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136・マゼントとゴールグ

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「ご馳走様でした」

食事を全て平らげて茜は息を吐いた。ダヌキがすかさず食器類を下げている。茜も手伝おうと立ち上がろうとしたら、ダヌキに止められた。

「茜様、確か昨日のメールチェックがまだですよね」

「あ、そうだった…」

茜はノートPCを机の上で開いた。ダヌキはその間、食器を洗っている。食洗機に入れる前に、軽く洗うとピカピカになる、とダヌキが言っていたのを茜は思い出していた。メールチェックをし、すぐに手が付けられそうな業務をこなす。

「そうだ、そろそろ猫カフェの月報を書かなくちゃ。うーん、どうしようかなぁ」

茜が悩んでいると、なにやら部屋の外が騒がしい。わいわいと男性の声がすると思ったら、コンコンと扉をノックされた。叩き方からしてイブなのは間違いない。

「茜?いいか?」

「どうぞ」

茜は立ち上がった。入ってきたのはイブにセレスティン、そしてもう2人男がいる。茜は誰だろうと彼らを観察した。

「茜、この方たちはセレスティンの仲間の古龍だ。名前は」

「マゼント」

「ゴールグという」

「あ、えっと茜です。初めまして」

茜がニコッと笑うと、マゼントとゴールグは一瞬顔を赤らめた。

「茜殿、我々はあなたにお話があって来た」

マゼントに両手を握られた茜は首を傾げた。

「こら、マゼント!茜様に気安く触れるな!」

セレスティンが怒鳴ったがマゼントは聞く気はないらしい。さらに茜に詰め寄る。茜は再び笑みを返し言った。

「お話って、俺のお腹の子のことですよね」

「な…気が付いていたのか?」

マゼントが後ろへよろめく。

「気が付いた、なんていう明確なものじゃないんだけど、古龍さんがわざわざ俺の所に来る理由なんてそれしか思いつかないかなって」

「茜様、お願いがあるのです。古龍の集落の周りで災害が起きていまして、あなたの力をお借りしたいのです」

茜は胸にあるペンダントを握った。九尾が顕現する。

「ふむ。茜の祈りの力を使えば、災害も収まる…か」

「キュ!」

テラも小さな体で現れた。

「うむ、テラよ。守りに関してはお前の右に出るものはないからな」

「キュ!」

「ここから古龍の集落ってすごく遠いんじゃ…」

「安心してください。私の背に乗ればすぐですよ!」

「なに?茜殿は俺の背に乗るんだ!」

「いいや!俺のだ!!」

セレスティンらが言い合いを始めたのを、イブが咳払いで止める。

「茜、仕事はどうだ?大変じゃないか?」

「うん。ダヌキさんがね」

「ダヌキがどうした?」

ダヌキもこちらで自分のことを話していると気が付いたらしい。そろっとやって来た。

「ダヌキさんが俺を心配し過ぎて、全然仕事を振ってくれないの。気持ちは有り難いんだけど」

「ダヌキ、茜が可愛いのは分かるけどな?」

「イブも同罪なんですけど」

「う!」

古龍たちが笑い始める。

「茜殿は可愛らしい方だ!同じ立場なら俺も同じことをするぞ!!」

古龍らが囃し立てるのにイブもダヌキも固まらざるを得なかった。
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