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一章・素朴チャーハン

再会

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広場まで向かう間、これでもかと屋台が並んでいて、あんなに朝ゴハンを食べたくせに僕はまたお腹が空いてきてしまっていた。うーん、どうしよう。いい匂いだなぁ。うわ、角煮まんだって。美味そうだなあ。まだ集合時間までゆとりがあるしどうしようかな。

「お、カルマじゃねえか」

向こうから声をかけてくれた大きなひと。僕は嬉しくて彼に飛び付いていた。

えんさん!帰って来てたの?」

「おいおい、カルマ。お前は本当に小さいな」

ひょい、とそのまま抱き上げられてしまって僕はドキドキした。だって僕は炎さんが大好きだからだ。
ぎゅっと肩に抱き着いたら優しい手付きで頭を撫でられた。

「カルマ、お前。まだ就職決まらないんだって?」

優しい声で言われると、泣きそうになってしまう。僕は炎さんの肩に抱きついたまま答えた。

「多分、全部僕が悪いんだよ」

「カルマ…」

そうだ、上手くいかないのは僕が試験でミスばかりするからなんだ。そんなの初めから分かっていたことじゃないか。いつも何かしらミスをして肝心の料理をちゃんと提供できない。

「カルマ、お前もフェスティバルのお手伝いか?」

「うん。照明と音声のチェックを任されてるよ」

「なぁカルマ?俺はたまにあれが食いたいな」

僕は炎さんに顔を寄せた。僕に作れる料理なんて限られてるのを、彼はよく知っている。

「何が食べたいの?」

僕が尋ねると炎さんが笑った。

✣✣✣

僕は照明や音声の操作ボタンをずっとカチカチさせられている。うん、簡単だけどこれ、結構面倒だな。タイミングを音楽に合わせたりしなきゃいけないし、こうゆうのって今時プログラミングでできないのかね。
まあこの国は料理で発展してきてるから、難しいのかもね。

今ステージで開催されているのはフードバトルだ。会場にいる料理の鉄人に飛び込みで挑戦するっていう人気企画だ。
テレビでもよくスペシャル番組が放映されている。

「鉄人が圧倒的な票数で勝利だー!」

そう、この企画、とにかく鉄人が倒せないことで有名だったりする。
あまりにも鉄人に勝てないから審査委員がサクラなんじゃないかとか、挑戦者がやらせなんじゃないかって一時期揉めに揉めた。
そこで立ち上がったのが、料理界を取り仕切っている父さんだったというわけだ。
父さんは、審査委員を日本食大国全土からランダムに抽出されるシステムを一から作り上げてしまった。
父さんは本当にすごい。

「さあ、次の挑戦者!!
エントリーNo.5番!!!春川カルマー!」

はい?僕は耳を疑った。え、なんで僕の名前が呼ばれたの?

「カルマ!」

炎さんがずんずんやって来て僕を抱き上げてしまう。

「炎さん、どうゆうこと?僕、鉄人に挑戦なんて無理だよ!!」

「負けたって何も失わないだろ?」

炎さんがにやり、と笑った。確かにその通りなんだよな。
それならいっそ本気でぶつかって砕け散った方がいいのかもしれない。
炎さんが僕を抱えて手を観衆に向かって大きく振っている。歓声が響いていて、なんだか現実感がない。

「カルマ、お前のチャーハン、ぶつけてみろ」

「え?」

「お前なら出来る!自分を信じてやりな」

「うん!」

炎さんの力強い言葉に僕は頷いた。こうなったらやってやる。僕の本気をぶつける。
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