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おまけSS
ツムギ、お手伝いにいく
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「ねえ、キリト」
「んー?」
ある夏の夜、ツムギはビャクヤとキイトの為に服を作っていた。夏が終われば、この辺りはぐっと涼しくなる。
そのための上着だ。
キリトは夕刊を読んでいる。彼は全く酒が飲めないらしい。
ツムギが淹れてくれた熱い茶をちびちび飲んでいる。
「明日なんだけど、アンデルフォンに行こうと思うの」
ツムギの言葉にキリトはポカン、としている。
「キリト?」
固まっているキリトに声を掛けると、キリトは突然立ち上がった。
「も、もしかしてそれ、実家に帰らせて頂きますってやつ?俺、何かしたー?」
今にも泣き出しそうなキリトをツムギはなんとか宥めた。
「違うから。騎兵隊のお手伝いに行きたいの。大分前だけどアカツキさんと約束したから」
「ええー!」
「だから明日は子供達と「俺も行く!!」
キリトが言い張る。彼は明日、滅多にない休みだった。
ツムギは彼にゆっくりしてもらいたかったのだが、こうなったキリトを説き伏せるのは無理である。
「じゃあ皆でお手伝いに行こうね」
ツムギが笑って言うとキリトは頷いた。
✣✣✣
「ビャクヤ、濡れちゃうよー」
「キャー!!」
次の日の早朝、スリシアを出発したツムギ達は今、アンデルフォン騎兵隊の宿舎にいる。
ツムギは庭に生えている植物にじょうろで水をやっていた。ビャクヤが時々手を出しては水で遊んでいる。
キイトは乳母車ですやすや眠っていた。
「ツムギ、大変じゃないか?悪いな」
アカツキがやって来て言う。
「いいえ。子供達とこうしてアンデルフォンに帰ってこられて嬉しいです」
アカツキがツムギの頭に手を乗せる。
「ありがとうな」
「はい。あの…キリトは?」
キリトはアカツキに捕まってそのまま連れて行かれたのだ。
ちょっと心配である。
「キリトなら訓練させている。平和ボケして鈍らないようにな。いざという時、お前たちを守れないようじゃ困る」
「キリトがいつもすみません。
なんだか、ご迷惑をかけているみたいで」
「お前が謝ることじゃない、気にするな」
アカツキはやはり優しい。
「アカツキー!カエルー!」
ビャクヤが手に小さなカエルを乗せている。
アカツキは屈んでビャクヤの頭を撫でていた。
「じゃあ、本当に任せていいのか?」
「はい。大丈夫ですよ」
次は宿舎内にある食堂の清掃を始めたツムギとビャクヤである。
「わぁ、広ーい」
「ここには沢山騎士さんがいるからね。さ、お掃除して綺麗にしよう」
「うん!」
ビャクヤには机の上や棚の中をふきんで拭いてもらい、ツムギは床を雑巾でまんべんなく拭いた。
「綺麗になったねー」
「うん。ビャクヤ、午後はキリトの所に行く?」
「キリト、何してるの?」
ビャクヤが首を傾げている。
「うん、訓練してるみたい」
ビャクヤが目をキラキラさせた。
「ビャクヤも訓練したーい!」
✣✣✣
「あ、ムギー!」
キリトとアカツキが向こうから歩いてくる。ツムギも手を振った。ビャクヤ達は先に食堂でお昼を食べている。
「訓練どうだった?」
「聞いてよ、ムギー。アカツキってば全然手加減してくれないの」
「お前が本気を出さないからだろうが」
「えー、そんなことないのに」
「俺に分からないと思うのか。ったく」
ツムギは思わず笑ってしまった。
なんだかんだこの二人は仲良しである。
「あー、お腹空いた。ビャクヤとキイトは?」
「うん、先にお昼を頂いているよ。あ、アカツキさん、午後はビャクヤも訓練したいって」
それにアカツキがにやり、と笑う。
「ビャクヤの運動能力には興味がある。キリト、午後はお前も覚悟しておけよ」
