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病める時も健やかなるときも

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春が訪れたある日・私とキリト様の式が屋外で挙げられた。

その日はとてもいい天気で、雲ひとつなかった。春の暖かい風が吹いている。気持ちいい。
いよいよこの日が来たのだと実感した。

私は真っ白なウエディングドレスを着ている。
そのドレスは素敵だったけれど、ずっと着ているのには重たかった。
ヒールもいつもより高い物を履いている。
転ばないようにするので精一杯だ。

式は最後まで厳かだった。

私達は式で牧師様にこう尋ねられたのだった。

『病める時も健やかなる時も相手を愛せるか』と。そう問われた時、私は隣のキリト様を見た。キリト様も私を見た。

やっと好きな人と一緒になれるのだと思ったら涙が溢れた。
キリト様も泣いていた。
私達に迷いはなかった…と思う。

『誓います』というたった五文字の言葉は私達に重たくのしかかってきた。
私達はいつの間にか手を繋いでいた。
温かいキリト様の手が私の手を握ってくれている。それが嬉しかった。
私は今日からこの人と生きていくのだ。
紬も私の中で幸せそうにしていた。
キリト様が私の額に誓いのキスをしてくれた。


私は明日、スリシアに向かう。
いよいよキリト様との生活が待っている。
私達のために、新居が用意されているのだと伯爵様から聞いて、私は驚いた。

キリト様には私と同じく兄弟が多くいるようだ。だからこその新居らしい。
伯爵様にはよくお礼を言わなければならない、とお父様にも言われている。

新しいおうち、どんなところかな。
なんだか楽しみだなぁ。

「ムギ」

キリト様に名前を呼ばれた。その瞬間、体がふわりと浮かぶ。キリト様に抱き上げられたのだ。

「わわ!愛斗…!」

「むぎ、俺達ようやく一緒にいられるな!」

「うん。僕達結婚しちゃったもんね」

「ああ」

愛斗も僕もこうして新しい人生を始めた。
だけど時々こうやって二人で話す機会がある。
キリトやツムギには感謝しかない。

ーーー

「お父様、お母様、お兄様達、行って参ります!」

「ムギ!気をつけて行けよ!」

私は皆に手を振って車に乗り込んだ。
キリト様が荷物をトランクに載せている。
お父様に買ってもらったばかりの物たちだ。
沢山買ってもらったと思ったのに、大きなバッグ一つに収まってしまった。

「ムギ、荷物はあれだけか?」

キリト様に尋ねられて、私は頷いた。

「キリト、お前がツムギさんになんでも買ってやりゃあいいのよ」

ガハハと伯爵様が笑う。(彼は私の義理の父になったのだ)

「それもそうですね」

キリト様がそう言いながら、私の頭を撫でた。
私が彼の顔を見つめると笑い返される。

「ツムギさん、我が家はな!」

お義父様の長い自慢話が始まる。
私は適当に相槌を打ちながら、キリト様に笑いかけた。
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