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授かりもの
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「んー?」
昼間、いつも通りキリト様が帰ってきた。
ビャクヤが散らかした部屋を片付けて、慌ててお昼ご飯の支度を始めたけれど、彼が帰ってくる前までに間に合わなかった。
そんな私を見てキリト様が首を傾げている。
「ムギ、何があった?」
キリト様に腕をぐいと掴まれる。
「ここ、あざになってる。ここもだ。朝にはなかったよね?どうしたの?」
キリト様はよく見ている。
「あのね、キリト様」
私はビャクヤの元へ彼を連れて行った。
まだ彼女は眠っている。
私は事の顛末を話した。
「こんな小さい子がどこから?」
「分からない。
何か子供の捜索願いは出されてないの?」
「いや…ない。この子、ビャクヤって名前なんだ。
誰かに育てられているのかもしれないね」
私は彼女と出会った時のことを更に詳しく話した。あの時、ビャクヤはとてもお腹を空かせていた。
もしかしたら養育者とはぐれてしまったのかもしれない。言葉がほとんど話せないこともだ。
「なるほどね。
ならこの子は家で預かろう。ムギはそれでいい?」
「大丈夫」
新しい家族がこんな形で増えるとは思わなかった。私はなかなか妊娠出来なかった。
それがずっともどかしかった。
キリト様は今のままで良いと言ってくれたけれど、私は焦っていた。
皆、私達の子供が生まれるのを今か今かと待ち兼ねている。
もしかしたら、私はずっと子供を産めないかもしれない。それが一番怖かった。
キリト様が私に顔を寄せてくる。
「ムギ、顔色悪いよ。大丈夫?」
「キリト…様」
私が崩れ落ちそうになったのをキリト様が支えてくれた。
「ムギ!!待ってろ、すぐ医者を呼ぶ!」
私をベッドに寝かせて、キリト様は家を飛び出していった。
私、どうしちゃったんだろう。
隣にいるビャクヤを見る。
彼女はよく眠っているようだ。
私は彼女の頭を撫でた。
「ムギ!大丈夫か!!」
いつの間にかうたた寝してしまっていたらしい。
私はキリト様の声に目を覚ました。
白衣を着た人が大きなバッグを持ってやってきた。クヴェール家専任の医師、コール先生だ。
腕がいいと評判の先生である。
「ツムギ嬢、起き上がれますかな」
眼鏡を押し上げながらコール先生が言う。
私は起き上がった。
先生に診てもらっている間、キリト様は緊張していたようだった。
「ふむ。どうやら妊娠されてますな」
「へ?」
私もキリト様も驚いた。
二人で顔を見合わせる。
「一度診療所に来てください。
で、この子は?」
コール先生がビャクヤを見つめる。
「この子は迷子のようで」
キリト様が答えると、コール先生は彼女を起こさないように診察してくれた。
「ふむ。痩せてはいるが重大な問題ななさそうですな。
この子も出来れば連れて来てください」
「分かりました」
私達は頷いた。
先生を見送る。
「ムギ、子供が出来たのか?」
「うん、そうみたい」
「やったな!」
キリト様が私を抱き締める。私は彼を見つめた。
「キリト様、とりあえずお昼の支度をするわ。
そろそろビャクヤを起こさないと夜眠れなくなっちゃう」
「そうだね。本当、どこの子なんだろう?」
私達にはまるで見当が付かなかった。
昼間、いつも通りキリト様が帰ってきた。
ビャクヤが散らかした部屋を片付けて、慌ててお昼ご飯の支度を始めたけれど、彼が帰ってくる前までに間に合わなかった。
そんな私を見てキリト様が首を傾げている。
「ムギ、何があった?」
キリト様に腕をぐいと掴まれる。
「ここ、あざになってる。ここもだ。朝にはなかったよね?どうしたの?」
キリト様はよく見ている。
「あのね、キリト様」
私はビャクヤの元へ彼を連れて行った。
まだ彼女は眠っている。
私は事の顛末を話した。
「こんな小さい子がどこから?」
「分からない。
何か子供の捜索願いは出されてないの?」
「いや…ない。この子、ビャクヤって名前なんだ。
誰かに育てられているのかもしれないね」
私は彼女と出会った時のことを更に詳しく話した。あの時、ビャクヤはとてもお腹を空かせていた。
もしかしたら養育者とはぐれてしまったのかもしれない。言葉がほとんど話せないこともだ。
「なるほどね。
ならこの子は家で預かろう。ムギはそれでいい?」
「大丈夫」
新しい家族がこんな形で増えるとは思わなかった。私はなかなか妊娠出来なかった。
それがずっともどかしかった。
キリト様は今のままで良いと言ってくれたけれど、私は焦っていた。
皆、私達の子供が生まれるのを今か今かと待ち兼ねている。
もしかしたら、私はずっと子供を産めないかもしれない。それが一番怖かった。
キリト様が私に顔を寄せてくる。
「ムギ、顔色悪いよ。大丈夫?」
「キリト…様」
私が崩れ落ちそうになったのをキリト様が支えてくれた。
「ムギ!!待ってろ、すぐ医者を呼ぶ!」
私をベッドに寝かせて、キリト様は家を飛び出していった。
私、どうしちゃったんだろう。
隣にいるビャクヤを見る。
彼女はよく眠っているようだ。
私は彼女の頭を撫でた。
「ムギ!大丈夫か!!」
いつの間にかうたた寝してしまっていたらしい。
私はキリト様の声に目を覚ました。
白衣を着た人が大きなバッグを持ってやってきた。クヴェール家専任の医師、コール先生だ。
腕がいいと評判の先生である。
「ツムギ嬢、起き上がれますかな」
眼鏡を押し上げながらコール先生が言う。
私は起き上がった。
先生に診てもらっている間、キリト様は緊張していたようだった。
「ふむ。どうやら妊娠されてますな」
「へ?」
私もキリト様も驚いた。
二人で顔を見合わせる。
「一度診療所に来てください。
で、この子は?」
コール先生がビャクヤを見つめる。
「この子は迷子のようで」
キリト様が答えると、コール先生は彼女を起こさないように診察してくれた。
「ふむ。痩せてはいるが重大な問題ななさそうですな。
この子も出来れば連れて来てください」
「分かりました」
私達は頷いた。
先生を見送る。
「ムギ、子供が出来たのか?」
「うん、そうみたい」
「やったな!」
キリト様が私を抱き締める。私は彼を見つめた。
「キリト様、とりあえずお昼の支度をするわ。
そろそろビャクヤを起こさないと夜眠れなくなっちゃう」
「そうだね。本当、どこの子なんだろう?」
私達にはまるで見当が付かなかった。
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