30 / 84
6
病める時も健やかなるときも
しおりを挟む
春が訪れたある日・私とキリト様の式が屋外で挙げられた。
その日はとてもいい天気で、雲ひとつなかった。春の暖かい風が吹いている。気持ちいい。
いよいよこの日が来たのだと実感した。
私は真っ白なウエディングドレスを着ている。
そのドレスは素敵だったけれど、ずっと着ているのには重たかった。
ヒールもいつもより高い物を履いている。
転ばないようにするので精一杯だ。
式は最後まで厳かだった。
私達は式で牧師様にこう尋ねられたのだった。
『病める時も健やかなる時も相手を愛せるか』と。そう問われた時、私は隣のキリト様を見た。キリト様も私を見た。
やっと好きな人と一緒になれるのだと思ったら涙が溢れた。
キリト様も泣いていた。
私達に迷いはなかった…と思う。
『誓います』というたった五文字の言葉は私達に重たくのしかかってきた。
私達はいつの間にか手を繋いでいた。
温かいキリト様の手が私の手を握ってくれている。それが嬉しかった。
私は今日からこの人と生きていくのだ。
紬も私の中で幸せそうにしていた。
キリト様が私の額に誓いのキスをしてくれた。
私は明日、スリシアに向かう。
いよいよキリト様との生活が待っている。
私達のために、新居が用意されているのだと伯爵様から聞いて、私は驚いた。
キリト様には私と同じく兄弟が多くいるようだ。だからこその新居らしい。
伯爵様にはよくお礼を言わなければならない、とお父様にも言われている。
新しいおうち、どんなところかな。
なんだか楽しみだなぁ。
「ムギ」
キリト様に名前を呼ばれた。その瞬間、体がふわりと浮かぶ。キリト様に抱き上げられたのだ。
「わわ!愛斗…!」
「むぎ、俺達ようやく一緒にいられるな!」
「うん。僕達結婚しちゃったもんね」
「ああ」
愛斗も僕もこうして新しい人生を始めた。
だけど時々こうやって二人で話す機会がある。
キリトやツムギには感謝しかない。
ーーー
「お父様、お母様、お兄様達、行って参ります!」
「ムギ!気をつけて行けよ!」
私は皆に手を振って車に乗り込んだ。
キリト様が荷物をトランクに載せている。
お父様に買ってもらったばかりの物たちだ。
沢山買ってもらったと思ったのに、大きなバッグ一つに収まってしまった。
「ムギ、荷物はあれだけか?」
キリト様に尋ねられて、私は頷いた。
「キリト、お前がツムギさんになんでも買ってやりゃあいいのよ」
ガハハと伯爵様が笑う。(彼は私の義理の父になったのだ)
「それもそうですね」
キリト様がそう言いながら、私の頭を撫でた。
私が彼の顔を見つめると笑い返される。
「ツムギさん、我が家はな!」
お義父様の長い自慢話が始まる。
私は適当に相槌を打ちながら、キリト様に笑いかけた。
その日はとてもいい天気で、雲ひとつなかった。春の暖かい風が吹いている。気持ちいい。
いよいよこの日が来たのだと実感した。
私は真っ白なウエディングドレスを着ている。
そのドレスは素敵だったけれど、ずっと着ているのには重たかった。
ヒールもいつもより高い物を履いている。
転ばないようにするので精一杯だ。
式は最後まで厳かだった。
私達は式で牧師様にこう尋ねられたのだった。
『病める時も健やかなる時も相手を愛せるか』と。そう問われた時、私は隣のキリト様を見た。キリト様も私を見た。
やっと好きな人と一緒になれるのだと思ったら涙が溢れた。
キリト様も泣いていた。
私達に迷いはなかった…と思う。
『誓います』というたった五文字の言葉は私達に重たくのしかかってきた。
私達はいつの間にか手を繋いでいた。
温かいキリト様の手が私の手を握ってくれている。それが嬉しかった。
私は今日からこの人と生きていくのだ。
紬も私の中で幸せそうにしていた。
キリト様が私の額に誓いのキスをしてくれた。
私は明日、スリシアに向かう。
いよいよキリト様との生活が待っている。
私達のために、新居が用意されているのだと伯爵様から聞いて、私は驚いた。
キリト様には私と同じく兄弟が多くいるようだ。だからこその新居らしい。
伯爵様にはよくお礼を言わなければならない、とお父様にも言われている。
新しいおうち、どんなところかな。
なんだか楽しみだなぁ。
「ムギ」
キリト様に名前を呼ばれた。その瞬間、体がふわりと浮かぶ。キリト様に抱き上げられたのだ。
「わわ!愛斗…!」
「むぎ、俺達ようやく一緒にいられるな!」
「うん。僕達結婚しちゃったもんね」
「ああ」
愛斗も僕もこうして新しい人生を始めた。
だけど時々こうやって二人で話す機会がある。
キリトやツムギには感謝しかない。
ーーー
「お父様、お母様、お兄様達、行って参ります!」
「ムギ!気をつけて行けよ!」
私は皆に手を振って車に乗り込んだ。
キリト様が荷物をトランクに載せている。
お父様に買ってもらったばかりの物たちだ。
沢山買ってもらったと思ったのに、大きなバッグ一つに収まってしまった。
「ムギ、荷物はあれだけか?」
キリト様に尋ねられて、私は頷いた。
「キリト、お前がツムギさんになんでも買ってやりゃあいいのよ」
ガハハと伯爵様が笑う。(彼は私の義理の父になったのだ)
「それもそうですね」
キリト様がそう言いながら、私の頭を撫でた。
私が彼の顔を見つめると笑い返される。
「ツムギさん、我が家はな!」
お義父様の長い自慢話が始まる。
私は適当に相槌を打ちながら、キリト様に笑いかけた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
【完結】スクールカースト最下位の嫌われ令嬢に転生したけど、家族に溺愛されてます。
永倉伊織
恋愛
エリカ・ウルツァイトハート男爵令嬢は、学園のトイレでクラスメイトから水をぶっかけられた事で前世の記憶を思い出す。
前世で日本人の春山絵里香だった頃の記憶を持ってしても、スクールカースト最下位からの脱出は困難と判断したエリカは
自分の価値を高めて苛めるより仲良くした方が得だと周囲に分かって貰う為に、日本人の頃の記憶を頼りにお菓子作りを始める。
そして、エリカのお菓子作りがエリカを溺愛する家族と、王子達を巻き込んで騒動を起こす?!
嫌われ令嬢エリカのサクセスお菓子物語、ここに開幕!
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる