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「二人きりなんて、久しぶりだね」

ペンションに滞在して三日目。子どもたちは驚異の回復力を見せている。若いって素晴らしいな。俺はルネと二人、夕焼けが照らす砂浜を並んで歩いていた。たまにはデートもしなくちゃな。これからもずっと、ラブラブでいたいし。

「あのね、ショーゴ」

ルネが急に立ち止まったので俺は振り返った。波の音が心地良い。

「君は、魔王城で見たあの世界のこと、聞きたい?君がなんでこの世界に召喚されたか。マヨイとシャナがどうして赤ん坊だったのか。僕に神様が教えてくれたの」

「ルネはそれを俺に話したい?」

ルネの視線が揺れる。でもそれは一瞬のことだった。

「……君に話すことが正しいかは分からない。けど、君には知っておいて欲しい。僕はまだ君の子供を産みたいから」

「ルネ…それは」

つい顔が熱くなるな。ルネも真っ赤な顔をして微笑んだ。

「本当のことなんだ。僕はショーゴが大好きだから」

「うん。俺もルネが大好きだよ」

俺たちはずっと一緒だ。どちらからともなく抱き合った。

「話してくれる?俺のこと…」

「…うん」

ルネは確認するように話し出した。

「ショーゴはこの世界、モアグリアを救うために召喚された。その時にショーゴ自身の特別な力で元の世界にいたマヨイとシャナの時を過去に戻したんだ。本当ならマヨイとシャナは君と同じくらいの年齢で召喚されていたんだよ。でも君のお陰でそうはならなかった」

もしそうなっていたら…。俺の気持ちを察してなのかルネが頷く。

「もしマヨイとシャナの時が戻っていなければ、戦いは不可避だった。沢山命が失くなって、沢山の人が悲しんだり苦しんだと思う」

「俺がこの世界に召喚された意味があったんだね」

ルネが笑う。

「君が君のままでいてくれて僕は嬉しい。ショーゴはすごいと思う」

俺の目から熱いものが溢れた。

「ショーゴ、大好きだよ。そんな君だから大好きなんだ」

ルネが俺の目元を指で拭う。俺は言葉が出てこなかった。ルネが俺の腕を抱き寄せる。

「ショーゴ、僕は君ともっとこの世界を巡りたい」

「うん、俺もだよ。あちこち行こう」

「騎士の仕事もしなくちゃね」

そうだ、俺は騎士だったな。
俺はルネの手を取って跪いた。ルネが目を丸くしている。俺はルネを見上げて笑った。

「ルネ姫、私はあなたに忠誠を誓います」

そっと手の甲に唇を落とす。

「そんなのやだー!ちゃんと唇にチューしてー!」

ルネがそう言って怒るから笑ってしまった。俺は立ち上がってルネを抱き寄せる。

そっと彼の唇を奪ったのだ。

「父さまー!母さまー!」

ふと気が付くと向こうから子どもたちが駆け寄ってくる。

「僕たちも一緒にお散歩する!」

とびすけが俺の腰に抱き着いてくる。可愛い。

「置いていっちゃイヤ」

ルーもだ。ルネがルーの頭を撫でる。そして子どもたち全員に尋ねた。

「みんな、海はもういいの?」

「海も楽しいけど、とうさんとかあさんのがいいに決まってるだろ」

「そうよ」

シャナとマヨイが言う。

「あたしも父さまと母さまと一緒にいる!」

チサトが言う。子どもたちが可愛すぎるな。

「ね、母さま。僕に弟ができるの?」

とびすけがルネに抱きついて、きらきらした笑顔で言った。この子たちはどこから話を聞いてたんだ?

「まだ分からないけど、とびすけは弟が欲しいの?」

「あたしは妹が欲しい」

ルーまでなんか言い出したぞ。
ルネに困ったような顔で目配せされた。俺は子どもたちの頭を撫でる。

「みんなが優しいお兄さんとお姉さんでいたらいつか赤ちゃんはやって来るから」

「本当?!」

いや、頑張るのは主にルネだけど。ちらっとルネを見たら噴き出された。

「おとーさんはしょーがないなー。でもおかーさんに任せなさい」

ルネの言葉に、子どもたちが歓声をあげる。
俺たちは手を繋いでペンションに続く道を歩いている。
こうしてずっと幸せに暮らしていけるように俺が頑張らないとな。
それがこの世界で俺ができることだ。
愛してるよ。

おわり
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