上 下
11 / 18
第二話「サチの結婚式」

サチの結婚式

しおりを挟む
サチとルリの結婚式は盛大に行われた。
レイラ達、サチの親類はもちろん、ルリの両親らや親類も来て、とても賑やかな式だった。

「結婚式、すごかったね!」

イヴが何度もそう言うのが可愛らしくて、レイラは笑ってしまう。

「サチお姉ちゃんの着ていたやつ可愛かった!」

「あれはウエディングドレスっていうんだよ」

「可愛いドレスだったね!」

やはりイヴも女の子だ。
そうゆうものが気になるらしい。

「イヴも大きくなったら誰かと結婚するんだろうな」

「あたしが?」

イヴが首を傾げている。

「あぁ、イヴも大人になっていく。
俺達も年を取るんだよ」

イヴはしばらく何も言わなかった。
彼女なりにいろいろ考えているようだ。

「あたしも大人になれるのかな。ずっとこのままだったらどうしよう」

「イヴは気が付かないか?」

「なあに?」

「この前新しい靴を買っただろう?なんでだかわかるか?」

イヴはしばらく考えて言う。

「あれはお庭をいっぱい走って穴が開いちゃったんだもん」

確かにその通りだった。レイラはその時のことを思い出していた。
イヴは庭を全速力で走り回るのが大好きで、靴がすぐだめになる。

(あの時は本当に困ったよな)

その靴はイヴにとって、特にお気に入りのものだった。
レイラがいくら言い聞かせても、捨てたくないとイヴが駄々をこねたのだ。
結局ラウが、街で同じデザインの靴を探してきてくれてこの事件は終わった。

「なぁ、イヴ。お前が今履いている靴は、前の靴よりサイズが大きいんだ」

「え?」

「イヴは大きくなってる。ちゃんと大人になるために成長してるんだよ」

「本当?」

「あぁ」

レイラは彼女を抱き上げた。
こうしてみればイヴは前より、随分重たくなった。

「イヴは、どんな人と結婚するんだろうな」

「そんなのわかんないよ」

レイラは笑った。その通りだ。イヴには幸せになって欲しい。
もちろんトウマにも。





「レイラさん、お疲れ様でした」

夜、レイラが寝る支度を整えていると、ラウがやってきた。
マグカップを2つ持っている。

「お茶を淹れてみました」

「!。ありがとうございます…」 

レイラがマグカップを受け取ると甘い香りがする。
このお茶はレイラがよく実家で飲んでいたものだ。

「サチさんが、茶葉を沢山持ってきてくださったんです。レイラさんがこのお茶が大好きだからと」

「わぁ、嬉しいです」

そんな、二人の気持ちが嬉しい。
レイラはマグカップを両手で包み込むように持った。温かい。
今日はなかなか暑い日だったのに、日が暮れると、途端に涼しい。
秋がすぐそこに近づいているのだろうか。季節の移り変わりは早い。
レイラは息を吹きかけてお茶を冷ました。一口飲むと、甘い香りがふわっと広がる。

「わぁ、懐かしい味だ」

レイラが呟くとラウが笑う。

「美味しいですか?淹れ方もサチさんに教えて頂いたんです」

「美味しいですよ。完璧です」

「それならよかった」

二人はしばらく、お茶を飲むのに専念した。熱々なので、なかなか飲めない。

「レイラさん、イヴさんは大丈夫でしたか?なんだかイヴさんが戸惑っているように見えたので…」

ラウが心配そうに尋ねてくる。

「そうですね。確かに戸惑っていました。でもイヴなりに答えを見つけるのかなって」

「なるほど。さすがイヴさんですね」

ラウの言葉が嬉しくて、レイラは頷いた。
ラウと一緒にいると、いつも心が温かくなる。

レイラはもう一口お茶を飲む。
甘い香りがまた口いっぱいにふわっと広がった。

なんだかレイラは、だんだん落ち着かない気持ちになってきていた。

(どうしたんだ、俺。ラウ様に抱きしめてもらいたくなってる)

