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128・確認

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「おじさん!ストップー!」

チェイカに叫ばれてセレスティンはその場に静かに降り立っていた。向こうに微かだが街の存在を確認出来る。チェイカとナオはセレスティンの背から降りた。

「セレスティン、人間の姿になって。ここから走るよ」

セレスティンはその言葉にギョッとしてしまった。

「ま、待ってくれ。ナオもチェイカもさっきからまともに休憩を入れてないのに」

2人が倒れでもしたら困るとセレスティンは純粋に心配したのだが、どうやら杞憂だったらしい。2人はニヤリと笑った。

「こんなのよくあることだし」

「僕も体力付けたよー!」

セレスティンは内心恐ろしいと冷や汗をかいた。

「ほら、おじさん。行こう!ライアで美味しいご飯が食べられるよ!」

「チェイカ、セレスティンは観光に来たんじゃないんだよ」

「大丈夫だもん!イブの話さえ聞けば遊べるよ!」

ナオはため息を吐いている。セレスティンはいわれた通り人の姿になった。

「よし、行こう」

ナオたちは文字通り走ってライアの街を目指した。空がだんだん白んで、太陽が昇り始めている。ライアに着いたのは昼過ぎだった。セレスティンはライアの街並みに驚いた。最果ての地では考えられないほど文明が進んでいたからだ。

「こ、これは」

「セレスティン、驚くのは分かるけど後にして。
イブたちが待ってるから」

「あ、あぁ。すまない」

ナオに言われて、セレスティンも素直に従った。

「な!なんだ、この高い建物は?!」

「タワマンだよ!イブのお家」

チェイカがニコニコしながらエレベーターを操作する。一行が乗り込むとエレベーターはぐんぐん上昇する。

「な、自動で動くのか…」

「正しくは電力で動いてる。イブの家の電気は全部、高密度のソーラーパネルで賄ってるんだって」

「は、はぁ」

分からない単語にセレスティンはただ頷くことしかできない。そしてエレベーターはあるフロアで停まった。

「イブー!連れてきたよ!」

エレベーターから降りたチェイカが言うと、端正な顔立ちをした長身の男が現れる。他にも2人、男性がいた。気配からして只者ではないとセレスティンは冷や汗をかく。やはり自分はまだまだだったとセレスティンは焦りを覚えていた。

「イブ、このおじさんはね、セレスティンっていうんだよ。古龍なんだって!」

イブと呼ばれた男がセレスティンを品定めするように見つめる。

「俺たちに敵意はないみたいだな」

セレスティンは慌てた。

「とんでもない!私はただ確認に来ただけだ!あの子の…」

「あの子?」

イブが首を傾げると、黒髪の青年が笑う。

「セレスティンさん、僕はレイ。あの子って千里のことだよね?」

「え、千里?!」

チェイカが小さく叫ぶ。セレスティンは頷いた。

「星が告げてきたのです。この惑星の平穏を保つためだと。あの子は災禍にもなりかねない」

「レイ、どういうことだ?」

イブが尋ねると、レイは笑った。

「大丈夫。千里はまだ眠っているよ」
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