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おまけSS

フオンへ(ツムギとキリト)

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登場人物紹介

・ツムギ・クヴェール 二十一歳
中学生の時、あることで現代日本から転生してきた。その時は男の子だったが、転生後は女の子だった。非常に可愛らしい顔立ちをしており、四人いる兄たちやキリトから溺愛されている。前世の名残から僕っ子。

・キリト・クヴェール 二十七歳
ツムギと共に現代日本から転生してきた。基本的にへらへらしているが、ツムギを溺愛しており、とにかく家族が第一優先。先の戦争で左目を負傷している。

・ビャクヤ・クヴェール 十歳
ひょんなことからツムギたちと出会って一緒に暮らすようになった。明るい性格で、キリトから戦いの訓練を受けている。彼女の身体能力はかなり高い。無邪気な性格。

・キイト・クヴェール 五歳
冷静で慎重な性格の男の子。ツムギとキリトの実子。ビャクヤのことが大好きでずっとそばにいる。少し頑固。

・アカツキ 三十歳
毎日のように騎士隊の詰所に尋ねて来るキリトを鬱陶しがりながらも、相手をしてくれる優しい人。なんだかんだ言いながら、キリトを信頼している。









「ムギ!ただいま!」
ばたばたと廊下で音がしたかと思ったら、やっぱりキリトで僕は思わず笑ってしまった。そんなに慌てなくていいのに。僕ならいつでもここにいる。
「お帰り、キリト」
ちなみに僕は、キッチンで夕食を作っている。今日のメインディッシュはハンバーグだ。ニンジンの甘いグラッセと、茹でたブロッコリーは絶対に外せない。ハンバーグはみんなが好きなおかずだから失敗しないようにしないと。
「キリト―、もうお風呂沸いてるー」
ビャクヤがタオルと着替えを持ってスタンバイしている。キイトも一緒だ。二人共、キリトが大好きで、すごく慕っている。僕もこの子たちがとても大事で大好きだ。みんな、かけがえのない存在だ。一人でも欠けたらいけない。実は、ビャクヤと僕たちは血が繋がっていない。ある事件をきっかけに一緒に暮らすようになった。それからもう五年ほどが経過している。赤ん坊だったキイトも随分大きくなった。
「ムギ、俺、先に子供たちとお風呂に入って来るね」
「うん。すぐご飯が食べられる様にしておくね」
そう言ったら急に抱き寄せられて驚いた。
「ムギ、ありがとう。愛しているよ」
「キリトってば」
キリトはいつも、すごく甘い言葉を僕にくれる。照れるけど嬉しい。キリトは顔立ちがすごく整っているし、誰にでも優しいから、他の女の子にもてるのかなってずっと思っていたけど、キリトは他の女の子にあまり興味がないみたいだ。アカツキさんの方が女の子よりよほど好きなんじゃないかと思う。だって毎日のように会いに行っているみたいだし。毎回相手をしてくれるアカツキさんも優しい。
キリトのお仕事はお義父様のお手伝いが主だ。キリトのお義父様は最近新しい会社を興した。名前だけだけど、キリトが社長だ。いわゆるリゾート開発をする会社で、寂れているスリシアの郊外を盛り上げようとしている。
お義父様はこの国、スリシアが大好きだ。でもだんだん人が減ってきている。やっぱりスリシアは山が多くて交通が不便だし、仕方ないのかな。会社のコンセプトとしてはゆっくり寛げる癒しの自然空間とのことだ。そう、スリシアには未開拓の自然がたくさん残っている。その自然を壊さないなら、僕もホテルには賛成だ。ただ自然をぼうっと見つめる時間は癒されるしね。焚火とかキャンプもいいな。
