子猫はご主人様の膝の上で眠りたい

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千晶に

真司がスマートフォンでメッセージを送った相手。それは友人である倉沢千尋だった。千尋はメッセージを送るとすぐに返信をくれる。
今日もそうだった。
真司は彼に千晶に渡すプレゼントについて相談していた。

『あきにプレゼントか。
ホワイトデーのお返しなら何か手作りの物も良いかもしれない』

千尋がこんな提案をしてくれた。
そんなメッセージと一緒にURLも送られてくる。
それを開くと、手作りのビーズアクセサリーの教室が開催されているということが記されている。

『時間はかかるかもしれないけれど、あきは可愛い物が好きだからきっと喜んでくれると思う』

千尋は他にも何点かめぼしいものを教えてくれた。
彼の情報網の広さには毎回驚かされる。

「ありがとう、千尋さん」

そう返すと、可愛らしいスタンプで返ってきた。

(このビーズアクセサリー、すごく可愛い…よな。大好きなペンギンのアクセサリーを作れば、千晶なら絶対喜ぶだろうし、よし)

そっとオンラインで教室の予約をした真司である。
千晶はブログを夢中で打っていて真司の行動に気づいた様子はない。

「あのさ、千晶」

「どうしたんですか？」

千晶が首を傾げてこちらを見上げてくる。

「ちょっと千尋さんが俺に用があるんだって。明日帰りが遅くなる…かも」

「用事…ですか？」

千晶の表情に不安が一瞬翳る。
どうやら千晶は時折不安になってしまうらしい。
そんな千晶を不安にさせたくなくて、真司は彼を優しく抱き寄せた。

「大丈夫、明日だけだから」

「すみません、真司さん」

千晶の瞳には大粒の涙が溜まっている。

「俺、いつも束縛みたいなことして」

千晶にもよく分かっているのだ。真司は涙を指で拭ってやった。

「大丈夫だよ、千晶。
俺はそんな千晶も大好きなんだ」

そう言って口付けたら千晶がしがみついてくる。

(千晶は本当に子猫みたいだよな。可愛いし小さいし、愛したくなる)

千晶を横抱きにしてしばらく二人でくっついていた。
ナキも近寄って来る。

「俺、まだ怖いんです。
真司さんを失くすんじゃないかって」

千晶が泣き声で言う。千晶は幼い頃、大好きな兄を事故で亡くしている。
その深い傷を千晶は必死に治そうとずっと戦っているのだ。

「大丈夫だよ、千晶。
分かってるからさ。俺、すごく気を付けるから」

「…はい！」

二人は再び深い口付けを交わすのだった。
何度こうして唇を重ねても、その度にドキドキが止まらなくなる。

(俺は千晶が好きなんだな。
これからもずっと大事にしたいんだ)

「真司さん、大好きです」

千晶がようやく笑ってくれた。