「えー、まだやるのー?」
三人はわいわい話しながら食堂へ向かったのだった。
おわり
「んー?」
ある夏の夜、ツムギはビャクヤとキイトの為に服を作っていた。夏が終われば、この辺りはぐっと涼しくなる。
そのための上着だ。
キリトは夕刊を読んでいる。彼は全く酒が飲めないらしい。
ツムギが淹れてくれた熱い茶をちびちび飲んでいる。
「明日なんだけど、アンデルフォンに行こうと思うの」
ツムギの言葉にキリトはポカン、としている。
「キリト?」
固まっているキリトに声を掛けると、キリトは突然立ち上がった。
「も、もしかしてそれ、実家に帰らせて頂きますってやつ?俺、何かしたー?」
今にも泣き出しそうなキリトをツムギはなんとか宥めた。
「違うから。騎兵隊のお手伝いに行きたいの。大分前だけどアカツキさんと約束したから」
「ええー!」
「だから明日は子供達と「俺も行く!!」
キリトが言い張る。彼は明日、滅多にない休みだった。
ツムギは彼にゆっくりしてもらいたかったのだが、こうなったキリトを説き伏せるのは無理である。
「じゃあ皆でお手伝いに行こうね」
ツムギが笑って言うとキリトは頷いた。
✣✣✣
「ビャクヤ、濡れちゃうよー」
「キャー!!」
次の日の早朝、スリシアを出発したツムギ達は今、アンデルフォン騎兵隊の宿舎にいる。
ツムギは庭に生えている植物にじょうろで水をやっていた。ビャクヤが時々手を出しては水で遊んでいる。
キイトは乳母車ですやすや眠っていた。
「ツムギ、大変じゃないか?悪いな」
アカツキがやって来て言う。
「いいえ。子供達とこうしてアンデルフォンに帰ってこられて嬉しいです」
アカツキがツムギの頭に手を乗せる。
「ありがとうな」
「はい。あの…キリトは?」
キリトはアカツキに捕まってそのまま連れて行かれたのだ。
ちょっと心配である。
「キリトなら訓練させている。平和ボケして鈍らないようにな。いざという時、お前たちを守れないようじゃ困る」
「キリトがいつもすみません。
なんだか、ご迷惑をかけているみたいで」
「お前が謝ることじゃない、気にするな」
アカツキはやはり優しい。
「アカツキー!カエルー!」
ビャクヤが手に小さなカエルを乗せている。
アカツキは屈んでビャクヤの頭を撫でていた。
「じゃあ、本当に任せていいのか?」
「はい。大丈夫ですよ」
次は宿舎内にある食堂の清掃を始めたツムギとビャクヤである。
「わぁ、広ーい」
「ここには沢山騎士さんがいるからね。さ、お掃除して綺麗にしよう」
「うん!」
ビャクヤには机の上や棚の中をふきんで拭いてもらい、ツムギは床を雑巾でまんべんなく拭いた。
「綺麗になったねー」
「うん。ビャクヤ、午後はキリトの所に行く?」
「キリト、何してるの?」
ビャクヤが首を傾げている。
「うん、訓練してるみたい」
ビャクヤが目をキラキラさせた。
「ビャクヤも訓練したーい!」
✣✣✣
「あ、ムギー!」
キリトとアカツキが向こうから歩いてくる。ツムギも手を振った。ビャクヤ達は先に食堂でお昼を食べている。
「訓練どうだった?」
「聞いてよ、ムギー。アカツキってば全然手加減してくれないの」
「お前が本気を出さないからだろうが」
「えー、そんなことないのに」
「俺に分からないと思うのか。ったく」
ツムギは思わず笑ってしまった。
なんだかんだこの二人は仲良しである。
「あー、お腹空いた。ビャクヤとキイトは?」
「うん、先にお昼を頂いているよ。あ、アカツキさん、午後はビャクヤも訓練したいって」
それにアカツキがにやり、と笑う。
「ビャクヤの運動能力には興味がある。キリト、午後はお前も覚悟しておけよ」
「えー、まだやるのー?」
三人はわいわい話しながら食堂へ向かったのだった。
おわり
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