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「ねぇ、拓海?賢くんもうすぐ誕生日でしょう?プレゼントとか決めたの?」
正月が終わり、あっという間に2月になっている。賢は学校の授業でチョコレートを作ると張り切っていた。まさに今日がその授業の日である。
今日、拓海は休みで母親からの電話をスムーズに受けられたのだ。
「誕生日って賢くんの誕生日は来月だよ?流石に早いんじゃ…」
「それは建前よ、拓海」
「へ?」
「賢くんとお出かけしたいって言ってるの。ほら、新しいショッピングモール出来たじゃない?お父さんと2人で行ってもねえ」
「賢くん大丈夫かなぁ、初めての場所は緊張するしなぁ。2人がしっかり手を握ってくれてれば大丈夫だとは思うけど」
「賢くん、私たちのこと嫌い?」
母の切なげな声に拓海は慌てた。
「そんなことないよ。賢くんはもともと礼儀正しい子だし、いい子だもの。でもショッピングモールには大きなおもちゃ屋があるから、賢くんあれこれ欲しがるかもよ?」
「むしろそれがしたいんじゃない」
何を言っているの、この子はというトーンに拓海はすっかり参ってしまった。
「拓海、たまに慎吾さんとデートしてきなさいよ。二人共まだ若いんだし」
「うん…でも、慎吾に話してみないと」
「あ、大丈夫よ。お父さんから連絡してもらうから」
「えぇ?」
慎吾と拓海の父親は仲が良い。きっと父親からデートを勧められたら間違いなく、承諾するだろう。母親の見事な手腕に拓海は舌を巻くことしかできなかった。
そして週末になっている。
「お出かけだねぇ」
賢はリュックサックにいつものお気に入りを詰めたようだ。もふくんのぬいぐるみ、スケッチブック、色鉛筆、図鑑の4つだ。これは何があっても必ず持っていく賢の必需品だ。
「賢くん、駐車場やお店の中で急に走りません。いいかな?約束できる?」
「ん」
賢が真剣な面立ちで頷いている。しばらくするとインターホンが鳴る。賢を迎えに来たのだろう。
拓海が玄関のドアを開けると案の定だった。
「ちょっと早いけどいい?」
「うん、賢くんも準備出来てるよ」
拓海が賢を呼ぶと、とたたと賢がやって来て頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「賢くん、よろしくね。おじちゃんは車にいるわよ」
「ん。行って来ます」
賢は既に緊張してるようだ。
「行ってらっしゃい、賢くん」
拓海が手を振ると、賢も振り返してくれた。
玄関のドアを閉めて居間に戻ると、慎吾がベランダから手を振っている。賢がいるようだ。しばらくして慎吾は震えながら戻って来る。
「いやぁ、2人きりって久しぶりだな」
「うん。慎吾、どうする?」
「たまに映画でも観に行くか?」
「いいかもしれない」
学生時代、付き合っていた時はよく2人で映画を
観に出かけていた。そしてそのあとは喫茶店でコーヒーを飲みながら映画の批評をしていた。
「よし、決まりだな。行こう」
「うん。あ、母さんからメッセージ来た。賢くん落ち着いてるみたい」
「良かった。賢の大冒険だな」
「ふふ、そうだね」
支度をして2人は家を出た。
正月が終わり、あっという間に2月になっている。賢は学校の授業でチョコレートを作ると張り切っていた。まさに今日がその授業の日である。
今日、拓海は休みで母親からの電話をスムーズに受けられたのだ。
「誕生日って賢くんの誕生日は来月だよ?流石に早いんじゃ…」
「それは建前よ、拓海」
「へ?」
「賢くんとお出かけしたいって言ってるの。ほら、新しいショッピングモール出来たじゃない?お父さんと2人で行ってもねえ」
「賢くん大丈夫かなぁ、初めての場所は緊張するしなぁ。2人がしっかり手を握ってくれてれば大丈夫だとは思うけど」
「賢くん、私たちのこと嫌い?」
母の切なげな声に拓海は慌てた。
「そんなことないよ。賢くんはもともと礼儀正しい子だし、いい子だもの。でもショッピングモールには大きなおもちゃ屋があるから、賢くんあれこれ欲しがるかもよ?」
「むしろそれがしたいんじゃない」
何を言っているの、この子はというトーンに拓海はすっかり参ってしまった。
「拓海、たまに慎吾さんとデートしてきなさいよ。二人共まだ若いんだし」
「うん…でも、慎吾に話してみないと」
「あ、大丈夫よ。お父さんから連絡してもらうから」
「えぇ?」
慎吾と拓海の父親は仲が良い。きっと父親からデートを勧められたら間違いなく、承諾するだろう。母親の見事な手腕に拓海は舌を巻くことしかできなかった。
そして週末になっている。
「お出かけだねぇ」
賢はリュックサックにいつものお気に入りを詰めたようだ。もふくんのぬいぐるみ、スケッチブック、色鉛筆、図鑑の4つだ。これは何があっても必ず持っていく賢の必需品だ。
「賢くん、駐車場やお店の中で急に走りません。いいかな?約束できる?」
「ん」
賢が真剣な面立ちで頷いている。しばらくするとインターホンが鳴る。賢を迎えに来たのだろう。
拓海が玄関のドアを開けると案の定だった。
「ちょっと早いけどいい?」
「うん、賢くんも準備出来てるよ」
拓海が賢を呼ぶと、とたたと賢がやって来て頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「賢くん、よろしくね。おじちゃんは車にいるわよ」
「ん。行って来ます」
賢は既に緊張してるようだ。
「行ってらっしゃい、賢くん」
拓海が手を振ると、賢も振り返してくれた。
玄関のドアを閉めて居間に戻ると、慎吾がベランダから手を振っている。賢がいるようだ。しばらくして慎吾は震えながら戻って来る。
「いやぁ、2人きりって久しぶりだな」
「うん。慎吾、どうする?」
「たまに映画でも観に行くか?」
「いいかもしれない」
学生時代、付き合っていた時はよく2人で映画を
観に出かけていた。そしてそのあとは喫茶店でコーヒーを飲みながら映画の批評をしていた。
「よし、決まりだな。行こう」
「うん。あ、母さんからメッセージ来た。賢くん落ち着いてるみたい」
「良かった。賢の大冒険だな」
「ふふ、そうだね」
支度をして2人は家を出た。
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