優秀アルファは子供を授かりたい!〜異次元猫カフェで遊びませんか?〜

はやしかわともえ

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149・2歳

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わぁわぁと大きな声で千が泣いている。あれからすでに2年もの時間が経っている。茜は泣いている千を抱き上げた。

「千、イブにお仕事行ってらっしゃいって」

「やぁー!!」

最近の千はイブが仕事に出掛けるたび、こうして泣いてしまう。イブが帰ってくるとべったりで離れないのだ。特に2歳になりイヤイヤ期なのか、茜の言うことにはとにかく逆らう。茜は忍耐強くよしよし、と千の頭を撫でた。

「そうだ千、猫ちゃんのとこいく?」

茜がそう声を掛けると、千はぴたっと泣き止んだ。ぎゅっと反抗しているはずの茜に抱き着いてくる。子供のことは読めないなと茜は苦笑せざるを得なかった。

「にゃーにゃ」

「そうだね。にゃーにゃだね」

可愛らしい喃語が聞けるのも今のうちだけだぞ、と茜はよく記憶に刻み込む。茜はずっと働きながら育児をしてきた。

イブの経営するルナリアは子育て支援に特に力を入れている。もちろん、社内には年齢を問わず子供を預けられるサービスもあった。イブはそのサービスを作る際、万が一が絶対にあってはいけないとかなり厳しくしていたようだ。社員の大事な子供を預かるのだ。虐待や事故が起きるリスクを最大限に減らさなければならない。イブは抜き打ちをするかのように、保育フロアにふらりとやって来る。スタッフも熟練の者から未経験の者まで様々だ。イブは保育スタッフに対して威圧する、ということはしない。子供たちとスタッフ全員でおやつを食べながら様子を見るのが定例だ。
子供たちからすれば、イブがやって来ると美味しいものが食べられると思うのかすごく懐いている。スタッフももう慣れたもので、子どもたちの普段の様子をイブに報告するという時間になる。

茜が千を抱っこして猫たちのいるフロアに向かうと、サーラが猫たちのご飯を用意しているところだった。

「茜殿、お疲れ様」

サーラはいつもこうして茜を労ってくれる。やはり母親というものは強い。

「にゃーにゃ」

千が手足をバタバタさせたので茜はよいしょと抱き直した。

「千、猫ちゃんびっくりしちゃうから静かにするんだよ?」

「ん」

千はすっかり猫たちと遊ぶつもりでいる。目が明らかにキラキラしている。時計を見ると、もうすぐ猫カフェの開店の時間だ。仕事に向かわなければならない。

「茜殿、千殿なら私が看ていよう。ちょうど猫たちと遊んで欲しかったからな」

「いいの?ありがとう。早めに切り上げてくるね!」

「気を付けてな!」

茜は猫カフェの店舗に向かった。



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