異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ

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おまけ

シャナととびすけの冒険

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「シャナお兄ちゃん!大変だよ!!」

いつもの東屋でシャナは自分の剣を手入れしていた。女の子たちは他の場所で遊んでいるらしく、ここにはいない。とびすけは興奮しているのかいつもより早口だ。

「どうした?とびすけ」

「宝の地図だよ!エンオウおじさまの家にあったんだって!」

「宝の地図…か」

シャナはとびすけから、それを受け取り眺めた。地図はそんなに大きくない。二人で身を寄せ合って見る。紙は古びて茶色く変色している。破れている箇所もあった。

「ねえ、宝を探しに行こうよ」

「まあ待て、とびすけ。こういうのは情報収集が大事だ。まずこの地図がどこを示してるのか、それを探らないとな」

確かにその通りだと、とびすけはシャナを見つめた。兄はいつも冷静でカッコいい。

「シャナお兄ちゃんはすごいなぁ」

心の声が思わず声に出ていた。シャナがそれに笑う。

「俺を褒めてもなんも出んぞ」

とびすけはそれに笑った。こんな兄が大好きだ。血の繋がりはないが、信頼できる優しい兄である。

「とりあえずかあさんに聞いてみよう。何か知っているかもしれない」

「うん!」

二人は地図を片手に屋敷に戻った。屋敷に戻ると、ルネシアは書き物をしていた。占いをしていたのだろう。

「母さま…」

とびすけが声を掛けると、ルネシアが振り返って笑った。

「どうしたの?二人共。おいで」

とびすけは嬉しくなってルネシアに駆け寄って抱き着いた。シャナが変わらず冷静に言う。

「エンオウおじさんがこの地図を持ってきたって」

「あぁ。それ竹やぶの地図なんだよ」

竹やぶというのは、龍の里の一番上の階層にある。龍の里で唯一、ヒトの手が加えられていない場所だった。

「わぁ、それなら絶対にお宝があるね!」

とびすけが顔を輝かせる。ルネシアは「ん?」と思ったが、子どもたちに任せてみることにした。

「二人共、竹やぶに行くの?ならお遣いもお願いしていい?」

「うん!」

「姉さんに占いの結果を渡してほしいの。無くさないようにね」

ルネシアは占いの結果が書かれた紙を封筒に入れた。それをシャナに渡す。

「分かった。確実にルアナ様に渡すよ」

「お願いね」

「行こう!お兄ちゃん!!」

「あぁ!」

二人はすぐさま駆け出していく。それをルネシアは見送った。一人呟く。

「宝ってなんのことだろ?」

✢✢✢

二人は一番上の階層に向かうため、石造りの階段をひたすら登っていた。この階段はいつ通ってもきつい。
全部で1299段ある。

「お兄ちゃ…はぁ、はあ、疲れた」

「とびすけ、ゆっくりでいいぞ」

いつもとびすけは全速力で階段を駆け上がろうとするので、必ず息が切れて途中で失速する。シャナはそんなとびすけをいつも励ます。とびすけもそれに応えるべく毎回必死だ。

「あと10段」

ゼイゼイ言いながらとびすけは階段を登りきった。世の中にはこの階段を息を切らさず登るヒトがいるのだと父親から聞いている。とびすけははじめ聞いた時、信じられなかったが、エンオウからも同じような話を聞き、信じた。
シャナがとびすけの手を優しく握る。

「行くぞ」

「うん」

二人はルアナの屋敷に向かった。
ルアナの屋敷は特別大きい。龍の里のデータが全てここで管理されているのだ。二人は玄関の引き戸を開けて中に入った。本来なら子供がここに立ち入るのは許されていない。だが、ルネシアと翔吾の子供たちはお遣いの時だけ入ることを許されている。

「こんにちは、お邪魔します!」

とびすけが声を掛けると中の者が返事をした。

「坊っちゃんたちでしたか。ルアナ様がお待ちですよ」

え、ととびすけは驚いた。いつもならここでお遣いは終わりである。まさか自分たちが中に入れるなんてと、とびすけは少し誇らしい気持ちになった。
二人は靴を脱いで中に入る。奥の間にルアナはいた。シャナととびすけは彼女の前できちんと正座する。

「シャナ、とびすけ。占いの結果を運んでくれてありがとう」

ルアナが笑う。彼女の笑顔は滅多に見られるものではない。とびすけはそれにドキドキした。ちらりと隣を見るとシャナはいつも通りに見える。やはり彼はいつも冷静でカッコいい。とびすけはちらちらと兄を見つめた。

「二人にお菓子をあげましょう」

ルアナがくれたのは金色の飴玉だった。口に放ると甘い。

「ふぁ、美味しい」

飴玉をころころ口の中で転がすのが楽しい。飴は少しずつ小さくなっていく。いよいよなくなってしまう。出してもらった茶を飲み干し、二人はルアナに頭を下げた。

「ごちそうさまでした!」

屋敷を出て、二人は目的地である竹やぶに入った。
竹やぶには不思議な伝説がいくつも残っている。光る竹の中に女の子がいた、だとか、竹やぶに入ったきりその人が戻ってこないだとか、不思議なモンスターを見ただとか、挙げればキリがない。シャナは地図を見ている。竹やぶの真ん中に赤いバツ印が書かれている。おそらく宝はこれだろう。

「こっちだ、おいで。とびすけ」

「うん!」

二人は竹やぶの奥に足を踏み入れた。途中でシャナが竹に傷を入れている。帰り道を間違えないようにだ。
それだけ竹やぶは広い。しばらく歩いたが景色は変わらない。とびすけはだんだん怖くなってきていた。空模様が怪しい。

「シャナお兄ちゃん、雨が降りそうだよ」

「ああ。もう少し行けば小屋があるみたいだ。急ごう」

二人が更に歩くと、シャナの言った通り、古びた小屋があった。中に入ると、ぎいと床が軋む。今にも抜け落ちてしまいそうだ。雨が降ってきた。バラバラと小屋の屋根に叩きつけるような音がする。

「お兄ちゃん、怖いよ」

「大丈夫だ。ただの雨だよ」

「うん」

シャナにとびすけが抱き着くと背中を撫でられる。いつまでそうしていたか分からない。とびすけはハッと目を覚ました。いつの間にか眠ってしまっていた。

「起きたか?」

「ごめん、寝てた」

「俺もさっき起きた。雨もやんだし行こう」

二人は小屋を出て竹やぶの中心地に向かった。だが、そこにあるのはただの井戸だ。

「あれー?宝は?」

とびすけはキョロキョロしたが、宝らしきものは見当たらない。

「多分、この井戸が宝なんだろうな」

「え?!」

シャナが地図を示す。そこには掠れているが文字が書かれている。その文章には、とびすけがまだ知らない単語が使われている。シャナが噛み砕いて説明してくれた。

「この井戸は雨が降らなかった場合に備えて昔の人が作ったらしい。この井戸から汲み上げられる地下水っていう有限資源は宝なんだよ」

とびすけにはなんのことだかさっぱりだった。

「お水って宝なの?」

「あぁ。そうだぞ、水はどこにでも絶対にあるわけじゃないからな」

「そうなんだ」

「とびすけー!シャナー!」

翔吾の声がする。心配して探しに来てくれたのだろう。

「とうさーん、おーい!」

シャナの声に気が付いた翔吾が駆け寄ってくる。

「良かった、二人共」

「父さま!僕たちお宝見つけたよ!」

「とっておきのだ」

とびすけとシャナはそう父に報告したのだった。

おわり
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