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登校
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俺、坂本拓哉は文学部に通う普通の大学生だ。
また今年も、夏が来ようとしている。
すでに毎日暑くて、頭がぼーっとする。
大学生になって、ますます毎日が忙しくなった。
大学生=楽勝・遊べる、だなんて少し前まで思っていた。舐めてた。土下座して謝るから、もう少しだけ課題の量を緩めてください。
最近、俺には大学で少し気になっている人がいる。
でもその人とはいつも上手く話せなくて悲しい。そう、俺はその人を何故か意識しすぎてしまうのだ。
我ながら気持ち悪い。
(はぁ…会いたいような、会いたくないような)
電車に揺られながら俺は思った。
もうすぐ期末試験だから一応テキストを開いてはいるけれど、全然頭に入ってこない。
(これってどうゆう感情なんだろ…)
その人、伊藤瑠馬先生は俺の入っているゼミの顧問だ。
30歳という若さで教授をしている。
しかも人気ミステリー作家でもある。
俺も先生の著書はほとんど読んだけれど、どれもとても面白かった。
(俺がミステリー小説を元々好きなのもある)
あんな小説を俺も書けるようになりたいなぁ。
「あれ?たっくん?」
名前を呼ばれてテキストから顔を上げたら瑠馬先生だった。
一気に顔が熱くなる。
この駅から乗車してきたのか!
(だからなんで俺はこうなっちまうんだ!)
心の中で自分にツッコミを入れたけど熱は引かなかった。
心臓のバクバクがすごい。
「せ…先生こそ、どうして?」
「うーん。今日はいい天気だし、たまには運動のために学校まで歩きたいなと思ってね!
しかもたっくんに会えたし運命だと思わないかい?」
じっと大きな紫色の瞳に見つめられる。そして微笑まれた。
この表情をされると、困るくらいドキドキするんだ。
「う、運命って言われても…そんなのわからないし」
俺は、精一杯先生から目を反らした。
そうじゃないとドキドキで死んでしまいそうだったからだ。
「ふむ、たっくんは運命を信じないタイプだったかな?」
先生…顔が近いです。
先生の肌は陶器みたいにつるつるで白い。
それでいて身長が高くてイケメンだ。
だから女の子からの人気が凄まじいことも俺は知っている。
先生は誰にでも優しいし、話も面白い。
なのになんで俺なんかに構うんだろう?
全くわからない。
「たっくんと学校に一緒に通えるなんて、今日はいい日だ!!」
先生がにこにこしている。
俺だって先生を慕っているから一緒に居られるのが嬉しくないわけじゃない。
でもそれだけじゃない気がする。
本当、この感情はなんなんだ?
電車から降りると、うだるような暑さにやられた。日差しも強い。早速先生は黒い日傘を差している。
俺の通う大学は山の上にある。
だからそこまで、ちょっとした登山になる。
「先生、この坂道をよく登る気になりましたね」
俺が額に滲んだ汗をタオルで拭いていると、先生が首を傾げた。
先生は涼しげだ。
イケメンってずるい。
「うーん、歩くといろいろ発見があるからね。謎がこの世には沢山溢れているし!」
要するに先生は、なんでも楽しいんだな。
「先生はすごいですね」
ちょっと皮肉を込めて言ったら先生が笑った。
「たっくんにもいずれ分かるさ!」
「はぁ…」
学校に着くと俺は汗だくになっていた。
着替えなら持ってきているから平気だけど。着替えるために、トイレに行こうとしたら、先生に呼び止められた。
「たっくん、着替えるなら研究室を使っていいよ」
「え、でも…」
「いいからいいから」
先生が部屋の奥にあったパーテーションで俺の姿が見えないように目隠ししてくれる。
先生の影が見えるな。
こちらに手を振っている。
「さぁ、どんどん着替えていいからね!僕がここでしっかり見張っているよ!」
流石に俺もそれには噴き出してしまった。女の子じゃないんだし大丈夫だと思うんだけど。
あぁ、笑いすぎてお腹痛い。
「たっくん、何か面白いことがあったのかな?!」
瑠馬先生が焦っている。珍しいな。
「内緒です」
「えぇ!!?」
俺はカバンからTシャツを取り出して着替えた。ようやくさっぱりしたな。
「先生、もう大丈夫です」
脱いだTシャツを畳んでリュックに入れる。
「えぇ…もう行っちゃうのかい?」
んー、そんな寂しそうな顔しなくても。先生もお仕事がいっぱいあるはずだし。確か新刊の執筆も並行しているはずだ。
「講義が全部終わったら、また来ますから」
そう言ったら先生がぐっと拳を握った。なんだ?
