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ついに大晦日がやって来た。賢は生活リズムが崩れると体調を崩すことが多いので、夕飯に年越し蕎麦を食べることになった。海老の天ぷらが載った美味しそうな蕎麦だ。
「年越しそばだねぇ」
賢がにこにこしながら蕎麦を啜っている。
「賢、おかずも食おうな」
「ん」
蕎麦だけではとても足りないと拓海も思い、追加で天ぷらを揚げていた。賢が手を付けなかったので、出したのは失敗かと思ったが、賢は早速、さつまいもの天ぷらを頬張っている。
「あまいねえ」
「良かったな、賢」
「これはなにかな」
賢は、箸でえび天を掴み頬張った。賢の表情が美味しいことを物語っている。
「えびさん美味しい」
「賢くん、おにぎり食べる?」
「食べる…」
おにぎりの具はもちろん天ぷらを揚げた時に出た天かすのおにぎりだ。賢はおにぎりを手に取り齧りついた。
「美味しい」
「よかった。明日は書き初めをするよね?」
「うん。おおきな字で書くよ」
賢は少し緊張しているようだ。書道の授業時間は短い上、課題にもあまり出ないからだろう。
「練習用の紙で練習しようね」
「ん」
賢はいつもの時間に布団に入った。拓海と慎吾は2人でお茶を飲んでいる。
「賢ももうすぐ中3かぁ。早いなぁ」
「そうだね。新しい係とか委員会が決まるのが賢くん、すごく心配みたいで」
「え?でも今のお掃除係と緑化委員は上手くやれてるじゃないか」
「賢くんね、飼育係に立候補したいんだって」
「あー、生き物の世話は大変だよな。飼育係ってウサギの世話とかだろ?」
賢はウサギが大好きだ。きっと始めれば頑張るのは目に見えている。
「賢は頑張るもんな。ブレーキを俺たちが上手く踏んでやらないと」
「うん、先生もそれを心配してたよ。新学期から賢くんが自分でブレーキを踏めるように練習するって」
「いい経験じゃないか。賢にとっても俺たちにとっても」
慎吾はいつでも前方を見ている。
「うん、上手くいかなくても僕たちでサポートしてあげなくちゃね!」
「そうだな」
✢✢✢
早朝六時、拓海が朝食を作っていると、賢がぬいぐるみを手に起きてきた。
「賢くん、おはよう。あけましておめでとう」
拓海がそう声を掛けると賢が直立不動になる。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
賢があまりにもカチカチなので、拓海は笑ってしまった。
「賢くん、朝はお雑煮だよ。お餅3つかな?」
賢が嬉しそうな顔をする。
「お餅美味しいねえ」
「お絵描きしてようか?それともかまぼこ切る?」
かまぼこという言葉に賢が目の色を変える。
「板外したい」
「賢くん、それ好きだよね。もう職人さんだもん」
「やっていい?」
「いいよ」
賢にエプロンを渡すと、さっと身に着けて手を石鹸で洗っている。
「あけましておめでとう、2人共」
慎吾も起きてきた。
「あけましておめでとう、慎吾」
「あけましておめでとうございます」
「お、賢は初かまぼこ職人か」
拓海はそれについつい噴き出してしまった。
「年越しそばだねぇ」
賢がにこにこしながら蕎麦を啜っている。
「賢、おかずも食おうな」
「ん」
蕎麦だけではとても足りないと拓海も思い、追加で天ぷらを揚げていた。賢が手を付けなかったので、出したのは失敗かと思ったが、賢は早速、さつまいもの天ぷらを頬張っている。
「あまいねえ」
「良かったな、賢」
「これはなにかな」
賢は、箸でえび天を掴み頬張った。賢の表情が美味しいことを物語っている。
「えびさん美味しい」
「賢くん、おにぎり食べる?」
「食べる…」
おにぎりの具はもちろん天ぷらを揚げた時に出た天かすのおにぎりだ。賢はおにぎりを手に取り齧りついた。
「美味しい」
「よかった。明日は書き初めをするよね?」
「うん。おおきな字で書くよ」
賢は少し緊張しているようだ。書道の授業時間は短い上、課題にもあまり出ないからだろう。
「練習用の紙で練習しようね」
「ん」
賢はいつもの時間に布団に入った。拓海と慎吾は2人でお茶を飲んでいる。
「賢ももうすぐ中3かぁ。早いなぁ」
「そうだね。新しい係とか委員会が決まるのが賢くん、すごく心配みたいで」
「え?でも今のお掃除係と緑化委員は上手くやれてるじゃないか」
「賢くんね、飼育係に立候補したいんだって」
「あー、生き物の世話は大変だよな。飼育係ってウサギの世話とかだろ?」
賢はウサギが大好きだ。きっと始めれば頑張るのは目に見えている。
「賢は頑張るもんな。ブレーキを俺たちが上手く踏んでやらないと」
「うん、先生もそれを心配してたよ。新学期から賢くんが自分でブレーキを踏めるように練習するって」
「いい経験じゃないか。賢にとっても俺たちにとっても」
慎吾はいつでも前方を見ている。
「うん、上手くいかなくても僕たちでサポートしてあげなくちゃね!」
「そうだな」
✢✢✢
早朝六時、拓海が朝食を作っていると、賢がぬいぐるみを手に起きてきた。
「賢くん、おはよう。あけましておめでとう」
拓海がそう声を掛けると賢が直立不動になる。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
賢があまりにもカチカチなので、拓海は笑ってしまった。
「賢くん、朝はお雑煮だよ。お餅3つかな?」
賢が嬉しそうな顔をする。
「お餅美味しいねえ」
「お絵描きしてようか?それともかまぼこ切る?」
かまぼこという言葉に賢が目の色を変える。
「板外したい」
「賢くん、それ好きだよね。もう職人さんだもん」
「やっていい?」
「いいよ」
賢にエプロンを渡すと、さっと身に着けて手を石鹸で洗っている。
「あけましておめでとう、2人共」
慎吾も起きてきた。
「あけましておめでとう、慎吾」
「あけましておめでとうございます」
「お、賢は初かまぼこ職人か」
拓海はそれについつい噴き出してしまった。
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