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139・災害マップ
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少し横になって休んだせいか、茜は体力を取り戻していた。動ける内に用を足してしまおうと手洗いに向かう。その帰りに声を掛けられた。セレスティンだ。
「茜様、何かお飲みになられませんか?」
「わ、頂きます」
ちょうど喉も渇いていたので、茜は居間にあるソファに腰掛けた。他の皆は集落の様子を見てくると言って出掛けているようだ。セレスティンが淹れてくれたのは温かいお茶だった。
「ありがとう、セレスティンさん」
「甘くて美味しいですよ」
茜はティーカップを手に持ち、一口飲んでみる。
「わ、本当だ。美味しい」
「まさかヒト族がこの村に来るなんて思いもしませんでした。茜様、妊娠中なのに申し訳ありません」
「ううん、皆が助けてくれるから大丈夫だよ。寝てばっかりいてごめんね」
「とんでもありません!おや、皆帰ってきたみたいですね」
「茜、大丈夫か?」
真っ先に現れたのはイブだ。
「イブ、うん。どうだったの?」
「あぁ。簡単にだけど周りの状況を手分けして調べてきた。現時点での地図を作ったから見せる」
「あー!茜!!起きたの!!」
「チェイカ、静かにね」
「はーい」
ナオはすっかりお兄さんが板に付いてきているようだ。マゼントとゴールグ、九尾、アリカもやって来た。机を取り囲むように皆が地図を見つめる。
「災害のせいで土地が液状化している場所が何箇所かある。この集落がよく陥没してないかって不思議なくらいだ」
「我の力で原因を探ったが、どうもギルドの手が回っているようじゃ」
「え?ギルドってこの前封印したんじゃ…」
茜の言葉にうむ、と九尾が頷いた。
「確かに我らはギルドを封印した。だが、奴の執念でここに残滓が残ったらしい。あちこちに痕跡が残っておったわ」
「そんな…どうすれば…」
「うむ…奴の本体を引きずり出すしかないな。茜、お前の力、貸してくれぬか?」
「う、うん。もちろん」
九尾がこれからどう動くかを皆に指示し始めた。
「これからはチームに分かれて動く。茜はここでセレスティンと共にいろ」
「分かった」
九尾の言うギルドの痕跡を消すためには、茜の祈りが不可欠なようだ。
茜は空を叩いた。イブがくれた先程のモニタだ。
イブも気が付いたらしい。視点をイブだけではなく、他のチームのリーダーの視点も増やしてくれた。
「皆、必ず無事で戻ってきてね」
茜は申し訳なくて悲しかった。自分にもっと戦闘をする能力があればと。
「茜、そんな顔しちゃやだー!」
「チェイカ様…」
「僕たちが強いの知ってるよね?」
「ナオくん。うん、知ってる」
「茜様、このアリカ、必ずや成し遂げてみせます」
「アリカさん」
「茜、無理するなよ?」
イブにぎゅっと抱き締められていた。茜も彼の背中に腕を回す。
「大丈夫だよ、イブ。皆を俺は信じてるから」
「茜様、何かお飲みになられませんか?」
「わ、頂きます」
ちょうど喉も渇いていたので、茜は居間にあるソファに腰掛けた。他の皆は集落の様子を見てくると言って出掛けているようだ。セレスティンが淹れてくれたのは温かいお茶だった。
「ありがとう、セレスティンさん」
「甘くて美味しいですよ」
茜はティーカップを手に持ち、一口飲んでみる。
「わ、本当だ。美味しい」
「まさかヒト族がこの村に来るなんて思いもしませんでした。茜様、妊娠中なのに申し訳ありません」
「ううん、皆が助けてくれるから大丈夫だよ。寝てばっかりいてごめんね」
「とんでもありません!おや、皆帰ってきたみたいですね」
「茜、大丈夫か?」
真っ先に現れたのはイブだ。
「イブ、うん。どうだったの?」
「あぁ。簡単にだけど周りの状況を手分けして調べてきた。現時点での地図を作ったから見せる」
「あー!茜!!起きたの!!」
「チェイカ、静かにね」
「はーい」
ナオはすっかりお兄さんが板に付いてきているようだ。マゼントとゴールグ、九尾、アリカもやって来た。机を取り囲むように皆が地図を見つめる。
「災害のせいで土地が液状化している場所が何箇所かある。この集落がよく陥没してないかって不思議なくらいだ」
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「え?ギルドってこの前封印したんじゃ…」
茜の言葉にうむ、と九尾が頷いた。
「確かに我らはギルドを封印した。だが、奴の執念でここに残滓が残ったらしい。あちこちに痕跡が残っておったわ」
「そんな…どうすれば…」
「うむ…奴の本体を引きずり出すしかないな。茜、お前の力、貸してくれぬか?」
「う、うん。もちろん」
九尾がこれからどう動くかを皆に指示し始めた。
「これからはチームに分かれて動く。茜はここでセレスティンと共にいろ」
「分かった」
九尾の言うギルドの痕跡を消すためには、茜の祈りが不可欠なようだ。
茜は空を叩いた。イブがくれた先程のモニタだ。
イブも気が付いたらしい。視点をイブだけではなく、他のチームのリーダーの視点も増やしてくれた。
「皆、必ず無事で戻ってきてね」
茜は申し訳なくて悲しかった。自分にもっと戦闘をする能力があればと。
「茜、そんな顔しちゃやだー!」
「チェイカ様…」
「僕たちが強いの知ってるよね?」
「ナオくん。うん、知ってる」
「茜様、このアリカ、必ずや成し遂げてみせます」
「アリカさん」
「茜、無理するなよ?」
イブにぎゅっと抱き締められていた。茜も彼の背中に腕を回す。
「大丈夫だよ、イブ。皆を俺は信じてるから」
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