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賢と出会ってから文房具屋に来ることが明らかに多くなった。今はなんでもデジタル機器に頼るので、筆記用具はボールペンくらいしか持っていない大人も多いだろう。拓海もそのうちの一人だ。
書き心地のいいボールペンはないかと拓海はボールペンのコーナーで商品を物色していた。
「お、これいいかも。2本買うか」
拓海は気に入ったボールペンを手に取りカゴに入れた。賢たちはどうしているだろうかと店内を歩いていると、二人をノートのコーナーで見つけた。拓海はそこでハッとなった。賢のノートのストックがもうなくなっている。拓海は二人に近寄った。
「いいのあった?」
「拓海、賢がノート迷っててな。こっちかこっちのキャラクターのが欲しいみたいなんだけど」
拓海は賢の手を握った。顔を覗き込む。
「賢くん、先に筆を見ようか?」
「ん」
賢が頷いてくれて、拓海はホッとした。だんだん店が混み始めている。書道用の筆はいい値段がするが、長持ちするので必要経費だと拓海は自分に言い聞かせた。
「絵の具の筆はどういうのが欲しいの?」
「細いやつ」
「こっち?」
商品を指差すと、賢が頷く。思っていたより安価で済みそうだ。ようやく欲しかったノートを選び、レジに並ぶ頃には店が客でいっぱいになっていた。
「いやぁ、混んでたなー」
「福袋だねえ」
賢が後部座席で言う。
「福袋なの?賢くん」
助手席から振り返って拓海が賢に尋ねると、彼は頷く。
「大当たりが出るねぇ」
どうやら福袋の中身について話しているようだ。賢は続けた。
「福袋はお正月に発売します」
「そうなんだー。賢くん、欲しかった?」
「お菓子がいいな」
賢の思わぬ本音に、拓海も慎吾も思わず噴き出してしまった。
「そうだよね、お菓子がいいよね」
「賢、お菓子ならいっぱい買ってやれるぞ」
「本当?」
「お正月になったら買いに行こうな」
ぱああと賢の顔が輝き出す。
「お菓子嬉しいねぇ」
拓海と慎吾はお互いの顔を見て頷いた。喜んでいる賢の姿は二人にとって癒しだ。
家に帰るなり、賢は課題の日記を書き始めている。賢の日記はイラストも入り分かりやすい。
「上手いな、賢。店の立体感とかよく分かる」
「パースを習ったよ」
「パース?ってなんだ?」
「絵を描く時に取るんだよ」
「へえ、学校で色々教えてもらえるんだなぁ」
賢が日記を書いている間に、拓海は昼食の支度を始めていた。今日の昼は豚丼を作るつもりでいる。玉ねぎの皮を剥き、くし切りに刻み、白滝を切って鍋に入れた。豚肉をたっぷり入れ、アクを取りながらぐつぐつと煮えるのを待つ。味付けはすき焼きの割り下だ。簡単に出来る。
「いい匂い」
「日記出来た?」
「出来たよ!」
拓海がノートを見ると、筆とノートを買ってもらったことが書いてある。文だけでも嬉しそうで微笑ましいのに、文房具店とニコニコした賢自身が描かれているのだ。
「賢くん、すごい。よく書けてる」
よしよし、と賢の頭を撫でると、賢は日記に描かれた絵以上にニコニコしてくれた。
書き心地のいいボールペンはないかと拓海はボールペンのコーナーで商品を物色していた。
「お、これいいかも。2本買うか」
拓海は気に入ったボールペンを手に取りカゴに入れた。賢たちはどうしているだろうかと店内を歩いていると、二人をノートのコーナーで見つけた。拓海はそこでハッとなった。賢のノートのストックがもうなくなっている。拓海は二人に近寄った。
「いいのあった?」
「拓海、賢がノート迷っててな。こっちかこっちのキャラクターのが欲しいみたいなんだけど」
拓海は賢の手を握った。顔を覗き込む。
「賢くん、先に筆を見ようか?」
「ん」
賢が頷いてくれて、拓海はホッとした。だんだん店が混み始めている。書道用の筆はいい値段がするが、長持ちするので必要経費だと拓海は自分に言い聞かせた。
「絵の具の筆はどういうのが欲しいの?」
「細いやつ」
「こっち?」
商品を指差すと、賢が頷く。思っていたより安価で済みそうだ。ようやく欲しかったノートを選び、レジに並ぶ頃には店が客でいっぱいになっていた。
「いやぁ、混んでたなー」
「福袋だねえ」
賢が後部座席で言う。
「福袋なの?賢くん」
助手席から振り返って拓海が賢に尋ねると、彼は頷く。
「大当たりが出るねぇ」
どうやら福袋の中身について話しているようだ。賢は続けた。
「福袋はお正月に発売します」
「そうなんだー。賢くん、欲しかった?」
「お菓子がいいな」
賢の思わぬ本音に、拓海も慎吾も思わず噴き出してしまった。
「そうだよね、お菓子がいいよね」
「賢、お菓子ならいっぱい買ってやれるぞ」
「本当?」
「お正月になったら買いに行こうな」
ぱああと賢の顔が輝き出す。
「お菓子嬉しいねぇ」
拓海と慎吾はお互いの顔を見て頷いた。喜んでいる賢の姿は二人にとって癒しだ。
家に帰るなり、賢は課題の日記を書き始めている。賢の日記はイラストも入り分かりやすい。
「上手いな、賢。店の立体感とかよく分かる」
「パースを習ったよ」
「パース?ってなんだ?」
「絵を描く時に取るんだよ」
「へえ、学校で色々教えてもらえるんだなぁ」
賢が日記を書いている間に、拓海は昼食の支度を始めていた。今日の昼は豚丼を作るつもりでいる。玉ねぎの皮を剥き、くし切りに刻み、白滝を切って鍋に入れた。豚肉をたっぷり入れ、アクを取りながらぐつぐつと煮えるのを待つ。味付けはすき焼きの割り下だ。簡単に出来る。
「いい匂い」
「日記出来た?」
「出来たよ!」
拓海がノートを見ると、筆とノートを買ってもらったことが書いてある。文だけでも嬉しそうで微笑ましいのに、文房具店とニコニコした賢自身が描かれているのだ。
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よしよし、と賢の頭を撫でると、賢は日記に描かれた絵以上にニコニコしてくれた。
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