異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ

文字の大きさ
上 下
43 / 68

43

しおりを挟む
次の日の早朝、俺は騎士の宿舎で歯を磨いている。ルネも俺の真似をして磨いている。どうやら、歯磨き粉が美味しくて仕方がないらしい。龍の牙は人間になってもすごく鋭いから、磨くのが難しいとルネはぼやいている。うっかりすると歯ブラシが壊れてしまうのだそうだ。龍の歯強いな。

「おはようございます、ショーゴ殿」

ヴァンがタオルを手にやって来た。

「おはよう、ヴァン」

俺は口をすすいで言った。

「今日はどちらへ?」

「うん、汽車に乗って西二番駅に行こうかなって」

「過去の線路や駅舎も次々に復旧していますからね」

そうなのだ。モアグリアの建設業がいちいちすごすぎる。どうやら専用の魔法道具なるものがあるらしい。ファンタジーが過ぎるな。

「コロニーは魔法道具で溢れかえっていましたから」

「え?ヴァンはコロニーに行ったことあるの?」

俺の言葉に、ヴァンがはにかみながら頷く。

「兄の挙式で一度。もう随分前ですが、当時もすごかったんですよ」

魔法道具、恐るべし。

「西二番駅なら「れんびんの神殿」がありますね。その近くにしっと、じょうあい、かぁ。もしかしてしばらく帰ってこられないのですか?」

「うん。周れるだけ周ってくるつもり。あとは「かがやきの神殿」ってのがあるらしいんだけど、それだけ情報がなくて」

「あぁ!モアグリアの怪談の一つですね」

なんだそれ?

「僕もそれ知ってる!」

ルネも歯を磨き終えたらしいな。二人が話したいという顔をしていたので、俺は先を促した。ヴァンとルネが見つめ合う。どちらが話す?となったらしい。ヴァンが口を開いた。

「やはり神殿を巡ったことのある龍姫様からお願いします」

ルネが楽しそうに言う。

「かがやきの神殿はね、ないんだよ?」

「そうなの?」

ルネがヴァンに目配せするとヴァンも笑った。

「はい。怪談によれば、ある条件を満たせば神殿が出現すると言われていましたが、未だに誰も見つけられていません」

「じゃあ名前が付いているのはなんで?」

俺の疑問に二人はお互いを見合った。せーの、で二人が言う。

「はじまりの神殿に戻ってくるから!」

ど、どういうことだ?俺がポカンとしていると、二人にそのうち分かるからと説き伏せられてしまった。そういうものなのか?

「ショーゴ!汽車が逃げちゃうよ!早くしよ!」

「あぁ!」

俺たちは慌ててここからの最寄り駅「西三番駅」に向かった。少し見ない内に駅舎の様子が随分変わっている。なにが変わったって、ヒトがいるのだ。切符を購入するヒトや端末を見るヒト、電車を待つ人様々である。

「前とは全然違うよね」

「そうだね」

端末を改札機に当てると通過できる。ルネの分も入っているようだ。いつの間にか無料じゃなくなってるのは仕方がないよな。

汽車が蒸気を噴き出しながらやってきた。ルネが俺にしがみついてくる。怖いのかな。初めて見た時に怖い思いをしたから余計だろう。

「これはボリ乗ってなさそう」

「ボリさん、元気かな?」

「私ならここにいるが?」

車内で堂々と双剣を構えているボリさん。なにやってんの?あのヒト!!
あれ?なんか、みんな端末でボリさんを撮っている。

「ボリ、大人気だね!」

ルネがのんびり言う。いや、大人気だけども、ちょっと違うような?汽車の発車時刻が近付くと、汽笛が鳴った。皆が大人しく座席に収まる。

「ショーゴ、貴殿に再び相まみえようとは」

「あ、もう戦いませんからね」

チッと舌打ちされる。ボリさん、どんだけ戦闘狂なのさ。

「で、今日はどこまで?」

「隣の駅です」

「む、西二番か。まだ大型モンスターがいると聞いているが」

「え?そうなんですか?」

チラチラとボリさんに見つめられる。
あれ?これどこかで見たことが…。
俺は人気RPGのあの場面を思い出していた。

【ボリはなかまになりたそうにこちらをみている▼】

普通なら選べるんだけど、この場合もう選択肢はないような気がするな。

「ボリさんも来ますか?」

「貴殿も分かっているね!私がいればどんな凶暴なモンスターだって一撃さ!」

「ショーゴ、ボリ大丈夫かな?」

こそっとルネに耳打ちされたけどもう仕方ないよな。ボリさんは喜々として双剣の手入れを始めている。
というか、このヒトの仕事って結局なんなんだ?フラフラしてる俺が言える立場じゃないけど。

