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奥様はメイドさん

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今日の朝、カーテンを開けて窓から外を見ると雪がうっすら積もっていた。都心に近いここで積雪は珍しい。僕は車で出勤するからいいとして、問題は。

「んん…眠い…」

ダイニングテーブルの前に座って、ひたすら眠気と戦っている獅子王は今日も可愛い。この子は僕の大事なパートナーだ。彼は都内にあるメイド喫茶で働いている。雪が降ると都内の電車は安全確保のために運転を停止する。獅子王は普段、電車で通勤している。つまり電車が止まると通勤が出来ない。僕は温かいスープの入ったマグカップを獅子王の前に置いた。これで体を温めて目を覚まさせる作戦だ。基本的に家事は二人で交代で行っている。その方がお互い楽だからだ。できる方ができる時にやるというルールもある。気が付いたら掃除とかこまごまとしたことをする。一緒に暮らすうちに自然とそうなった。あとは外食だったり、仕事帰りに買ってきた物を食べたり、たまにカレーを獅子王が作ってくれるからそれを食べている。正直な話、これが僕たちに出来る生活だ。自炊にこだわってる人とかいるけれど、僕たちには向いていない。貯金もしたほうがいいんだろうな。ううん…大人って大変だ。

「獅子王、今日は僕と車に乗っていきなよ」

「キョウはそれで大変じゃないか?」

「車だもん。大丈夫。でも少し早めに出るよ」

「ありがとう」

獅子王ににっこり笑われると未だにドキドキしてしまう僕がいる。可愛いって本当罪だよね。

「今日からクリスマスイベントなんだぜ!お客様とじゃんけん大会をするんだ!」

獅子王の勤めているメイド喫茶へ向かう最中、獅子王が嬉しそうにそう報告してきた。楽しそうだし、サンタメイドさんな獅子王、絶対に可愛い。
クリスマスかぁ、もうそんな時期なんだな。獅子王になにか、プレゼントをあげたいなぁ。何がいいのかはさっぱり分からないけれど。やっぱり可愛いものがいいのかな?

獅子王は僕からもらったものをものすごく大事にしてくれる。僕も獅子王がくれたあれやこれやを大事にしている。獅子王のくれたプレゼントは僕のために必死に選んでくれたものだ。それがすごく嬉しい。

プレゼントは値段じゃない。どうゆうものをあげたら喜んでくれるかなっていう選ぶワクワク感や真剣さが感じられるようなプレゼントを僕としては相手にあげたいよね。もちろん貰う方にもワクワクして欲しい。それなら、サプライズのプレゼントも別に用意しよう。うへへ。

「獅子王は今欲しいものある?」

「え…?」

あれ?目眩ましのために、さりげなく聞いたつもりだったけど駄目だったかな?もしかしてバレました?

「キョウ、それならお前だって欲しいものを言うんだぞ」

そんな…僕の欲しいものなんて一択じゃん。

「獅子王一日独占権をください」

「は…はぁぁあ??!」

獅子王が真っ赤になっている。
え、駄目だったのかな?僕は構わず続けた。

「獅子王と温泉入って、それで一緒にお散歩しながらイルミネーション見て、お部屋でイチャイチャしたい」

「ん…うん、別にいいけど…それ…ほぼ普段と同じじゃないか?」

え?いいの?ヤッタ!獅子王が首を傾げているけど僕は全然気にしなかった。

「じゃあ次は獅子王の番ね」

僕はワクワクしながら獅子王の言葉を待った。

「んと…年明けにプロモーションの動画に出るんだけど、そのブランドのワンピが欲しい」

「え?それだけ?」

「ん…」

獅子王がこくん、と頷く。

「分かった。また何か欲しくなったら言うんだよ?」

「うん」

獅子王がにこーっと笑う。ん…待てよ?

「あれ?獅子王、プロモーションの動画って…」

「店長が始めたんだ!ようつべ!あれ、面白いよな!ウチの店の動画撮って載せてる!俺も出てるんだ!」

えー、知らなかった!!僕も後でチェックしないと。そんなことを思っている間に、獅子王の店の裏にやって来ている。

「じゃあ、行ってくるな!」

「もし帰りも困るようなら連絡、頂戴ね」

「あぁ!ありがとう!」

僕たちはキスし合った。獅子王が手を振っている。僕も振り返して車を発進させた。獅子王とこうやって暮らし始めてもう2年か。そうだ、職場に着いたら、温泉宿の予約取ろうっと。るんるん。
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