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次の日の早朝、俺は騎士の宿舎で歯を磨いている。ルネも俺の真似をして磨いている。どうやら、歯磨き粉が美味しくて仕方がないらしい。龍の牙は人間になってもすごく鋭いから、磨くのが難しいとルネはぼやいている。うっかりすると歯ブラシが壊れてしまうのだそうだ。龍の歯強いな。
「おはようございます、ショーゴ殿」
ヴァンがタオルを手にやって来た。
「おはよう、ヴァン」
俺は口をすすいで言った。
「今日はどちらへ?」
「うん、汽車に乗って西二番駅に行こうかなって」
「過去の線路や駅舎も次々に復旧していますからね」
そうなのだ。モアグリアの建設業がいちいちすごすぎる。どうやら専用の魔法道具なるものがあるらしい。ファンタジーが過ぎるな。
「コロニーは魔法道具で溢れかえっていましたから」
「え?ヴァンはコロニーに行ったことあるの?」
俺の言葉に、ヴァンがはにかみながら頷く。
「兄の挙式で一度。もう随分前ですが、当時もすごかったんですよ」
魔法道具、恐るべし。
「西二番駅なら「れんびんの神殿」がありますね。その近くにしっと、じょうあい、かぁ。もしかしてしばらく帰ってこられないのですか?」
「うん。周れるだけ周ってくるつもり。あとは「かがやきの神殿」ってのがあるらしいんだけど、それだけ情報がなくて」
「あぁ!モアグリアの怪談の一つですね」
なんだそれ?
「僕もそれ知ってる!」
ルネも歯を磨き終えたらしいな。二人が話したいという顔をしていたので、俺は先を促した。ヴァンとルネが見つめ合う。どちらが話す?となったらしい。ヴァンが口を開いた。
「やはり神殿を巡ったことのある龍姫様からお願いします」
ルネが楽しそうに言う。
「かがやきの神殿はね、ないんだよ?」
「そうなの?」
ルネがヴァンに目配せするとヴァンも笑った。
「はい。怪談によれば、ある条件を満たせば神殿が出現すると言われていましたが、未だに誰も見つけられていません」
「じゃあ名前が付いているのはなんで?」
俺の疑問に二人はお互いを見合った。せーの、で二人が言う。
「はじまりの神殿に戻ってくるから!」
ど、どういうことだ?俺がポカンとしていると、二人にそのうち分かるからと説き伏せられてしまった。そういうものなのか?
「ショーゴ!汽車が逃げちゃうよ!早くしよ!」
「あぁ!」
俺たちは慌ててここからの最寄り駅「西三番駅」に向かった。少し見ない内に駅舎の様子が随分変わっている。なにが変わったって、ヒトがいるのだ。切符を購入するヒトや端末を見るヒト、電車を待つ人様々である。
「前とは全然違うよね」
「そうだね」
端末を改札機に当てると通過できる。ルネの分も入っているようだ。いつの間にか無料じゃなくなってるのは仕方がないよな。
汽車が蒸気を噴き出しながらやってきた。ルネが俺にしがみついてくる。怖いのかな。初めて見た時に怖い思いをしたから余計だろう。
「これはボリ乗ってなさそう」
「ボリさん、元気かな?」
「私ならここにいるが?」
車内で堂々と双剣を構えているボリさん。なにやってんの?あのヒト!!
あれ?なんか、みんな端末でボリさんを撮っている。
「ボリ、大人気だね!」
ルネがのんびり言う。いや、大人気だけども、ちょっと違うような?汽車の発車時刻が近付くと、汽笛が鳴った。皆が大人しく座席に収まる。
「ショーゴ、貴殿に再び相まみえようとは」
「あ、もう戦いませんからね」
チッと舌打ちされる。ボリさん、どんだけ戦闘狂なのさ。
「で、今日はどこまで?」
「隣の駅です」
「む、西二番か。まだ大型モンスターがいると聞いているが」
「え?そうなんですか?」
チラチラとボリさんに見つめられる。
あれ?これどこかで見たことが…。
俺は人気RPGのあの場面を思い出していた。
【ボリはなかまになりたそうにこちらをみている▼】
普通なら選べるんだけど、この場合もう選択肢はないような気がするな。
「ボリさんも来ますか?」
「貴殿も分かっているね!私がいればどんな凶暴なモンスターだって一撃さ!」
「ショーゴ、ボリ大丈夫かな?」
こそっとルネに耳打ちされたけどもう仕方ないよな。ボリさんは喜々として双剣の手入れを始めている。
というか、このヒトの仕事って結局なんなんだ?フラフラしてる俺が言える立場じゃないけど。
俺の視線に気が付いたのかボリさんが照れ臭そうに笑った。
「この双剣、実は特注で」
あ、全然察してなかった。しばらくボリさんは自分の武器の自慢をしていた。実際強い人だから勉強にはなるよな。
「西二番には巨大な熊型のモンスターがいるようで!」
あ、それニュースになってたよな。対策に匂い玉をぶつけるとかなんとか。念の為に持ってきて正解だったな。なんとなくブロリアを思い出すけど黙っていよう。駅に停車してボリさんはポーズを決めて写真に撮られていた。何ていうんだろう。そうだ、扱いがご当地ゆるキャラみたいなんだよな。うん、我ながら上手く例えたな。
「ボリー、もう行くよー」
ルネが待ちくたびれたのか呼んでいる。龍姫にはさすがのボリさんも逆らえないらしい。すっ飛んできた。
「さあさあ、これから狩りの時間ですね!」
いいえ、神殿巡りです。そうはっきり言ったら、ボリさんがしょんぼりしてる。
「エンカウントしたらよろしくお願いします」
「任せてください!」
ボリさんの機嫌が直ったな。単純でよかった。
「おはようございます、ショーゴ殿」
ヴァンがタオルを手にやって来た。
「おはよう、ヴァン」
俺は口をすすいで言った。
「今日はどちらへ?」
「うん、汽車に乗って西二番駅に行こうかなって」
「過去の線路や駅舎も次々に復旧していますからね」
そうなのだ。モアグリアの建設業がいちいちすごすぎる。どうやら専用の魔法道具なるものがあるらしい。ファンタジーが過ぎるな。
「コロニーは魔法道具で溢れかえっていましたから」
「え?ヴァンはコロニーに行ったことあるの?」
俺の言葉に、ヴァンがはにかみながら頷く。
「兄の挙式で一度。もう随分前ですが、当時もすごかったんですよ」
魔法道具、恐るべし。
「西二番駅なら「れんびんの神殿」がありますね。その近くにしっと、じょうあい、かぁ。もしかしてしばらく帰ってこられないのですか?」
「うん。周れるだけ周ってくるつもり。あとは「かがやきの神殿」ってのがあるらしいんだけど、それだけ情報がなくて」
「あぁ!モアグリアの怪談の一つですね」
なんだそれ?
