僕の死亡日記

はやしかわともえ

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五話・入院

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病院に行って、傷口を縫ってもらったのはよかった。あまりに処置が痛過ぎて、僕は思わず泣いてしまった。怪我している部分だってすでに痛いのに、それを縫い合わせるために更に患部に注射針を刺して麻酔薬を入れるのだから当然だ。泣きながらじっとしてるのは難しくて、隣に座ってくれていた兄さんの腕にずっと掴まっていた。麻酔をしたら本当に感覚という物がなくなって怖かった。先生もめそめそ泣いている僕を不憫に思ったのか、するすると縫ってくれた。包帯を巻いてもらって、やっと処置室を出ることが出来た。まだ麻酔が効いているせいか、傷口は痛くない。今日の夜中に痛くなるかもと言われていた。でもこういう時って、大抵痛み止めの薬を出してもらえるはずだ。早く帰りたい。でも僕はお母さんに止められた。

「詩史、今日は大事を取って一晩入院しましょうって」

「なんで?ヤダ!ヤダヤダ!!」

お母さんがおろおろしているのが伝わってきたけれど、僕は早く家に帰りたくてしょうがなかった。知らない大人に囲まれるのが嫌だった。お母さんが僕を抱きしめる。

「詩史、明日の夕方迎えに来るわ。いい子にしてるのよ?」

お母さんは有無を言わせなかった。看護師さんたちに挨拶をして行ってしまった。兄さんも僕を心配そうにちらりと見てくる。

「詩史くん、お部屋に行きましょうか」

看護師さんが話しかけてくる。僕は渋々頷いた。 なんで入院しなきゃいけないんだろう。腑に落ちない。僕は内心でものすごく怒っていた。大人はいつも勝手だ。やっぱりちゃんと言わないと気が済まない。

「なんで僕は入院なんですか!兄さんは帰れたのに!!」

思わず口調がきつくなってしまった。看護師さんは動じない。僕の顔をしっかり見つめて優しく笑った。

「今日のことは本当に怖かったと思うの。怪我のこともあるし。傷口がくっつくまで君にはあまり動いてほしくないのよ。詩史くんはさっきまで痛みを感じてなかったよね?もしかしたらその原因に心が傷ついたせいもあるんじゃないかなって」

「僕の頭がおかしいってこと?」

看護師さんが首を横に振る。

「正常だからそういう反応が出るの。大丈夫、すぐ退院できるからね」

看護師さんに頭を撫でられて、僕は急に恥ずかしくなった。なんだか幼い子供扱いされたみたいだったからだ。僕はもう15歳なのに。いや、看護師さんにとっては患者さんはみんな子供みたいなものなのかも。自分のベッドのある部屋に入ると、僕のショルダーバッグが置いてあった。お母さんが持ってきてくれたらしい。僕の大事なものは大抵この中に入れるようにしている。
入院着に着替えて、僕はベッドに横になった。
そうだ。明日には帰れるんだ。今は諦めて眠ろう。
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