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夏休み初日

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「ふわああー、ねっむー」

ユイ兄様が欠伸しながらやって来た。
今日から夏休み。昨日たっぷり夜更しして大好きな三度寝を楽しんでいたんだろうな。
ユイ兄様は寝るのが大好きだから、当然、長期休暇も大好きだ。
(夏休みはキャンプがあるから違うかもしれないけれど)

時々、眠り姫もびっくりするくらいスヤスヤ寝てるので、ユイ兄様は天性の眠り王子だと思う。キスでも多分起きないだろうし。

「おはよう、ユイ兄様」

「ムギ、おはよ。荷物広げて何してるん?お店屋さんごっこ?」

「キャンプの準備だよ」

ユイ兄様が顔をしかめる。わぁ、本当にキャンプが嫌なんだな。

「そっか、明後日には出発だもんね」

「ユイ兄様の分も支度してあるよ」

「うん、ありがとう」

ユイ兄様、突然元気がなくなったな。
大丈夫かな?
ポム、とユイ兄様は突然両手を叩いた。

「あ、でもキリトに会えるのか」

「そうだよ。ユイ兄様にも会ってもらいたい」

「なに?ムギはキャンプに行くのか?」

トーマス兄様がやってくる。公務から帰って来てたんだ!

「トーマス兄様!お帰りなさい!」

「ただいま。二人共、頑張れよ」

わしわしと頭を撫でられる。
トーマス兄様はいつも元気だなぁ。
他のお兄様達にも話は通っていたようで、皆、それぞれ私達の様子を見に来た。

ユイ兄様もキリト様に会えるのが楽しみだったらしい。すごく張り切っている。

「なぁなぁムギ。キリトってどんなやつ?すぐ分かる?」

私はキリト様のことを思い出した。
真っ先に思い浮かぶのは、黒い眼帯だ。

「キリト様は眼帯をしているの。
だからすぐ分かると思う」

「あぁ、戦争で怪我したんだってね」

「うん。怪我してない方は翠色の綺麗な瞳なの。宝石みたいだよ」

「へー。ならすぐ分かりそうだな」

ユイ兄様が何かぶつぶつ言ってる。

「ユイ兄様、悪戯は絶対にやめてね?」

「ひゃい」

一応釘は刺しておいたし大丈夫そうだ。

「キリトに手紙書かないん?ムギがキャンプに行くって知ったら喜ぶっしょ?」

「書きたいけど、本当なら儀式の時だけ会える事になってるから」

「儀式なんてやめちゃえばいいのにね」

私もユイ兄様に大賛成だ。
今のキリト様は揺れている。できることなら側にいて支えたい。
でもキリト様は嫌がるかなぁ。

「ムギがいればそれだけで違うと思うし、そんなに気負わなくて良いんじゃね?」

「うん、そうだよね」

私は深呼吸した。
私が力み過ぎていたらキリト様の足を引っ張りかねない。

キャンプの準備も無事に終わったし、後は行くだけだ。
頑張ろう!
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