俺の視線に気が付いたのかボリさんが照れ臭そうに笑った。

「この双剣、実は特注で」

あ、全然察してなかった。しばらくボリさんは自分の武器の自慢をしていた。実際強い人だから勉強にはなるよな。

「西二番には巨大な熊型のモンスターがいるようで!」

あ、それニュースになってたよな。対策に匂い玉をぶつけるとかなんとか。念の為に持ってきて正解だったな。なんとなくブロリアを思い出すけど黙っていよう。駅に停車してボリさんはポーズを決めて写真に撮られていた。何ていうんだろう。そうだ、扱いがご当地ゆるキャラみたいなんだよな。うん、我ながら上手く例えたな。

「ボリー、もう行くよー」

ルネが待ちくたびれたのか呼んでいる。龍姫にはさすがのボリさんも逆らえないらしい。すっ飛んできた。

「さあさあ、これから狩りの時間ですね!」

いいえ、神殿巡りです。そうはっきり言ったら、ボリさんがしょんぼりしてる。

「エンカウントしたらよろしくお願いします」

「任せてください!」

ボリさんの機嫌が直ったな。単純でよかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】帝王様は、表でも裏でも有名な飼い猫を溺愛する

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
 離地暦201年――人類は地球を離れ、宇宙で新たな生活を始め200年近くが経過した。貧困の差が広がる地球を捨て、裕福な人々は宇宙へ進出していく。  狙撃手として裏で名を馳せたルーイは、地球での狙撃の帰りに公安に拘束された。逃走経路を疎かにした結果だ。表では一流モデルとして有名な青年が裏路地で保護される、滅多にない事態に公安は彼を疑うが……。  表も裏もひっくるめてルーイの『飼い主』である権力者リューアは公安からの問い合わせに対し、彼の保護と称した強制連行を指示する。  権力者一族の争いに巻き込まれるルーイと、ひたすらに彼に甘いリューアの愛の行方は? 【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう 【注意】※印は性的表現有ります

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 飛竜騎士団率いる悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治を目指すこと、そして敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成のためグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後、少しずつ歴史は歪曲しグレイの予知からズレはじめる…… *主人公の股緩め、登場キャラ貞操観念低め、性癖尖り目、ピュア成分低めです。苦手な方はご注意ください。 *他サイト様にも投稿している作品です。

幸福からくる世界

林 業
BL
大陸唯一の魔導具師であり精霊使い、ルーンティル。 元兵士であり、街の英雄で、(ルーンティルには秘匿中)冒険者のサジタリス。 共に暮らし、時に子供たちを養う。 二人の長い人生の一時。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

【完結】ただの狼です?神の使いです??

野々宮なつの
BL
気が付いたら高い山の上にいた白狼のディン。気ままに狼暮らしを満喫かと思いきや、どうやら白い生き物は神の使いらしい? 司祭×白狼(人間の姿になります) 神の使いなんて壮大な話と思いきや、好きな人を救いに来ただけのお話です。 全15話+おまけ+番外編 !地震と津波表現がさらっとですがあります。ご注意ください! 番外編更新中です。土日に更新します。

[完結]閑古鳥を飼うギルマスに必要なもの

るい
BL
 潰れかけのギルドのギルドマスターであるクランは今日も今日とて厳しい経営に追われていた。  いつ潰れてもおかしくないギルドに周りはクランを嘲笑するが唯一このギルドを一緒に支えてくれるリドだけがクランは大切だった。  けれども、このギルドに不釣り合いなほど優れたリドをここに引き留めていいのかと悩んでいた。  しかし、そんなある日、クランはリドのことを思い、決断を下す時がくるのだった。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

処理中です...