素直にそう言うのも憚られて、レイラはそわそわしていた。

「レイラさん、どうしましたか?」

ラウはそんなレイラに気が付いたらしい。
優しく問い掛けてくれる。
レイラはラウのそばに座った。
彼を下から見つめる。

「あの…俺を抱いてください」

はしたないと思いつつレイラは言ってしまっていた。ぶわあと顔が熱くなる。
恥ずかしくて下を向いているとラウに抱き寄せられる。

「レイラさんは本当に可愛らしい方ですね」

レイラはようやくラウを見つめることが出来た。
彼に額にキスされる。
いつもの甘い香りがレイラをクラクラさせた。



「ん…っ…ラウ様っ!あ…」

ラウに後ろから抱えられて性器を擦られる。レイラは何度目かわからない吐精をした。

(気持ちいい)


いつもより体が敏感になっている気がする。レイラはラウの腕をぎゅ、と握った。
ラウの手はまたレイラを追い詰めてくる。

「や…もうだめ」

「レイラさん、本当にだめ、なんですか?」

ラウは手を止めない。

「ん、もっと」

どうやってもラウには敵わない。
気が付くと組み敷かれてしまっている。

「あ…」

レイラはぶるり、と恐怖を感じて震える。

「大丈夫です、私がいますよ」

ラウのものが入ってきてレイラは呻いた。
挿入はいつも苦しい。

「んんっ」

レイラが苦しそうに喘ぐと、ラウはいつも動かないでいてくれる。レイラはラウの背中にしがみついた。

「ラウ様、動いて」

「痛く、ないですか?」

ラウも苦しそうだ。

「もう、大丈夫だから」

ラウがゆっくり抉るように奥に入ってきて、レイラは散々喘いだ。



「旅行もいいものですね」


事後、ラウが腕枕をしてくれていた。
彼の体温を感じてレイラはホッとする。

「旅行、いいですね…!」

「子ども達にいろいろ見せたいんです。
勉強になりますから」

イヴとトウマが独り立ちをする前にみんなで沢山思い出を作りたい。それはレイラとラウがよく話している事柄だった。

ラウは今、とても忙しい。だからこそ、時間を作って出かけたいのだろう。
そんな彼の姿をレイラは素敵だと思っている。

「ラウ様は大変じゃないですか?」

レイラがふと尋ねると、彼は笑った。

「レイラさんやイヴさんが来てくれて、気持ちが明るくなりました。
今までの私には周りを見るゆとりもなかった」

彼は一人でトウマを守りながらがむしゃらに働いていた。

「ラウ様はすごいです。俺にできないことをしてくれるし」

「それはレイラさんもですよ」

にっこり笑いながらラウが言う。
そんな彼の温かい笑顔に、レイラもつられて笑った。

3話に続く
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

風邪をひいてフラフラの大学生がトイレ行きたくなる話

こじらせた処女
BL
 風邪でフラフラの大学生がトイレに行きたくなるけど、体が思い通りに動かない話

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話

こじらせた処女
BL
 網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。  ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

孤独な戦い(1)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

俺のソフレは最強らしい。

深川根墨
BL
極度の不眠症である主人公、照国京は誰かに添い寝をしてもらわなければ充分な睡眠を得ることができない身体だった。京は質の良い睡眠を求め、マッチングサイトで出会った女の子と添い寝フレンド契約を結び、暮らしていた。 そんなある日ソフレを失い困り果てる京だったが、ガタイの良い泥棒──ゼロが部屋に侵入してきた!  え⁉︎ 何でベランダから⁉︎ この部屋六階なんやけど⁉︎ 紆余曲折あり、ゼロとソフレ関係になった京。生活力無しのゼロとの生活は意外に順調だったが、どうやらゼロには大きな秘密があるようで……。 ノンケ素直な関西弁 × 寡黙で屈強な泥棒(?) ※処女作です。拙い点が多いかと思いますが、よろしくお願いします。 ※エロ少しあります……ちょびっとです。 ※流血、暴力シーン有りです。お気をつけください。 2022/02/25 本編完結しました。ありがとうございました。あと番外編SS数話投稿します。 2022/03/01 完結しました。皆さんありがとうございました。

処理中です...