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紗輝の長い1日3

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遊園地に入った俺たちは、手始めにお化け屋敷にいってみることにした。
まぁ、一番待ち時間が短かったからね。

「まりん、お化け屋敷初めてー!
怖いのかなぁー!」

「紗輝くん、すごく怖くなってきたぞ」

平気そうなまりんちゃんと、すごく怯えているセンセの対比がなんだかおかしい。

「俺が出口まで引っ張ってってあげる。
怖かったら目閉じてなよ」

センセと手を繋げるチャンスを逃す俺じゃない。

「紗輝くん、絶対離さないでくれよ」

「うん、約束する」

センセ可愛いー!

「まりんもいるから大丈夫よー」

「ありがとうな、まりんちゃん」

中に入ってみると、そういう演出なのか空気がひんやりしていた。
なにより暗い。
これは、結構怖いかも。
まりんちゃんも俺の背中にしがみついている。

センセといえば、恐る恐る周りを見回している。

「こ、怖いな紗輝くん。
なにか出そうだ」



ガタン、となにかが倒れる音がする。

「きゃあ!」

まりんちゃんは悲鳴をあげて俺にぎゅっと抱き付いてきた。

「センセ、大丈夫?」

センセは固まっている。
あー、こりゃ早く出口まで行かないと。
二人の腕を掴んで俺は歩き出した。

怖くない訳じゃないけど、出口まで連れていく約束してるからね。
日の光が見えたときはさすがにホッとした。

「センセ、出口だよ」

「ありがとうな、紗輝くん」

「まりん、喉乾いたー」

「どこかで休憩しようか」

「だね」

ガイドマップを見て確認すると、近くにフードコーナーがあるようだった。
そこに向かうことにする。
センセとまだ手を繋いでいるわけだけど、離さなきゃやっぱダメだよね?!

「ね、センセ、手」

センセはすぐ気がついて真っ赤になった。
でも繋いだ手はそのままだ。

「繋いでてもいいですかね?」

俺の言葉にセンセは頷いてくれた。
フードコーナーでジュースを買う。
冷たいジュースが美味しい。

「ね、次はどうしよう?」

「まりん、ジェットコースターに乗りたいな!」

「!!」

センセ、顔がひきつってる。
高いとこ苦手だったような。

「センセ、大丈夫?
ジェットコースターやめとく?」

「いや、乗るぞ。
俺だってジェットコースター乗ってみたいんだ」

「わかった」

センセ、チャレンジャーだな。
ジェットコースターはここの一番人気のアトラクションだ。
なんていったって、二回もループする特別仕様だ。
列に三人で並ぶ。
その間もジェットコースターに乗っている人たちの歓声と悲鳴が何度も聞こえた。

「すごい叫んでるな、みんな」

センセの顔が少し青い。
大丈夫かな?

「真ちゃん、怖くないおまじない教えてあげるー」

「本当か!」

二人は楽しそうにおまじないをやり始める。
仲いいよね。

「ほら、紗輝くんもやるんだぞ」

「はーい」

三人で話しながら並んでいたらもう少しで順番がやってきそうだ。

「楽しみだねー」

まりんちゃんは目をきらきらさせている。
センセも覚悟を決めたようだ。

「紗輝くん、もし俺の身に何かあったら頼むな」

そういう覚悟だった。
俺はおかしくなって笑ってしまう。

「同じジェットコースターに乗ってたら俺にもなにか起きるからね?」

「ホントだ!大変だ!」

センセは焦り始めたけど順番が来て、乗るように促される。

コースターの中でセンセはぎゅっと固まっているようだ。

「ほら、センセ。ここシャッターチャンスあるから」

後ろから言ってもセンセはぴくりともしない。

「紗輝ちゃん、真ちゃん大丈夫かな?」

センセの隣りに座っているまりんちゃんが心配している。
そんなことを言っている間にコースターは走りだす。
うわ、思ったより早い。
体が座席に押し付けられる。
ガタガタガタガタとコースターはじりじり上がっていく。
周りを見ると高くてくらっとした。
目の前を見るとカメラがある。
落ちる直前に撮られるやつだ。

「センセ!シャッターチャンスきたよ!」

「紗輝くん、俺はもうだめだ」

それからジェットコースターはあっという間だった。
センセはぐったりしてしまっている。

「大丈夫?センセ」

地上をふらふらしながら歩いていたセンセがようやく顔をあげる。

「紗輝くん、怖かった!!」

涙目のセンセが可愛いとは言えず、俺はそっと目元の涙を拭っておいた。

「ねぇねぇ、まりんお腹空いた!」

腕時計を見ると、もう12時を回っている。

「俺もどこかで座りたいな」

センセもこう言ってるし、レストランはどこだっけ?
ガイドマップを見るとレストランは水族館の中にあるようだ。

「じゃあ、お昼食べたら水族館みよっか」

二人は楽しそうに頷く。
やっぱり来てよかったなぁ。
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