14 / 17
四話
ウルの発作
しおりを挟む
次の日のお昼休み、私は視聴覚室へ向かった。そこには最新のパソコンが何台も設置してあるのだ。
中に入ると、トウマくんがパソコンを使っている。
「トウマくん?」
「夕夏か、一人?」
「うん」
こっちにこいよ、とトウマくんに呼ばれたので、彼の隣の席に腰掛けた。
「何してるの?」
トウマくんが笑って画面を指差す。
これ、ドット絵?上手いなぁ。
「俺、ゲーム作ってんだよね!」
「へえ、すごいね!」
ふふん、とトウマくんが得意そうにする。
「で、夕夏は何しに来たんだよ?」
「ちょっと調べたいことがあって」
よく考えたらパソコンの電源の入れ方もわかってない。
「夕夏、手伝おうか?」
困っていたらトウマくんが心配そうに言ってくれた。
「お願いしてもいい?」
トウマくんが自分の胸をどんと叩く。
「任せとけ」
トウマくんに操作を任せて私は後ろからモニタを眺めた。
「で?何について調べるんだ?」
「えっと、純血じゃない獣人の発作についてなんだけど」
トウマくんが鮮やかにキーボードを叩く。
検索するとそんな症例は見当たらなかった。
「夕夏、少しワードを変えてみようか」
「うん、お願い」
それから何度検索してもそんな症例は見当たらなかった。じゃあ、ウル様の発作は?
(他の病気だったらどうしよう)
悪い想像ばかりが頭を駆け巡る。
「夕夏の調べてる獣人って、一緒に暮らしてる人だよな?」
「うん、そう」
「夕夏は本当にその人が好きなんだな」
「うん」
予鈴が鳴り始めた。
教室に戻る時間だ。
「夕夏、いこう」
「うん!手伝わせてごめんね?」
「いーって!」
それから学校も終わって、私は帰り道をトボトボ歩いていた。
(結局なんにもわからなかったなぁ)
「お嬢さん」
ふと声をかけられる。その人は白いスーツを着たお兄さんだった。誰かな?
彼はツカツカとこちらに近寄ってくる。
よく見るとすごくイケメンだ。
「お嬢さんは、何かを探しているんだね?」
くい、と顎を掴まれて上を見上げさせられる。
彼の紫の瞳とがっちり目があった。
「僕は君の知りたいことを教えてあげられる。興味があるなら夜、ここに来なさい」
そう言って名刺を渡された。
「じゃあね。お嬢さん」
名刺を見ると、ハルカ・福原と書いてある。
怪しいけど、行かなければなにもわからない。私はぎゅ、と名刺を握りしめた。
屋敷に戻ってから、私はずっとそわそわしていた。うまくここを抜け出さなくては。
夕飯を食べて、勉強するからとみんなに言っておいた。
静かになってからそっと部屋を抜け出して、外に出た。
さあ、いこう。
私は夜道を走り出した。
中に入ると、トウマくんがパソコンを使っている。
「トウマくん?」
「夕夏か、一人?」
「うん」
こっちにこいよ、とトウマくんに呼ばれたので、彼の隣の席に腰掛けた。
「何してるの?」
トウマくんが笑って画面を指差す。
これ、ドット絵?上手いなぁ。
「俺、ゲーム作ってんだよね!」
「へえ、すごいね!」
ふふん、とトウマくんが得意そうにする。
「で、夕夏は何しに来たんだよ?」
「ちょっと調べたいことがあって」
よく考えたらパソコンの電源の入れ方もわかってない。
「夕夏、手伝おうか?」
困っていたらトウマくんが心配そうに言ってくれた。
「お願いしてもいい?」
トウマくんが自分の胸をどんと叩く。
「任せとけ」
トウマくんに操作を任せて私は後ろからモニタを眺めた。
「で?何について調べるんだ?」
「えっと、純血じゃない獣人の発作についてなんだけど」
トウマくんが鮮やかにキーボードを叩く。
検索するとそんな症例は見当たらなかった。
「夕夏、少しワードを変えてみようか」
「うん、お願い」
それから何度検索してもそんな症例は見当たらなかった。じゃあ、ウル様の発作は?
(他の病気だったらどうしよう)
悪い想像ばかりが頭を駆け巡る。
「夕夏の調べてる獣人って、一緒に暮らしてる人だよな?」
「うん、そう」
「夕夏は本当にその人が好きなんだな」
「うん」
予鈴が鳴り始めた。
教室に戻る時間だ。
「夕夏、いこう」
「うん!手伝わせてごめんね?」
「いーって!」
それから学校も終わって、私は帰り道をトボトボ歩いていた。
(結局なんにもわからなかったなぁ)
「お嬢さん」
ふと声をかけられる。その人は白いスーツを着たお兄さんだった。誰かな?
彼はツカツカとこちらに近寄ってくる。
よく見るとすごくイケメンだ。
「お嬢さんは、何かを探しているんだね?」
くい、と顎を掴まれて上を見上げさせられる。
彼の紫の瞳とがっちり目があった。
「僕は君の知りたいことを教えてあげられる。興味があるなら夜、ここに来なさい」
そう言って名刺を渡された。
「じゃあね。お嬢さん」
名刺を見ると、ハルカ・福原と書いてある。
怪しいけど、行かなければなにもわからない。私はぎゅ、と名刺を握りしめた。
屋敷に戻ってから、私はずっとそわそわしていた。うまくここを抜け出さなくては。
夕飯を食べて、勉強するからとみんなに言っておいた。
静かになってからそっと部屋を抜け出して、外に出た。
さあ、いこう。
私は夜道を走り出した。
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
ゲームの序盤に殺されるモブに転生してしまった
白雲八鈴
恋愛
「お前の様な奴が俺に近づくな!身の程を知れ!」
な····なんて、推しが尊いのでしょう。ぐふっ。わが人生に悔いなし!
ここは乙女ゲームの世界。学園の七不思議を興味をもった主人公が7人の男子生徒と共に学園の七不思議を調べていたところに学園内で次々と事件が起こっていくのです。
ある女生徒が何者かに襲われることで、本格的に話が始まるゲーム【ラビリンスは人の夢を喰らう】の世界なのです。
その事件の開始の合図かのように襲われる一番目の犠牲者というのが、なんとこの私なのです。
内容的にはホラーゲームなのですが、それよりも私の推しがいる世界で推しを陰ながら愛でることを堪能したいと思います!
*ホラーゲームとありますが、全くホラー要素はありません。
*モブ主人のよくあるお話です。さらりと読んでいただけたらと思っております。
*作者の目は節穴のため、誤字脱字は存在します。
*小説家になろう様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる