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145・結婚式
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1週間ほど、茜は千と2人、古龍の村でゆっくり過ごした。もちろん合間に出来る仕事はする。毎月発行している猫カフェの月報はすでに配布が終了したようだ。イブによれば、バックナンバーが欲しいという問い合わせが時折、社に来るらしい。書いている茜からすれば有難い話だ。
千はよくミルクを飲む子供だった。そしてよく眠る子だった。あまりに手がかからないので、茜は大丈夫かと逆に焦ったが、アリカがバイタルチェックをしたところ、異常はなかった。
「千ー。今日もミルク飲める?」
茜が哺乳瓶を咥えさせるとグイグイ飲む。
「ごめんね、お腹空いてたんだ」
赤ん坊にはすごい力が宿っている、と茜は過去に聞いたことがあった。親に対するコミュニケーション能力に始まり、周りの世界との順応力など、確かにすごいと茜も実感している。
「千は可愛いねー。どんな子に育つのかな」
茜が千を抱き上げてトントンと優しく背中を叩くと、けぷという可愛らしいゲップが出た。
「千、これ見てみる?」
茜はセレスティンが貸してくれたプラネタリウムの装置の電源を入れた。天井にはいくつもの星が並んでいる。千はじいっとそれに見入っていた。
「綺麗だよねー」
千がプラネタリウムに夢中になっている間に茜は仕事をいくつか終わらせた。サーラからのメールが来ていたので開く。
「茜殿、ご出産おめでとうございます。猫カフェ新規店舗の間取りが決まりました。猫たちは皆仲良くやっています。また茜殿とお仕事出来るのを楽しみにしています」
茜はお礼のメールを送った。帰る場所があるというのは嬉しいものだ。
「千、俺たちももうちょいしたらライアに帰るからね」
千はきょとんとしていた。そこもまた可愛らしい。
「茜、大丈夫か?」
うつらうつらしていた茜は肩を揺すられてハッとなった。
「あ、千!」
「千なら大丈夫だよ。よく眠ってる」
イブに抱き締められて茜はホッとした。
「茜、全部任せきりにしてごめんな」
「イブは社長なんだからもっと大変じゃない」
「茜、しばらく仕事休んでもいいんだぞ?」
「えー、またニートに戻るのやだー」
「大変じゃないか?」
ふふ、と茜は笑った。
「ぜーんぜん」
「で、式のことなんだけど」
「あ、ごめん。そうだよね」
茜は今の今まで結婚式のことをすっかり忘れていた。指輪をもらって満足してしまっていた。
「ライアで挙げようと思う。皆集まりやすいだろうし」
「わぁ、楽しみだね!」
「茜の衣装を作らなくちゃな」
「太ったからなぁ」
「そうか?ちょうどいいぞ?」
イブにこう言われて茜の頬は緩んだ。
千はよくミルクを飲む子供だった。そしてよく眠る子だった。あまりに手がかからないので、茜は大丈夫かと逆に焦ったが、アリカがバイタルチェックをしたところ、異常はなかった。
「千ー。今日もミルク飲める?」
茜が哺乳瓶を咥えさせるとグイグイ飲む。
「ごめんね、お腹空いてたんだ」
赤ん坊にはすごい力が宿っている、と茜は過去に聞いたことがあった。親に対するコミュニケーション能力に始まり、周りの世界との順応力など、確かにすごいと茜も実感している。
「千は可愛いねー。どんな子に育つのかな」
茜が千を抱き上げてトントンと優しく背中を叩くと、けぷという可愛らしいゲップが出た。
「千、これ見てみる?」
茜はセレスティンが貸してくれたプラネタリウムの装置の電源を入れた。天井にはいくつもの星が並んでいる。千はじいっとそれに見入っていた。
「綺麗だよねー」
千がプラネタリウムに夢中になっている間に茜は仕事をいくつか終わらせた。サーラからのメールが来ていたので開く。
「茜殿、ご出産おめでとうございます。猫カフェ新規店舗の間取りが決まりました。猫たちは皆仲良くやっています。また茜殿とお仕事出来るのを楽しみにしています」
茜はお礼のメールを送った。帰る場所があるというのは嬉しいものだ。
「千、俺たちももうちょいしたらライアに帰るからね」
千はきょとんとしていた。そこもまた可愛らしい。
「茜、大丈夫か?」
うつらうつらしていた茜は肩を揺すられてハッとなった。
「あ、千!」
「千なら大丈夫だよ。よく眠ってる」
イブに抱き締められて茜はホッとした。
「茜、全部任せきりにしてごめんな」
「イブは社長なんだからもっと大変じゃない」
「茜、しばらく仕事休んでもいいんだぞ?」
「えー、またニートに戻るのやだー」
「大変じゃないか?」
ふふ、と茜は笑った。
「ぜーんぜん」
「で、式のことなんだけど」
「あ、ごめん。そうだよね」
茜は今の今まで結婚式のことをすっかり忘れていた。指輪をもらって満足してしまっていた。
「ライアで挙げようと思う。皆集まりやすいだろうし」
「わぁ、楽しみだね!」
「茜の衣装を作らなくちゃな」
「太ったからなぁ」
「そうか?ちょうどいいぞ?」
イブにこう言われて茜の頬は緩んだ。
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