でも、そもそもホテルを建てるためにはいい土地を探す必要がある。お義父様の希望通りの土地がなかなかないとキリトは毎日のようにぼやいている。そんなに大変なお仕事をしているのに、キリトはいつでもニコニコしている。本当に優しい人だ。リゾートホテルが出来たら、キリトはもっともっと忙しくなるんだろうな。僕もなにか、キリトのお手伝いが出来たらいいのだけど。ハンバーグを予熱しておいたオーブンに入れた。これで中までしっかり火が通れば完成だ。
僕は心配になって、浴室に向かった。あまりにも静かだったからだ。風呂場のドアをそっと開けてみる。
「ムギ!ナイスタイミング!ビャクヤがのぼせてる!」
「ええ?」
僕はくたあっとなっているビャクヤをキリトから受け取った。
「ビャクヤ、大丈夫?お水飲もうね」
「ふああ、あっついー」
ビャクヤが呻く。
「キイトも!」
キリトがキイトを抱き上げた。キイトはのぼせてないみたいだ。良かった。
ビャクヤに水を飲ませて、二人の着替えを手伝う。キリトは今、体を洗ってるんだろうな。
「ハンバーグ出来た?」
ビャクヤはすっかり復活している。僕はオーブンの扉を開けた。ふわっといい香りがしている。
「わあああ、美味しそうー」
「本当だね!」
キイトとビャクヤの言葉が嬉しい。僕はお皿にハンバーグを盛りつけた。うん、我ながら上手く行った。
「うわあ、いい匂いー」
キリトが頭をタオルで拭きながらやってくる。
「キリト、一番大きいの食べる?」
ビャクヤの言葉にキリトが笑う。ビャクヤにはお父さんって本当は呼ばれたいらしい。でも無理強いはしたくないとも言っていた。キリトは優しい。
「ビャクヤはどれがいいの?」
「ビャクヤ、これ!ニンジン沢山のやつ!」
「キイトは?」
「僕はえーと」
キイトがさっと視線を巡らしている。この子が僕のお腹の中にいた時、どんな子が生まれて来るんだろうって少し不安だった。でも産んだ時に決めた。この子は何があっても守ろうって。キイトは優しいいい子だ。活発なビャクヤとは逆ですごく慎重な子だ。そう思うと子供って面白いなって思う。お母様も僕達、兄妹に同じことを思っていたのかな。また今度帰ったら聞いてみよう。
「いただきます」
僕たちは夕食を食べ始めた。ハンバーグをナイフで割ってみたら肉汁が溢れてきた。よかった、ちゃんとできてる。
「えーと」
キリトが咳払いした。どうしたんだろう?
「キリト?ハンバーグ美味しくなかった?」
「ううん、ハンバーグは最高に美味しいよ!あのね」
キリトがす、とテーブルの上に何かを置く。封筒から分かる。これ、汽車のチケットだ。
「これって」
「フオンに行こう」
「へ?」
キリトがチケットを封筒から出す。全部で八枚あった。それぞれの行きと帰りのチケットだ。日付は来週?すぐじゃないか。
「もうすぐ結婚記念日だし、みんなでフオンに旅行に行こう」
「わああ、やったあ!」
ビャクヤが歓声を上げる。嬉しいけどお仕事の方は大丈夫なのかな?僕の迷いにキリトは笑った。
「大丈夫。ホテルの土地ならいいとこ見つけたから」
「本当?」
キリトが写真を出して見せてくれた。古びた汽車が鉄橋を走っている場面が映し出されている。確かここって。僕はキリトを見つめた。
「そう。スリシアからフオンに向けて山沿いに汽車が走ってるでしょ?そこを開拓するのはどうかなって」
「でもすごくお金がかかるんじゃ」
山を開拓となると、人手もいるし時間だってかかる。キリトが笑った。
「実はいい働き手を見つけていて」
「すごい、キリト」
僕は感心した。
「ムギ、ちゃんとできたらご褒美くれる?」
「うん、僕に出来ることなら」
「やった!約束だからね」
「うん」

