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ぴゅうぅと冷たい風が吹き抜ける中を、拓海、慎吾、賢は歩いている。3人は初詣にやってきていた。
「いやぁ、風が冷たいな」
マフラーに顔を埋めながら慎吾が言う。拓海もその言葉に頷いていた。いつもなら近くの駐車場に停めることが出来るが、この時期は人で殺到するため、少し離れた駐車場に停めることになる。それまでの間は徒歩だ。歩行者天国になっており、屋台が道の両側に並んでいる。
「賢くん、屋台は後でね」
「もふくん当たるねえ」
どうやらすでにお目当ての店を見つけていたらしい。
「もふくんの何が当たるの?」
「カード」
「へぇ。賢くんはカードが欲しいの?」
賢が困ったように視線を泳がせる。どうやら叱られると思ったらしい。
「賢はそういうの興味ないかと思ってた」
慎吾が意外そうに言う。拓海も同感だった。
「絵が眞人せんせいだから」
眞人というのはもふくんの絵本のイラストを担当している作家である。
「あ!なるほど!」
「先生の絵だから欲しかったんだ」
うん、と賢が困ったように笑う。拓海は待てよ、とスマートフォンを操作した。思った通り、通販サイトにカードのセットが売られている。おもちゃ屋なら普通に置いてありそうだ。
「賢くん、くじをするのはいいんだけど、カードを自分のお金で買うのはどう?」
拓海がそう尋ねると賢がぽかん、とした。
「売ってるの?」
「お店に行って見てみない?」
「いいの?」
「賢はおもちゃ屋に、あんまり行ったことなかったか」
慎吾に頭を撫でられて賢は困ったように頷いた。そしてこう呟く。
「お片付けちゃんとする」
「お母さんと約束したんだ?」
「ん」
賢の中の母親は今でも優しく存在している。拓海はそんな賢が眩しい。
「よし、とりあえず拝んでくるか。風邪引いちまう」
慎吾の言葉に2人は頷いた。参拝の列は長かったが思いの外時間はかからなかった。賽銭を入れて拝む。拓海はこれからのことを祈った。賢の成長や自分たちの将来のことを。
✢✢✢
「お、お兄ちゃん。もふくん好きなのー?」
帰り道、くじ引きの屋台に近付いた賢を見て、店主が話しかけてきた。賢が真剣な表情で頷く。
「一回、くじお願いします」
賢の緊張に店主も賢が普通の子じゃないと気が付いたらしい。色々優しく話し掛けてくれた。
「お兄ちゃん、どれ欲しいの?」
賢が示したのは一番下位のカードである。
「分かった。頑張ってー。この箱から1枚取ってね」
「はい…」
賢がカチコチになりながらくじを引いているのを拓海たちは大丈夫かなと後ろから見守っていた。賢は1枚選び取り、店主に渡している。
「お、お兄ちゃんやったぁ!C賞だよ!」
賢は困ったように振り向いてきた。拓海たちもそばに近寄る。どうやら賢が欲しがっていたものとは違うものらしい。
「えーっとどうしよう?こっちの欲しかったやつにしとく?」
賢はアワアワしている。
「賢くん、どうする?欲しかったのにする?」
拓海が賢に尋ねる。
「はい…!」
店主は賢が喜びそうなカードを数点つけて渡してくれた。
「ありがとうございます」
「お兄ちゃん、勉強頑張ってね!」
賢はぺっこり礼をすると、こちらに駆け寄ってくる。
「良かったな、賢!いっぱいカードもらえて」
「これはファイルを買わないとね」
拓海の言葉に賢がファイル?と首を傾げている。
「よし、明日おもちゃ屋行ってみるか!」
慎吾の言葉に賢は顔を輝かせた。
「いやぁ、風が冷たいな」
マフラーに顔を埋めながら慎吾が言う。拓海もその言葉に頷いていた。いつもなら近くの駐車場に停めることが出来るが、この時期は人で殺到するため、少し離れた駐車場に停めることになる。それまでの間は徒歩だ。歩行者天国になっており、屋台が道の両側に並んでいる。
「賢くん、屋台は後でね」
「もふくん当たるねえ」
どうやらすでにお目当ての店を見つけていたらしい。
「もふくんの何が当たるの?」
「カード」
「へぇ。賢くんはカードが欲しいの?」
賢が困ったように視線を泳がせる。どうやら叱られると思ったらしい。
「賢はそういうの興味ないかと思ってた」
慎吾が意外そうに言う。拓海も同感だった。
「絵が眞人せんせいだから」
眞人というのはもふくんの絵本のイラストを担当している作家である。
「あ!なるほど!」
「先生の絵だから欲しかったんだ」
うん、と賢が困ったように笑う。拓海は待てよ、とスマートフォンを操作した。思った通り、通販サイトにカードのセットが売られている。おもちゃ屋なら普通に置いてありそうだ。
「賢くん、くじをするのはいいんだけど、カードを自分のお金で買うのはどう?」
拓海がそう尋ねると賢がぽかん、とした。
「売ってるの?」
「お店に行って見てみない?」
「いいの?」
「賢はおもちゃ屋に、あんまり行ったことなかったか」
慎吾に頭を撫でられて賢は困ったように頷いた。そしてこう呟く。
「お片付けちゃんとする」
「お母さんと約束したんだ?」
「ん」
賢の中の母親は今でも優しく存在している。拓海はそんな賢が眩しい。
「よし、とりあえず拝んでくるか。風邪引いちまう」
慎吾の言葉に2人は頷いた。参拝の列は長かったが思いの外時間はかからなかった。賽銭を入れて拝む。拓海はこれからのことを祈った。賢の成長や自分たちの将来のことを。
✢✢✢
「お、お兄ちゃん。もふくん好きなのー?」
帰り道、くじ引きの屋台に近付いた賢を見て、店主が話しかけてきた。賢が真剣な表情で頷く。
「一回、くじお願いします」
賢の緊張に店主も賢が普通の子じゃないと気が付いたらしい。色々優しく話し掛けてくれた。
「お兄ちゃん、どれ欲しいの?」
賢が示したのは一番下位のカードである。
「分かった。頑張ってー。この箱から1枚取ってね」
「はい…」
賢がカチコチになりながらくじを引いているのを拓海たちは大丈夫かなと後ろから見守っていた。賢は1枚選び取り、店主に渡している。
「お、お兄ちゃんやったぁ!C賞だよ!」
賢は困ったように振り向いてきた。拓海たちもそばに近寄る。どうやら賢が欲しがっていたものとは違うものらしい。
「えーっとどうしよう?こっちの欲しかったやつにしとく?」
賢はアワアワしている。
「賢くん、どうする?欲しかったのにする?」
拓海が賢に尋ねる。
「はい…!」
店主は賢が喜びそうなカードを数点つけて渡してくれた。
「ありがとうございます」
「お兄ちゃん、勉強頑張ってね!」
賢はぺっこり礼をすると、こちらに駆け寄ってくる。
「良かったな、賢!いっぱいカードもらえて」
「これはファイルを買わないとね」
拓海の言葉に賢がファイル?と首を傾げている。
「よし、明日おもちゃ屋行ってみるか!」
慎吾の言葉に賢は顔を輝かせた。
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