」

僕がそう言うと倉沢はあぁ、と頷いた。

「インタビューだよな?花柳の。
無難な質問だけすりゃいいだろ?」

確かにそうだ。
僕は何を考えていたんだろ。
ちょっと展望が開けたような気がする。

「あのさ、カナタ」

倉沢がなにか言いかけて、やっぱやめた、と呟いた。
逆に気になる。

「なんでもねーよ」

そう言って倉沢は僕にいちごみるくの紙パックを放ってきたので慌ててキャッチした。

「それやるから、飲んだらとっとと部活行けよ」

「え、うん」

倉沢はそれだけ言って教室から出て行ってしまった。
心配してくれたんだろうか。
倉沢は本当に優しいな。

僕は紙パックの後ろ側についていたストローを取り出して飲み始めた。
いちごみるくの甘さにホッとする。
今度は僕が倉沢になにか奢ろう。
少しでもお礼がしたい。


部室に行くといつものように先輩たちがいた。

「お、きたきた」

当然、真理先輩もいる。
パソコンで、写真の編集をしているようだ。
僕はそっと彼女に近寄って言った。

「あの、インタビューのことなんですけど」

真理先輩は頷く。先を話せ、ということらしい。

「僕なりにインタビュー前にゆづくんについて調べようと思うんです。
だから先輩方の知っていることがあれば、教えてもらえませんか?」

僕の言葉に先輩方は頷いてくれた。
ゆづくんのことが、僕は好きだ。
でも今まで、彼のことをあまりに知らなすぎた。
好きならもっと真正面からぶつかっていかなくちゃ。
僕は覚悟を決めたんだ。
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