***
「アーカツキ、いるー?いたー!」
俺はいつものようにアンデルフォン公国の騎士の詰所にいる。そこで書類を睨みながら仕事を進めているいかつい男が一人。彼がアカツキだ。俺は机の上に両手を乗せて身を乗り出した。
「キリト、お前は本当に仕事してるのか?」
「いやだなあ、アカツキ。俺が仕事をさぼるわけないだろ」
「いや、俺が見ている限り、お前はさぼってるようにしか見えない」
こりゃ参ったね。
「今日はちゃんと仕事の話だよ」
「本当か?」
アカツキにこうして睨まれるのもすっかり慣れてしまった。
「そうだよ、今日は仕事。ちょっとこれ見て」
俺は懐から写真を取り出した。アカツキがしげしげと写真を眺めている。フオンに向かう汽車の写真だ。
「ああ、木が虫に食われて切らなきゃいけないところか」
「そうなんだよ。だから力自慢の騎士隊の力を借りたいなって」
アカツキが面白そうに笑った。
「へえ、お前いい度胸だなあ。いつから騎士隊はお前の部下になった?」
やっぱり怖いなあ、アカツキは。これはもう一枚カードを切らなくちゃいけないか。
「今のアンデルフォンはすさまじく平和だって聞いているけれど?騎士隊の存続がって」
「う・・・」
アカツキが顔を歪める。ちらっと聞いた話がうまくヒットしたようだ。アカツキはしばらく考えているようだった。こめかみに手を当てて唸っている。
「お前、結婚記念日にフオンに行くんだろ?」
アカツキには随分前から話していた。
「うん、そのつもりだけど」
「それなら俺の代わりに遣いに行ってくれ」
「え」
なんか面倒くさそうだなあ。
「フオンに人魚族がいるだろ?俺の知り合いの人魚がフオンに移住したいそうなんだ。ついでに移住できるか聞いてきてくれ」
「やだ」
「お前な・・・。騎士隊を貸してやるって言っているだろ?」
「それでもやだ。俺はフオンでのんびりムギと一緒にいるんだもん」
急にアカツキが電話の受話器を持ち上げてどこかに電話をかけ始めた。
「頼む、あのバカが言うことを聞かないんだ」
アカツキが受話器を差し出してきたのでそれを受け取る。耳に当てると相手が息を吸う音がした。
「キリト、アカツキさんに我が儘言ってるの?」
その声に俺は驚いた。声の主、それはムギだったからだ。もちろん俺は慌てた。ツムギさんがめちゃくちゃ怒ってますよ?
「え、あ、違うよ。我が儘なんて言ってない」
「そう。よかった。キリト、アカツキさんと仲良くね」
「う、うん」
少し話して電話が切れる。アカツキが面白そうにこちらを見てきたから腹が立った。もうこうなったら仕方ないか。
「分かった。やればいいんだろ?」
「最初から素直にそう言え」
ムギを引き合いに出してくるのって正直反則じゃん。俺はしばらくアカツキを睨んでみたけど効果はなかった。その後、アカツキがフオンの海にある人魚が住む島について教えてくれた。人魚たちはその島で歌をうたったり、ゆったりくつろいでいるそうだ。
てっきり海の底に行かなきゃいけないのかと思っていたから意外だった。これならすぐに終わらせてムギと一緒にいられるよね。っていうか、そうじゃないとこの任務、手詰まりだもんね。
「じゃあ、騎士隊の協力、よろしくね」
「お前もどうせ作業を見に来るんだろ?ビャクヤはどうなんだ?」
俺は笑った。
「もちろん一緒だよ。俺と一緒に訓練してるし。宿題も一緒に見てやってよ」
「分かったよ」
今日家に帰ったら、ムギたちにフオンに行くことを話そう。俺は慌ててスリシアに戻ったのだった。さすがに他の仕事もしないと父さんに怒られる。

