上 下
24 / 41
4

回想②

しおりを挟む
その週の土曜日。俺の家族と瑠馬先生の家族が集まった。(乙先生も心配して駆け付けてくれた)
瑠馬先生は、あれからすぐに会の準備をしてくれたらしい。
行ってみると綺麗な会場だった。
そこで食事を楽しみながら皆で話すというのが主旨だった。

でも瑠馬先生はガチガチに緊張していて、それどころじゃなかった。

「あの、僕は伊藤瑠馬っていいます。今日はその…えーと」

「これから、拓哉を頼みます」

瑠馬先生が口ごもっている間に、俺の父さんがそう言って母さんと共に頭を下げた。
俺もそれには驚いた。

「拓哉からあなたの話はよく聞いています。あなたなら拓哉を大事にしてくれるでしょう」

「は、はい。大事にしましゅ」

瑠馬先生、思い切り噛んでるな。
俺は思わず笑ってしまった。
皆も笑い出す。
こんな感じで会は無事に終了した。

「あぁあ…ちゃんと言えなかったよ」

会の後、たまたま瑠馬先生とトイレで二人きりになった。瑠馬先生がジャブジャブ手を洗っている。
俺もその隣の洗面台で手を洗った。


「大丈夫ですよ。
父さんも母さんも分かったと思いますし」

「講演会ならちゃんと出来るのになー。
たっくんのご両親が優しくて良かったよー」

「瑠馬先生のご両親も優しかったですよ」

「それならよかったよ!」

この日、母さんが赤飯を炊いてくれていた。
ちょっと恥ずかしかったな。

先生の実家には後日行くことになった。

ーーー回想・終わりーー

「たっくん、そろそろ休憩にしよう」

旅行初日、俺達は早朝に出発している。
でも今は夏休み、しかももうすぐお盆だ。
生憎、帰省ラッシュに巻き込まれてしまった。
渋滞がしばらく続いて、ようやくサービスエリアに車を停めることが出来たのである。

「あぁ、コーヒーが体に沁み渡るよ」

コーヒーを飲みながら先生が言う。運転疲れるよな。
俺もココアを飲んでいた。
甘くて美味しい。

「少し、ここで休憩しましょうか」

「そうだね。レストランもあるようだし、早めのお昼にしようか」

時計を見るともう11時を回っている。
こうして瑠馬先生と一緒にいられることがすごく嬉しい。

そんなこんなで、G県に辿り着いたのは夕方過ぎだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

解放

papiko
BL
過去にCommandされ、名前を忘れた白銀の髪を持つ青年。年齢も分からず、前のDomさえ分からない。瞳は暗く影が落ち、黒ずんで何も映さない。 偶々、甘やかしたいタイプのアルベルに拾われ名前を貰った白銀の青年、ロイハルト。 アルベルが何十という数のDomに頼み込んで、ロイハルトをDropから救い出そうとした。 ――――そして、アルベル苦渋の決断の末、選ばれたアルベルの唯一無二の親友ヴァイス。 これは、白銀の青年が解放される話。 〘本編完結済み〙 ※ダイナミクスの設定を理解してる上で進めています。一応、説明じみたものはあります。 ※ダイナミクスのオリジナル要素あります。 ※3Pのつもりですが全くやってません。 ※番外編、書けたら書こうと思います。 【リクエストがあれば執筆します。】

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

どうも俺の新生活が始まるらしい

氷魚彰人
BL
恋人と別れ、酔い潰れた俺。 翌朝目を覚ますと知らない部屋に居て……。 え? 誰この美中年!? 金持ち美中年×社会人青年 某サイトのコンテスト用に書いた話です 文字数縛りがあったので、エロはないです ごめんなさい

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

処理中です...