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142・赤ん坊

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「茜、赤ん坊の頭が出てきたよ。そしたら引きずり出せるからね、頑張れ」

「うんん!」

茜は痛みを堪えながら頷いた。スズがずっと手を握ってくれている。

「茜!」

「茜様!社長が来られましたよ!」

「いぶ…」

イブの顔を見て、茜はホッとした。

「茜、ギルドは大丈夫だ。安心して子供を産め」

「う…ん、っ…!!!」

✢✢✢

「茜、大丈夫かな?」

チェイカたちは食事を摂っている。チェイカはセレスティンが作った豆のスープが美味いとお替りしていた。

「僕の姉さんもこの間出産したけど、大変だったよ」

ナオが呟くとチェイカは心配そうに視線を落とした。

「死んじゃったり…しないよね?」

「チェイカ、大丈夫だよ。ほら、沢山食べて」

「うん」

「なーにシケた面してんだ?わけぇの」

「ゴールグさん。だって茜が…」

「大丈夫だよ。なんでも九尾様の嫁さんが来てるって話じゃないか」

「これは、スズに怒られるのかの」

九尾はいつになく小さく丸まっている。

「なんで怒られるの?」

「最近巣に帰ってなかったからな。寂しい思いをさせた」

チェイカはにやっと笑った。

「九尾様とお嫁さん、ラブラブなんだねぇ!」

「む、それはそうじゃろう。我の嫁はどこに出しても恥ずかしくない美人な嫁じゃ」

「さりげなく惚気けるのやめて」

ナオが真顔で突っ込む。ふと、皆が黙った。

「ね、もしかして、僕の聞き間違い?」

チェイカが尋ねると皆が首を横に振る。確かに赤ん坊の泣き声がする。皆、表情を明るくさせた。

「産まれたんだ!やった!そうだ、茜にこのスープを食べてもらわなくちゃ」

「待って、チェイカ。茜は疲れてるよ」

「そうだよね。早く会いたいけど僕はお兄さんなんだし我慢しなくちゃ」

ナオは何も言わずにチェイカの頭を撫でる。そして無表情で言った。

「チェイカは偉いね」

「ふふ!ナオに褒められた!」

そんな中にセレスティンがやって来る。チェイカは声を掛けた。

「セレスティン様、産まれたの?」

「はい。今、茜様に飲み物を持っていこうかと」

「茜、元気なの?」

セレスティンが笑う。

「赤子様共々お元気ですよ」

「よかった!僕も飲み物作るのお手伝いしていい?」

「はい。もちろん」

✢✢✢

茜はわぁわぁ泣いている赤ん坊をあやしていた。おくるみを着せられている。

「怖かったよね、よしよし」

「元気な子だな、茜」

「本当に」

ふふ、と2人は笑い合った。あ、と茜は気が付いた。

「ギルドはどうなったの?」

「あぁ。今は封印している。お前の回復を待って浄化してもらおうと思ってな」

「そうだったんだ。皆は元気?」

「あぁ。ただ、皆お前をめちゃくちゃ心配してる」

「え…」

「茜様!!」

アリカが駆け込んできた。
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