***
「アカツキー!キャハハ」
そんなこんなで三日後。俺たちはホテル建設予定地にいる。ビャクヤがアカツキに駆け寄っていく。ビャクヤのこれは、ほぼ野生のイノシシの突進だ。そんなビャクヤの突進を軽々といなして持ち上げるアカツキ。うん、やっぱりアカツキは絶対に敵に回したくない。
「ここを開拓してホテルを建てるってのか?」
「そう。ホテルもログハウスとかにしたら楽しそうでしょ?」
アカツキが腕を組んで辺りを見渡している。
「まあ悪くない案だな。でも重機が入れるようになるまで人力だから、かなり頑張らないと。どうせ最終的には業者も入れるんだろ?」
「うん。父さんの会社の知り合いに頼むつもり」
「ある程度なら素人の俺たちでも手伝えるな」
「よかったあ」
この辺り一帯の土地に生えている木は、虫に食われて病気にかかっており、切り倒さなければいけないところだった。おかげで安く土地を買い取ることが出来たのだ。父さんも俺に任せるって言ってくれたし出来る限りやってみよう。一応俺、社長だし。アカツキが騎士たちを集合させる。
「今日の訓練はここで行う。持久力のテストだ、いいな?」
「はい!」
騎士たちもよく事情を分かっているようで、頬を緩ませている。うん、アンデルフォン公国の騎士隊がすごくいい組織だって分かる。
俺たちは道を妨げている木を鉈で切り倒し始めた。うん、いくら木が弱っているとはいえ、思ってたより大変。鉈を使い慣れてないし。
「ビャクヤ、そこで見ていろよ。これから木を切るからな」
「うん、アカツキ頑張れー」
アカツキが軽々と木を切り倒す。悔しいな。だんだんやっていくうちにコツを掴んできた。よし、この調子だ。しばらく黙々と作業を続ける。切り倒した木の中を見ると、木の全てが病気でやられているわけじゃない。使えそうなところを切り出して、材料にしよう。切り倒した木を何人かで運んで積んでおく。加工は業者に任せよう。こうして今日の作業が終了した。作業場が森の中なので明るいうちに撤収する。
「キリト、木がいっぱいだねえ」
ビャクヤがいてくれるだけで現場の空気が大分柔らかくなるからいい。俺たちは停めておいた車に乗り込んだ。助手席にアカツキが乗り込む。ビャクヤはもちろん後部座席だ。
「ビャクヤ、学校どうだ?」
「楽しいよお。いろいろお勉強してる」
アカツキとビャクヤが楽しそうに話しているのを聞きながら俺は車を走らせた。いやあ、疲れたね。他の騎士たちの車が後に連なって来る。気を付けて帰ろう。アンデルフォン公国までアカツキを送り届けて、俺たちはスリシアの家に帰ったのだった。
***
「フオン、どこ?」
「この地図だと」
旅行前日、出かける仕度を整えた僕たちは寝室にいる。ケイトはもう夢の中だ。ビャクヤが小学部でもらったカラーの地図帳をキリトに見せてフオンの場所を聞いている。僕もそっと彼女の隣に座った。
「あ、ここだね」
「わあ、近いね!」
ビャクヤが嬉しそうに言って慌てたように自分の口を手で抑えた。どうしたんだろう?
「キイト、寝てるから静かにだよね」
彼女が小声で言う。その可愛らしい仕草に僕たちは思わず笑ってしまった。
「ありがとうね、ビャクヤ」
彼女の頭を撫でると、ビャクヤが笑う。そろそろ寝た方がいいな。明日は出発が早い。
「ビャクヤ、そろそろ寝ようね」
「はーい」
ベッドに横になって明かりを消す。お互いにおやすみを言い合って僕たちは眠ったのだった。

目覚まし時計の音が鳴っている。僕たちはそれに飛び起きた。今日は待ちに待った旅行の日だ。ビャクヤはとっくに起きていたらしい。
「ムギ、おはよう」
「ビャクヤ、おはよう。顔は一人で洗えた?」
ビャクヤは元気よく頷く。可愛いなあ。
僕もそれなりに準備というものがある。着替えてメイクをした。ビャクヤには淡い栗色のワンピースを着せた。僕が自分で作ったものだ。お母様から教えてもらった自慢の一着だ。
「可愛いねえ、ビャクヤ」
「キャハハ」
キイトにもお揃いの柄の半ズボンを履かせた。うん、可愛い。
「ムギはなんでも作れるんだなあ」
キリトに驚いたように言われて、僕は困ってしまった。
「い、一応色々習ってきたからね」
キリトに抱き寄せられる。そのままぎゅっと抱きしめられた。キリトからいい匂いがする。
「き、キリト。子供たちが見てるから」
恥ずかしくなって言ったらキリトに首を傾げられる。
「俺たちが仲良しなの、よく知っておいてもらわないと」
そうかもしれないけど。
「キャハハ、ビャクヤもぎゅうするー」
「僕も入れて!」
なんだか幸せだなって思ってしまったのは秘密だ。
これから僕たちは向かう、フオンへ。
                 完

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