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次の日の早朝、賢が居間でなにやらゴソゴソしているので、拓海は様子を見に行った。どうやら書道用具を整理しているらしい。拓海はハッとなった。
「賢くん、書道用具、買いに行かなきゃだったよね?」
墨汁がそろそろなくなると連絡帳に書いてあったことを拓海は今更思い出していた。年明けに書初めの課題が出ているのだ。
「おはよー、ん?どうした?」
慎吾が腹を掻きながらやってきた。
「あ、慎吾。書道用具の墨汁がね」
「そういや、なくなりそうって言ってたな。賢、新しい筆も買おうか?」
「絵の具の筆がいい」
「書道の筆だっていっぱい練習したから疲れてるんじゃないか?」
賢が筆を掴んでじっと見つめている。拓海もその筆を見て、あまりの使用感にびっくりしてしまった。賢は何でも一生懸命取り組む。その成果が道具に現れるのだ。
「疲れてる…?」
賢はしばらく考えて、筆の毛先を触った。
「ゴワゴワだねぇ」
「賢くん、新しいの買おうよ。絵の具の筆もね」
拓海がそう提案すると、賢はようやく頷いた。慎吾が賢を抱き寄せ、頭を撫でる。
「よし、飯食って課題したら買いに行こうか」
「ん」
拓海は昨日のカレーの残りにルウと具材を足してカレーうどんを作っていた。拓海のカレーうどんは慎吾と賢に好評で、うどんはいつも山盛りにしている。
「やっぱり拓海の作るカレーうどんは美味えな」
「よかった」
「美味しいねえ」
賢がアツアツのうどんをずるずる啜っている。
「どうする?賢くん、ご飯入れてあげようか?」
「ご飯欲しい」
食べ盛りの賢は本当によく食べる。自分もそうだったなぁと拓海は懐かしく思うのだ。
「はい、賢くん」
「ありがとう!」
拓海が丼に白米を盛り付けてやると、賢が嬉しそうにかきこみはじめる。
「拓海、俺も」
「はーい」
慎吾も看護師という体力勝負な仕事をしているせいか、よく食べる。二人がもりもり食べているのを見ながら拓海もうどんを啜った。
「ごちそうさまでした」
「あー、朝からよく食ったな」
慎吾が腹をぽんぽん叩いている。賢もさすがにお腹がいっぱいになったらしい。満足そうに笑っていた。
「賢くん、課題しようか?そうだ、ワークブック、今日で終わるんじゃない?」
賢はあ、と声を上げて、ソファの上に置いてあった通学カバンから冬休みの課題日程表を取り出して眺め始めた。
「ワークブック、おしまいだねぇ」
「すごいな、賢は。自分から勉強出来て」
本当にその通りだと拓海も思っている。賢は再びカバンに日程表をしまい、ワークブックを取り出した。英国数の三教科の総復習を狙った内容になっている。賢はページを捲り課題に取り組み始めた。以前、賢は慎吾に電子辞書を買ってもらっていた。それを駆使しながら賢はどんどん問題を解いていく。その鮮やかさに拓海と慎吾はただ感心するばかりだった。
「賢くん、書道用具、買いに行かなきゃだったよね?」
墨汁がそろそろなくなると連絡帳に書いてあったことを拓海は今更思い出していた。年明けに書初めの課題が出ているのだ。
「おはよー、ん?どうした?」
慎吾が腹を掻きながらやってきた。
「あ、慎吾。書道用具の墨汁がね」
「そういや、なくなりそうって言ってたな。賢、新しい筆も買おうか?」
「絵の具の筆がいい」
「書道の筆だっていっぱい練習したから疲れてるんじゃないか?」
賢が筆を掴んでじっと見つめている。拓海もその筆を見て、あまりの使用感にびっくりしてしまった。賢は何でも一生懸命取り組む。その成果が道具に現れるのだ。
「疲れてる…?」
賢はしばらく考えて、筆の毛先を触った。
「ゴワゴワだねぇ」
「賢くん、新しいの買おうよ。絵の具の筆もね」
拓海がそう提案すると、賢はようやく頷いた。慎吾が賢を抱き寄せ、頭を撫でる。
「よし、飯食って課題したら買いに行こうか」
「ん」
拓海は昨日のカレーの残りにルウと具材を足してカレーうどんを作っていた。拓海のカレーうどんは慎吾と賢に好評で、うどんはいつも山盛りにしている。
「やっぱり拓海の作るカレーうどんは美味えな」
「よかった」
「美味しいねえ」
賢がアツアツのうどんをずるずる啜っている。
「どうする?賢くん、ご飯入れてあげようか?」
「ご飯欲しい」
食べ盛りの賢は本当によく食べる。自分もそうだったなぁと拓海は懐かしく思うのだ。
「はい、賢くん」
「ありがとう!」
拓海が丼に白米を盛り付けてやると、賢が嬉しそうにかきこみはじめる。
「拓海、俺も」
「はーい」
慎吾も看護師という体力勝負な仕事をしているせいか、よく食べる。二人がもりもり食べているのを見ながら拓海もうどんを啜った。
「ごちそうさまでした」
「あー、朝からよく食ったな」
慎吾が腹をぽんぽん叩いている。賢もさすがにお腹がいっぱいになったらしい。満足そうに笑っていた。
「賢くん、課題しようか?そうだ、ワークブック、今日で終わるんじゃない?」
賢はあ、と声を上げて、ソファの上に置いてあった通学カバンから冬休みの課題日程表を取り出して眺め始めた。
「ワークブック、おしまいだねぇ」
「すごいな、賢は。自分から勉強出来て」
本当にその通りだと拓海も思っている。賢は再びカバンに日程表をしまい、ワークブックを取り出した。英国数の三教科の総復習を狙った内容になっている。賢はページを捲り課題に取り組み始めた。以前、賢は慎吾に電子辞書を買ってもらっていた。それを駆使しながら賢はどんどん問題を解いていく。その鮮やかさに拓海と慎吾はただ感心するばかりだった。
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