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二章

1・実りの秋

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ランスは今日、アルバシア名物の秋祭りの手伝いに来ている。タウの勤めている会社もその祭りに協賛しているらしく、タウも一緒だ。ランスはタウと共に会場の飾り付けを担当していた。電飾を飾り付けようとランスがそれを持ち上げた時だった。

「あ…」

「タウ様?あ…」

タウの様子にランスも気が付いて一緒に固まった。足元に白いウサギがちょこちょこ集まってきたからだ。ランスがしゃがんで手を差し出すと、フンフンと鼻を動かして確認している。

「大丈夫だろうか、ランスさん」

タウが後ろから声を掛けてきた。彼の足に白ウサギが乗ってきている。タウがそれを見て困っているのがランスにも見て取れた。

「タウ様、ちょっとジッとしていてくださいね」

「あ、あぁ」

ランスはひょい、とウサギたちを全て抱えた。小さいのでなんとか可能だったのだ。

「お前たち、タウ様が困ってるだろう?もう住処にお帰り」

ランスがそう言って離れた場所に白ウサギを置くと、こちらをチラチラ見ながらウサギたちは去っていった。

「あの子らは一体?」

タウがキョロキョロしながらやってくる。他の動物の気配をランスも感じ取っていた。

「多分森のことで恩返しがしたいんですよね。タウ様が社会に働きかけてくれたから」

「わ、私だけじゃない。皆がやってくれたから」

タウは自分の撮った写真を新聞社に持ち込んだ。それはたちまちスクープになったのである。
「森は資源だ」という運動はアルバシア全土に広がり、大量の寄付金が集まった。タウも自分の資産から寄付を出した。ランスも僅かだが貯金から寄付をした。なくなった森の復興に役立てたいと、タウはあちこちの企業に働きかけている。国も黙認しているようだ。タウの勤めている企業が政府直属だからだろう。ランスはタウの身分の高さに驚いた。だが、タウは全く気にしていない様子である。

「タウ様、動物たちはとても律儀です。もしまた集まってきたら俺がなんとかしますから」

「ランスさんの邪魔にならないだろうか」

タウは焦っているのかアワアワしている。

「ウサギや他の動物たちも賢いですから、今日みたいに急にやってくることはもうないかと。怪我をしている子は治しましたし」

「ランスさんはすごい」

タウに褒められるととても嬉しい。

「とりあえず会場の飾り付けをしましょうか」

ランスが笑いながら言うとタウも頷いた。祭りには色々な参加者がやってくるものである。ランスはそれにドキドキしていた。

✢✢✢

「ランスさん、食べる物を色々買ってきた」

ランスが会場の不備のでた部分を直していると、タウが両手いっぱいに買ったものを持ってきた。

「わぁ、いっぱい買ってきましたね!あっちに食べるスペースがあるのでそこに行きましょうか」

「ランスさんの仕事は会場の飾りつけで終わりでは?」

タウの言うことは最もである。だが、ランスは基本的に働くのが好きだった。

「俺、そうゆうの気になっちゃって。損ですよね」

たははとランスが笑うと、ラウがそんなことはないと首を振った。

「ランスさんはやはり天からの使いに違いない」

タウのランス天使論は未だに継続しているらしい。ランスはもういいかと放置している。

「動物たち、まだいますね」

そっとタウに言うと、そんなことも分かるのか、と驚かれた。

「タウ様にお礼が言いたいんですよね。あ、そうだ。フクロウに伝えてもらいましょうか?」

「フクロウさんの手を煩わせていいものか…」

ランスはそれに笑ってしまった。

「大丈夫だと思いますよ!多分まだ近くにいると思うし」

「そうなのか」

二人はタウが買ってきたものを出して食べ始めた。ソーセージをチーズで巻いて揚げたスナックがランスは気に入ってもりもり食べた。

「ランスさん、私が死を連れてくるのは子どもの時からなのだ」

「タウ様…」

タウがしょんぼりする。

「植物を助けようと思い死なせて、動物を死なせた。私の罪は消えないのだ」

グッとタウが両手を握る。ランスにもその苦しみが分かる気がした。

「タウ様…死は操れません。もちろん生も」

「だが、ランスさんは生きてるものを助けられる」

「タウ様、俺の治せる傷は純粋な怪我だけ。だからこの間の火事は作為的なものだったんじゃないかと」

は…とタウが息をついた。

「ま、まさか、火事を起こした者がいると?」

「はい。可能性はあります」

タウが手を組んだ。険しい表情をしている。

「分かった。私はその手に詳しい者を知っている。探してみよう」

「タウ様、あまり心配しすぎないでくださいね」

「ありがとう、ランスさん」

二人は微笑み合ってまた食べ始めた。祭りは賑やかで、皆が楽しんでいる様子が分かる。

タウ様にはずっと笑っていてほしい。―


ランスはそう強く願っている。
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