「たっくんが来るまでに仕事を終わらせるよ!頑張るぞー!」
「はい、頑張りましょう」
先生がやる気のある内に俺がいなくなった方が良さそうだな。
「失礼しました」
俺は研究室を後にしたのだった。
また今年も、夏が来ようとしている。
すでに毎日暑くて、頭がぼーっとする。
大学生になって、ますます毎日が忙しくなった。
大学生=楽勝・遊べる、だなんて少し前まで思っていた。舐めてた。土下座して謝るから、もう少しだけ課題の量を緩めてください。
最近、俺には大学で少し気になっている人がいる。
でもその人とはいつも上手く話せなくて悲しい。そう、俺はその人を何故か意識しすぎてしまうのだ。
我ながら気持ち悪い。
(はぁ…会いたいような、会いたくないような)
電車に揺られながら俺は思った。
もうすぐ期末試験だから一応テキストを開いてはいるけれど、全然頭に入ってこない。
(これってどうゆう感情なんだろ…)
その人、伊藤瑠馬先生は俺の入っているゼミの顧問だ。
30歳という若さで教授をしている。
しかも人気ミステリー作家でもある。
俺も先生の著書はほとんど読んだけれど、どれもとても面白かった。
(俺がミステリー小説を元々好きなのもある)
あんな小説を俺も書けるようになりたいなぁ。
「あれ?たっくん?」
名前を呼ばれてテキストから顔を上げたら瑠馬先生だった。
一気に顔が熱くなる。
この駅から乗車してきたのか!
(だからなんで俺はこうなっちまうんだ!)
心の中で自分にツッコミを入れたけど熱は引かなかった。
心臓のバクバクがすごい。
「せ…先生こそ、どうして?」
「うーん。今日はいい天気だし、たまには運動のために学校まで歩きたいなと思ってね!
しかもたっくんに会えたし運命だと思わないかい?」
じっと大きな紫色の瞳に見つめられる。そして微笑まれた。
この表情をされると、困るくらいドキドキするんだ。
「う、運命って言われても…そんなのわからないし」
俺は、精一杯先生から目を反らした。
そうじゃないとドキドキで死んでしまいそうだったからだ。
「ふむ、たっくんは運命を信じないタイプだったかな?」
先生…顔が近いです。
先生の肌は陶器みたいにつるつるで白い。
それでいて身長が高くてイケメンだ。
だから女の子からの人気が凄まじいことも俺は知っている。
先生は誰にでも優しいし、話も面白い。
なのになんで俺なんかに構うんだろう?
全くわからない。
「たっくんと学校に一緒に通えるなんて、今日はいい日だ!!」
先生がにこにこしている。
俺だって先生を慕っているから一緒に居られるのが嬉しくないわけじゃない。
でもそれだけじゃない気がする。
本当、この感情はなんなんだ?
電車から降りると、うだるような暑さにやられた。日差しも強い。早速先生は黒い日傘を差している。
俺の通う大学は山の上にある。
だからそこまで、ちょっとした登山になる。
「先生、この坂道をよく登る気になりましたね」
俺が額に滲んだ汗をタオルで拭いていると、先生が首を傾げた。
先生は涼しげだ。
イケメンってずるい。
「うーん、歩くといろいろ発見があるからね。謎がこの世には沢山溢れているし!」
要するに先生は、なんでも楽しいんだな。
「先生はすごいですね」
ちょっと皮肉を込めて言ったら先生が笑った。
「たっくんにもいずれ分かるさ!」
「はぁ…」
学校に着くと俺は汗だくになっていた。
着替えなら持ってきているから平気だけど。着替えるために、トイレに行こうとしたら、先生に呼び止められた。
「たっくん、着替えるなら研究室を使っていいよ」
「え、でも…」
「いいからいいから」
先生が部屋の奥にあったパーテーションで俺の姿が見えないように目隠ししてくれる。
先生の影が見えるな。
こちらに手を振っている。
「さぁ、どんどん着替えていいからね!僕がここでしっかり見張っているよ!」
流石に俺もそれには噴き出してしまった。女の子じゃないんだし大丈夫だと思うんだけど。
あぁ、笑いすぎてお腹痛い。
「たっくん、何か面白いことがあったのかな?!」
瑠馬先生が焦っている。珍しいな。
「内緒です」
「えぇ!!?」
俺はカバンからTシャツを取り出して着替えた。ようやくさっぱりしたな。
「先生、もう大丈夫です」
脱いだTシャツを畳んでリュックに入れる。
「えぇ…もう行っちゃうのかい?」
んー、そんな寂しそうな顔しなくても。先生もお仕事がいっぱいあるはずだし。確か新刊の執筆も並行しているはずだ。
「講義が全部終わったら、また来ますから」
そう言ったら先生がぐっと拳を握った。なんだ?
「たっくんが来るまでに仕事を終わらせるよ!頑張るぞー!」
「はい、頑張りましょう」
先生がやる気のある内に俺がいなくなった方が良さそうだな。
「失礼しました」
俺は研究室を後にしたのだった。
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