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129・過程
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セレスティンは洗面台で顔を洗い、柔らかなタオルで顔を拭いた。何故か、イブの家で住み込みで働くことが決定してしまったのだ。
(わ、私はこのままで大丈夫なのだろうか)
そこにイブがやってくる。
「セレスティン、後で茜の所に行こう」
「奥方様…ですか?」
セレスティンがおずおずと尋ねると、イブが頷く。
「あぁ、そうだ。何も知らずにお前と急に鉢合わせたら怖いだろうからな」
確かにとセレスティンも思ってしまった。自分は穏やかな性格だが、それを知らない者にはよく怖がられる。
「承知致しました」
「なあセレスティン。あんたは古龍だ。俺の知らないことも沢山知っているんだろう?例えば、ここの神々のことも」
セレスティンは目を瞑った。
「我々、古龍は神々によって生み出されたものです。常に神々と我ら古龍は共にありました」
「千里のことは認知していたのか?」
「先祖の話から推察するに、神々の手足として使う予定だったそうです」
イブが腕を組む。
「勝手なもんだな、その神様ってのは」
「我々も元々は手足でしたからね」
ははとセレスティンは笑ったが、その表情はすぐに曇る。
「ただ千里を作った神々は千里の暴走を止められませんでした」
「…暴走?」
「古龍の村の記録を見たことがあるのですが、千里はある時、暴走を始めたのだとか」
「ばぐ、というやつか?」
「わっ!」
ぬっと顔を出したのは九尾だ。セレスティンは後ずさった。
「か、神々の一柱である九尾様が何故…?」
「ふむ。茜が神に愛されてるからな」
「奥方様が?」
セレスティンは訳が分からないとイブを見つめる。
「とりあえず、ウチの嫁さんはもう飯を食ってる頃だ。セレスティン、九尾、行くぞ」
イブの言葉に2人は従った。
✢✢✢
「わぁ、このオムライス、たまごとろとろ」
茜はいつもの如く、ダヌキが作ってくれた食事を食べている。
「今日は上手くいきましたね」
ダヌキがにこにこしながら答える。
「ダヌキさん、やっぱりカフェに来て欲しいー!」
「茜様も作れるじゃないですか」
「そうだけど、やっぱりダヌキさんには敵わないんだよ」
コンコンと部屋のドアがノックされる。
「茜、入るぞ」
「イブ、おはよう。あれ?知らない人?」
「ああ。今度からお前の護衛についてくれるセレスティンだ」
茜は首を傾げた。
「セレスティンさん、人間?」
「あ、えーと竜人です」
「そっかあ。だから雰囲気が違うんだね」
茜の言葉にセレスティンはドキドキしていた。そして気がついたことがある。
「茜様は妊娠されているのですね」
「うん。順調に大きくなっているみたい」
茜が優しくお腹をさする。
「茜様と赤子様は私が必ずお守りいたします」
セレスティンは確信していた。
(間違いない。茜様のお子様はあの千里だ。一体何が起こったんだ?)
(わ、私はこのままで大丈夫なのだろうか)
そこにイブがやってくる。
「セレスティン、後で茜の所に行こう」
「奥方様…ですか?」
セレスティンがおずおずと尋ねると、イブが頷く。
「あぁ、そうだ。何も知らずにお前と急に鉢合わせたら怖いだろうからな」
確かにとセレスティンも思ってしまった。自分は穏やかな性格だが、それを知らない者にはよく怖がられる。
「承知致しました」
「なあセレスティン。あんたは古龍だ。俺の知らないことも沢山知っているんだろう?例えば、ここの神々のことも」
セレスティンは目を瞑った。
「我々、古龍は神々によって生み出されたものです。常に神々と我ら古龍は共にありました」
「千里のことは認知していたのか?」
「先祖の話から推察するに、神々の手足として使う予定だったそうです」
イブが腕を組む。
「勝手なもんだな、その神様ってのは」
「我々も元々は手足でしたからね」
ははとセレスティンは笑ったが、その表情はすぐに曇る。
「ただ千里を作った神々は千里の暴走を止められませんでした」
「…暴走?」
「古龍の村の記録を見たことがあるのですが、千里はある時、暴走を始めたのだとか」
「ばぐ、というやつか?」
「わっ!」
ぬっと顔を出したのは九尾だ。セレスティンは後ずさった。
「か、神々の一柱である九尾様が何故…?」
「ふむ。茜が神に愛されてるからな」
「奥方様が?」
セレスティンは訳が分からないとイブを見つめる。
「とりあえず、ウチの嫁さんはもう飯を食ってる頃だ。セレスティン、九尾、行くぞ」
イブの言葉に2人は従った。
✢✢✢
「わぁ、このオムライス、たまごとろとろ」
茜はいつもの如く、ダヌキが作ってくれた食事を食べている。
「今日は上手くいきましたね」
ダヌキがにこにこしながら答える。
「ダヌキさん、やっぱりカフェに来て欲しいー!」
「茜様も作れるじゃないですか」
「そうだけど、やっぱりダヌキさんには敵わないんだよ」
コンコンと部屋のドアがノックされる。
「茜、入るぞ」
「イブ、おはよう。あれ?知らない人?」
「ああ。今度からお前の護衛についてくれるセレスティンだ」
茜は首を傾げた。
「セレスティンさん、人間?」
「あ、えーと竜人です」
「そっかあ。だから雰囲気が違うんだね」
茜の言葉にセレスティンはドキドキしていた。そして気がついたことがある。
「茜様は妊娠されているのですね」
「うん。順調に大きくなっているみたい」
茜が優しくお腹をさする。
「茜様と赤子様は私が必ずお守りいたします」
セレスティンは確信していた。
(間違いない。茜様のお子様はあの千里だ。一体何が起こったんだ?)
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