「僕もそれ知ってる!」
ルネも歯を磨き終えたらしいな。二人が話したいという顔をしていたので、俺は先を促した。ヴァンとルネが見つめ合う。どちらが話す?となったらしい。ヴァンが口を開いた。
「やはり神殿を巡ったことのある龍姫様からお願いします」
ルネが楽しそうに言う。
「かがやきの神殿はね、ないんだよ?」
「そうなの?」
ルネがヴァンに目配せするとヴァンも笑った。
「はい。怪談によれば、ある条件を満たせば神殿が出現すると言われていましたが、未だに誰も見つけられていません」
「じゃあ名前が付いているのはなんで?」
俺の疑問に二人はお互いを見合った。せーの、で二人が言う。
「はじまりの神殿に戻ってくるから!」
ど、どういうことだ?俺がポカンとしていると、二人にそのうち分かるからと説き伏せられてしまった。そういうものなのか?
「ショーゴ!汽車が逃げちゃうよ!早くしよ!」
「あぁ!」
俺たちは慌ててここからの最寄り駅「西三番駅」に向かった。少し見ない内に駅舎の様子が随分変わっている。なにが変わったって、ヒトがいるのだ。切符を購入するヒトや端末を見るヒト、電車を待つ人様々である。
「前とは全然違うよね」
「そうだね」
端末を改札機に当てると通過できる。ルネの分も入っているようだ。いつの間にか無料じゃなくなってるのは仕方がないよな。
汽車が蒸気を噴き出しながらやってきた。ルネが俺にしがみついてくる。怖いのかな。初めて見た時に怖い思いをしたから余計だろう。
「これはボリ乗ってなさそう」
「ボリさん、元気かな?」
「私ならここにいるが?」
車内で堂々と双剣を構えているボリさん。なにやってんの?あのヒト!!
あれ?なんか、みんな端末でボリさんを撮っている。
「ボリ、大人気だね!」
ルネがのんびり言う。いや、大人気だけども、ちょっと違うような?汽車の発車時刻が近付くと、汽笛が鳴った。皆が大人しく座席に収まる。
「ショーゴ、貴殿に再び相まみえようとは」
「あ、もう戦いませんからね」
チッと舌打ちされる。ボリさん、どんだけ戦闘狂なのさ。
「で、今日はどこまで?」
「隣の駅です」
「む、西二番か。まだ大型モンスターがいると聞いているが」
「え?そうなんですか?」
チラチラとボリさんに見つめられる。
あれ?これどこかで見たことが…。
俺は人気RPGのあの場面を思い出していた。
【ボリはなかまになりたそうにこちらをみている▼】
普通なら選べるんだけど、この場合もう選択肢はないような気がするな。
「ボリさんも来ますか?」
「貴殿も分かっているね!私がいればどんな凶暴なモンスターだって一撃さ!」
「ショーゴ、ボリ大丈夫かな?」
こそっとルネに耳打ちされたけどもう仕方ないよな。ボリさんは喜々として双剣の手入れを始めている。
というか、このヒトの仕事って結局なんなんだ?フラフラしてる俺が言える立場じゃないけど。
俺の視線に気が付いたのかボリさんが照れ臭そうに笑った。
「この双剣、実は特注で」
あ、全然察してなかった。しばらくボリさんは自分の武器の自慢をしていた。実際強い人だから勉強にはなるよな。
「西二番には巨大な熊型のモンスターがいるようで!」
あ、それニュースになってたよな。対策に匂い玉をぶつけるとかなんとか。念の為に持ってきて正解だったな。なんとなくブロリアを思い出すけど黙っていよう。駅に停車してボリさんはポーズを決めて写真に撮られていた。何ていうんだろう。そうだ、扱いがご当地ゆるキャラみたいなんだよな。うん、我ながら上手く例えたな。
「ボリー、もう行くよー」
ルネが待ちくたびれたのか呼んでいる。龍姫にはさすがのボリさんも逆らえないらしい。すっ飛んできた。
「さあさあ、これから狩りの時間ですね!」
いいえ、神殿巡りです。そうはっきり言ったら、ボリさんがしょんぼりしてる。
「エンカウントしたらよろしくお願いします」
「任せてください!」
ボリさんの機嫌が直ったな。単純でよかった。
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