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108・お散歩②
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車は市街地を走っている。途中でお昼に食べようとパンと飲み物をテイクアウトしたのだ。大きな橋を渡ると、急に自然が押し寄せた。今まで、ライアは大都市というイメージだったので、茜は驚いていた。
「ライアってこんなところもあるんだ」
「あぁ。大きな公園もあるぞ。むしろ皆、これが目当てで移住してくる」
「ライアの春は雨が多いって」
イブはそう言われるのを予想していたのか笑った。
「大丈夫。屋根が付いてるとこもあるからな。茜も聞いたろうけど屋内の公園もある」
「すごいね」
「ま、それはまた今度来よう」
「うん」
どうやら目的地は別の場所らしい。車はぐんぐん走る。すると目の前に巨大な樹が見えて来た。緑が木全体を覆うように茂っている。
「あれってもしかして…」
「そう、ライアの樹だ。一応挨拶しておこうって思ってな」
「へー」
挨拶ってなんだろう?と茜は思ったが、ライアの樹のあまりの巨大さにすっかり驚いてしまい、深く考えなかった。イブが近くの駐車場に車を停める。2人はライアの樹に向かって歩き出した。茜たち以外にも人がおり、子どもらが走り回って遊んでいる。
「ここが中央広場なの?」
「あぁ。ライアの中心にあるんだ。ライアの樹は」
「へー」
自分はまだこの世界のことを何も知らないと茜は少し心細くなった。だが、自分の周りには信頼できる人が沢山いる。茜は大丈夫だと自分に言い聞かせていた。
「よっ!ライアのじーさん!」
「おぉ。イブか。久しぶりじゃの」
イブが樹をぽんと叩くと声がした。
「じーさんに頼みがあるんだよ」
「はっはっは。アレか。任せろ」
「分かってるじゃねーか」
イブとライアの樹には分かっているかもしれないが、茜にはさっぱり分からない。どうするべきかと思っていると、イブが跪いた。え、と思うがイブの表情は真剣である。
「茜、俺と結婚して欲しい」
じゅわと嬉しい気持ちに茜は包まれた。
「…はい」
イブに左手を出すように言われて、差し出すと薬指に指輪を嵌められる。
(うわぁ、本当の結婚指輪だ)
胸の鼓動がうるさいくらい高鳴っている。茜はイブに抱き締められていた。
「愛してるよ、茜」
「俺も」
2人はどちらからともなく唇を重ねていた。
✢✢✢
「おっきい」
「本当だ。なら、半分ならどうだ?」
2人はライアの樹の根元に座り、昼食を摂っている。買ってきたパンをいざ手元で見ると思いの外大きい。イブが半分にちぎってくれる。
「ありがとう。いただきまーす」
パンは柔らかく甘かった。間にはサクサクの白身魚のフライが挟まっており、酸味の効いたソースがアクセントになって美味い。
「美味しい!ライアはお魚取れるもんね」
「あぁ。また出掛けような」
「うん!あ、あのね、イブ?」
「どうした?」
「猫ちゃん…増やしちゃ駄目?」
「ライアってこんなところもあるんだ」
「あぁ。大きな公園もあるぞ。むしろ皆、これが目当てで移住してくる」
「ライアの春は雨が多いって」
イブはそう言われるのを予想していたのか笑った。
「大丈夫。屋根が付いてるとこもあるからな。茜も聞いたろうけど屋内の公園もある」
「すごいね」
「ま、それはまた今度来よう」
「うん」
どうやら目的地は別の場所らしい。車はぐんぐん走る。すると目の前に巨大な樹が見えて来た。緑が木全体を覆うように茂っている。
「あれってもしかして…」
「そう、ライアの樹だ。一応挨拶しておこうって思ってな」
「へー」
挨拶ってなんだろう?と茜は思ったが、ライアの樹のあまりの巨大さにすっかり驚いてしまい、深く考えなかった。イブが近くの駐車場に車を停める。2人はライアの樹に向かって歩き出した。茜たち以外にも人がおり、子どもらが走り回って遊んでいる。
「ここが中央広場なの?」
「あぁ。ライアの中心にあるんだ。ライアの樹は」
「へー」
自分はまだこの世界のことを何も知らないと茜は少し心細くなった。だが、自分の周りには信頼できる人が沢山いる。茜は大丈夫だと自分に言い聞かせていた。
「よっ!ライアのじーさん!」
「おぉ。イブか。久しぶりじゃの」
イブが樹をぽんと叩くと声がした。
「じーさんに頼みがあるんだよ」
「はっはっは。アレか。任せろ」
「分かってるじゃねーか」
イブとライアの樹には分かっているかもしれないが、茜にはさっぱり分からない。どうするべきかと思っていると、イブが跪いた。え、と思うがイブの表情は真剣である。
「茜、俺と結婚して欲しい」
じゅわと嬉しい気持ちに茜は包まれた。
「…はい」
イブに左手を出すように言われて、差し出すと薬指に指輪を嵌められる。
(うわぁ、本当の結婚指輪だ)
胸の鼓動がうるさいくらい高鳴っている。茜はイブに抱き締められていた。
「愛してるよ、茜」
「俺も」
2人はどちらからともなく唇を重ねていた。
✢✢✢
「おっきい」
「本当だ。なら、半分ならどうだ?」
2人はライアの樹の根元に座り、昼食を摂っている。買ってきたパンをいざ手元で見ると思いの外大きい。イブが半分にちぎってくれる。
「ありがとう。いただきまーす」
パンは柔らかく甘かった。間にはサクサクの白身魚のフライが挟まっており、酸味の効いたソースがアクセントになって美味い。
「美味しい!ライアはお魚取れるもんね」
「あぁ。また出掛けような」
「うん!あ、あのね、イブ?」
「どうした?」
「猫ちゃん…増やしちゃ駄目?」
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